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第1部2章 捜索任務
047 帰還、遺憾、新歓3:レオンハルト・C・ライヒテントリット
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「昨日は2人がおバカなことするから、ナナちゃんの激励会とサッちゃんの歓迎会ができなかったんだからねっ!」
朝、ベッドの上で正座する俺たちの前でミカが仁王立ちになっている。仁王立ちと言っても、迫力はない。盾をもってぬりかべみたくなっていないときの彼女はかわいいだけだ。いや、ぬりかべヴァージョンもかわいいけど。
で、迫力のないかわいい女の子にチュウジと俺は説教をされている。
「ごめんなさい」
「面目ない。すまなかった」
「なんで、あんなおバカなことしたの?みんなびっくりしたんだよ」
「いや、あの暗黒闘気が……」
「そう、我らの闘気が激しくぶつかりあってだな……」
「何言ってるのかわかんないよっ!」
「自分は知らないことを知っている。倫政であったよなっ!」
「ソクラテス。世界は未知と不条理に満ちあふれているのだ。なぁ、シカタよ」
「なんか2人して、あたしを煙に巻こうとしてるっ。今回は許してあげるけど、ふざけ過ぎたらメッだからね!」
うーん、ちょっとメッされるのも良いかもしれない。
「はい、そこののっぽのヘンタイくんはニヤケないのっ! 会は今日やることになったからね」
「そうそう、シカタくんの目が覚めたら、今後についての話し合いがあるんだった。サッちゃんとサゴさんを呼んでくるから、ここでいい子にしてるんだよ」
「正直すまんかった。悪ノリが過ぎた」
「我こそすまなかった。今後はお互いに自重しようではないか」
「おう」
チュウジと俺はぎこちなく休戦協定を結ぶ。
しばらくすると、サゴさん、ミカとサチさんが入ってきた。
「お金の使い方なんですが、提案がありまして……」
サゴさんが切り出す。
「銘無し、卒業しましょう」
探索家には銘無しと呼ばれる新米と銘有りという一段レベルの高い者として認識される者がいる。
レベルが高いといったが、残念ながらレベルやステータスは誰にも見えない。誰がどんな技能を持っているのかも通常はわからない。レベルの高さを測るものは稼ぎだ。依頼をこなしてたくさん稼げるということは、それだけで生存能力と任務遂行能力が高く、優秀であろうということになる。
正式登録にけっこうなお金がいるのだ。確か……。
「金貨1枚。今なら全員分払ってもお釣りが来ます」
サゴさんの言葉にサチさんが続ける。
「私は予め登録されているんで、登録料はいりません」
さすが銀メダル。最初から俺たちとは扱いが違う。
「それで、私がいただいたお金を皆さんの装備、特に防具の強化に当ててほしいなと思ってます。私の力は使わないで済むならそれにこしたことはないですし……」
「でもでも、サッちゃんのお金だよっ。自分で使わないと駄目だよっ」
両手をふりまわして遠慮するミカにチュウジも同調する。
「我は誇り高き暗黒騎士。そのようなものは受け取れぬ」
サチさんは目をキラキラさせてチュウジに言う。
「『前衛で相手を弾き返してくれる役目の者が装備を充実させないと、我の生存確率が下がるので迷惑でしかないのだが』。どっかの暗黒騎士さんがそんなこと言ってたってサゴさんがさっき話してくれましたよ」
チュウジは耳まで真っ赤になる。ざまぁ……いや、これはあいつがもててるのか。となると、ざまぁじゃないな。もげろ、爆ぜろ、腐って落ちろ。
「今回はサチさんの好意に甘えましょう。私たち一蓮托生のパーティーですから」
こうして、俺たちは正規の探索隊として登録することになった。
登録は簡単だった。
お金を払い登録する名前を告げる。
「1週間後に来てください。皆さんのメダルを交換しますから」
1週間後に名前を刻んだメダルをくれるらしい。
「これで、隊商の護衛任務を受けたりできるんですね」
サゴさんが感慨深そうに言う。
「1年に何度も死を覚悟したり、相手の死を感じたりするのは懲り懲りっすよ。できることなら護衛任務をやって、『今回も何もなかったな』とか言ってみたいですよね」
俺が続けると、みんなが首を大きく縦にふる。
◆◆◆
「貴様、名前はなんで登録したのだ?」
トビウオ亭に向かう途中、チュウジが珍しく満面の笑みを浮かべて聞いてくる。
こいつ、笑うと……いや笑ってもかわいくないな。座敷童子から幸運をもたらす能力だけ取り去った感じ(?)だ。
「そりゃ本名に決まってるだろ。シカタ・アキラだよ」
「我は真名で登録したのだ」
「マナ?なにそれ、MPみたいなやつか?」
「真の名のことだ。我が本当の力に目覚めた時につけようと思っていた名だ。登録銘はレオンハルト・C・ライヒテントリットという。今日からこの名で呼んでくれて構わぬからな」
「Cってなんだよ。この世界の文字にCがあるのかよ?」
「そんなもの、わかるわけなかろう。チュウジと書くときの最初の文字を入れてくれと頼んだのだ」
俺たちはこの世界の多くの人間同様、字が読めない。今度、サチさんに教えてもらおうとみんなで話し合ったところだ。
「……なんにせよ、そんな舌噛みそうな名前覚えられないって、チュウジでいいだろ、チュウジで」
「ふむ。多少長かったか。海馬に障害のある貴様のためにレオン・C、あるいはレオ・Cという呼びやすい通称も考えてある。使って良いぞ」
