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①サラ、王子と謁見する
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ワースリー王国謁見室で国王の第一継承者ネロ・ワースリー王子はアシャード・マクドナルド男爵の娘サラ男爵令嬢と謁見していた。
そしてサラ男爵令嬢は今からネロ王子に求婚しようとしていた。
父であるアシャード・マクドナルド男爵がたまたまトーマス・ワースリー国王陛下と謁見する機会を得て、舞い上がった父上はうちの娘がネロ殿下に一目惚れして困っております。などと言ってしまい、気をよくした国王陛下がそれでは一度会わせてあげるから求婚してみるが良い。となって、今私はここにいる。
だけど父上も私も元平民なんだから無理に決まっているじゃない。でも、やるしかないわね。あ、あれ?な、なんか緊張してきたわ。私、ちゃんと求婚できるのかしら?
サラは緊張で頭の中が真っ白のままネロ王子の前に出た。
「貴族社会は階級社会でございます。王族、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、そして貴族最底辺は男爵家でございます。されど私はそのような階級は気には致しません。さあ、殿下、遠慮はいりません。私と夫婦になりましょうぞ。」
「嫌だ。」
思わず、ずっこけそうになったサラであったが、しっかりと床を踏みしめて耐えた。
「階級が下の者は気にしろよ。気にしなくていいのは階級が上の者だろ?」
サラは遠くを見つめて王子の言葉を無視した。
側にいた側近が王子に耳打ちをした。「ほう。」
王子はサラに向き直り
「お前はあのどぶさらい男爵の娘なのか?」
サラは満面の笑みで答えた。
「さようでございます。私の父はこの王都の街の全てのどぶを掃除した男、アシャード・マクドナルド男爵ですわ。」
王子は側近に聞いた。男爵はもと平民だと聞いたが、なぜ平民がどぶ掃除で男爵になれたのかを。
側近は答えた。
「どぶの中に魔王がいたからです。」
「はあ?詳しく言ってみろ。」
「はい。先の魔王軍と王国軍との戦闘で敗走した魔王軍が体を小さくしてどぶに隠れていたのですが、たまたま王国のどぶ掃除を請け負ったアシャードという掃除夫が、スコップ1本でどぶの泥をどんどん掻き出していきました。
翌日、泥にまみれて窒息死した魔王軍の死体が、山積みとなっておりました。つまり、魔王軍を全滅させたのがこちらのサラ・マクドナルド男爵令嬢の父と言うわけでございます。」
「で、なぜ私がこの令嬢と夫婦がどうのこうのと言う話しをしなきゃならんのだ?」
「それはただ単にサラ男爵令嬢がネロ殿下に一目惚れをしたからでございます。」
「はあ?待て待て!私はこの国の王位継承者1位の第1王子だよなあ?」
「身分は自分で言うのもなんだが男爵家よりもずーーーーーーーーっと上だよな?」
「これでは私が彼女に見初められて、ここにいるみたいになるじゃないか?どう言うこと?ねえ?側近君!」
「恐れながら、アシャード・マクドナルド男爵家は男爵家でも、ただの男爵家ではありません。魔王を滅ぼした国の英雄なのです。」
「いや。アシャードは仕事でどぶ掃除をしただけだろ?違う?」
「残念ながらもうアシャード・マクドナルド男爵は我が国の英雄なのです。勇者なのです。」
「いや、勇者は違うだろ?」
「いえ。魔王を倒しております。」
「偶然にな。」
「偶然に、でもです。アシャード男爵が謀反をもし起こせば国民全てが男爵に従うでしょう。」
「従う訳ないだろう?え?お前本気で言ってるの?」ため息をつきながら「つまりその男爵家の令嬢を粗末に扱うなということか?」
「はい。」
王子はサラに向って話しかけた。
「サラ男爵令嬢、あなたに質問がある。答えてくれますか?」
頭真っ白状態が続いているサラはもはや、会話が噛み合っていなかった。
「わかりました。お答えしましょう。私の胸の内をお見せいたします。」
「いや、私はまだ、質問をしておらんが?」
「私は殿下が大大大好きでございますーーー。」
「おい。今からする私の質問に答えろ。良いな?」
なぜか足でリズムを取り始めたサラ。頭の中は真っ白だが脳内麻薬が発生したのか気持ちが高まる。
側近に尋ねる王子。
「おい。この令嬢は頭のネジ1本飛んでるぞ。」
「殿下。女性と言うものは恋をすると誰でも頭のネジは飛ぶものでございます。」
サラの足のリズムの取り方が激しくなってきた。サラの頭の中は、気分サイコー!になっていた。
それを見ていた王子は
「