それにしてもこの中二病、ノリノリである。
「……わかったよ、チュウジ、気が向いたらな」
朝、ベッドの上で正座する俺たちの前でミカが仁王立ちになっている。仁王立ちと言っても、迫力はない。盾をもってぬりかべみたくなっていないときの彼女はかわいいだけだ。いや、ぬりかべヴァージョンもかわいいけど。
で、迫力のないかわいい女の子にチュウジと俺は説教をされている。
「ごめんなさい」
「面目ない。すまなかった」
「なんで、あんなおバカなことしたの?みんなびっくりしたんだよ」
「いや、あの暗黒闘気が……」
「そう、我らの闘気が激しくぶつかりあってだな……」
「何言ってるのかわかんないよっ!」
「自分は知らないことを知っている。倫政であったよなっ!」
「ソクラテス。世界は未知と不条理に満ちあふれているのだ。なぁ、シカタよ」
「なんか2人して、あたしを煙に巻こうとしてるっ。今回は許してあげるけど、ふざけ過ぎたらメッだからね!」
うーん、ちょっとメッされるのも良いかもしれない。
「はい、そこののっぽのヘンタイくんはニヤケないのっ! 会は今日やることになったからね」
「そうそう、シカタくんの目が覚めたら、今後についての話し合いがあるんだった。サッちゃんとサゴさんを呼んでくるから、ここでいい子にしてるんだよ」
「正直すまんかった。悪ノリが過ぎた」
「我こそすまなかった。今後はお互いに自重しようではないか」
「おう」
チュウジと俺はぎこちなく休戦協定を結ぶ。
しばらくすると、サゴさん、ミカとサチさんが入ってきた。
「お金の使い方なんですが、提案がありまして……」
サゴさんが切り出す。
「銘無し、卒業しましょう」
探索家には銘無しと呼ばれる新米と銘有りという一段レベルの高い者として認識される者がいる。
レベルが高いといったが、残念ながらレベルやステータスは誰にも見えない。誰がどんな技能を持っているのかも通常はわからない。レベルの高さを測るものは稼ぎだ。依頼をこなしてたくさん稼げるということは、それだけで生存能力と任務遂行能力が高く、優秀であろうということになる。
正式登録にけっこうなお金がいるのだ。確か……。
「金貨1枚。今なら全員分払ってもお釣りが来ます」
サゴさんの言葉にサチさんが続ける。
「私は予め登録されているんで、登録料はいりません」
さすが銀メダル。最初から俺たちとは扱いが違う。
「それで、私がいただいたお金を皆さんの装備、特に防具の強化に当ててほしいなと思ってます。私の力は使わないで済むならそれにこしたことはないですし……」
「でもでも、サッちゃんのお金だよっ。自分で使わないと駄目だよっ」
両手をふりまわして遠慮するミカにチュウジも同調する。
「我は誇り高き暗黒騎士。そのようなものは受け取れぬ」
サチさんは目をキラキラさせてチュウジに言う。
「『前衛で相手を弾き返してくれる役目の者が装備を充実させないと、我の生存確率が下がるので迷惑でしかないのだが』。どっかの暗黒騎士さんがそんなこと言ってたってサゴさんがさっき話してくれましたよ」
チュウジは耳まで真っ赤になる。ざまぁ……いや、これはあいつがもててるのか。となると、ざまぁじゃないな。もげろ、爆ぜろ、腐って落ちろ。
「今回はサチさんの好意に甘えましょう。私たち一蓮托生のパーティーですから」
こうして、俺たちは正規の探索隊として登録することになった。
登録は簡単だった。
お金を払い登録する名前を告げる。
「1週間後に来てください。皆さんのメダルを交換しますから」
1週間後に名前を刻んだメダルをくれるらしい。
「これで、隊商の護衛任務を受けたりできるんですね」
サゴさんが感慨深そうに言う。
「1年に何度も死を覚悟したり、相手の死を感じたりするのは懲り懲りっすよ。できることなら護衛任務をやって、『今回も何もなかったな』とか言ってみたいですよね」
俺が続けると、みんなが首を大きく縦にふる。
◆◆◆
「貴様、名前はなんで登録したのだ?」
トビウオ亭に向かう途中、チュウジが珍しく満面の笑みを浮かべて聞いてくる。
こいつ、笑うと……いや笑ってもかわいくないな。座敷童子から幸運をもたらす能力だけ取り去った感じ(?)だ。
「そりゃ本名に決まってるだろ。シカタ・アキラだよ」
「我は真名で登録したのだ」
「マナ?なにそれ、MPみたいなやつか?」
「真の名のことだ。我が本当の力に目覚めた時につけようと思っていた名だ。登録銘はレオンハルト・C・ライヒテントリットという。今日からこの名で呼んでくれて構わぬからな」
「Cってなんだよ。この世界の文字にCがあるのかよ?」
「そんなもの、わかるわけなかろう。チュウジと書くときの最初の文字を入れてくれと頼んだのだ」
俺たちはこの世界の多くの人間同様、字が読めない。今度、サチさんに教えてもらおうとみんなで話し合ったところだ。
「……なんにせよ、そんな舌噛みそうな名前覚えられないって、チュウジでいいだろ、チュウジで」
「ふむ。多少長かったか。海馬に障害のある貴様のためにレオン・C、あるいはレオ・Cという呼びやすい通称も考えてある。使って良いぞ」
それにしてもこの中二病、ノリノリである。
「……わかったよ、チュウジ、気が向いたらな」
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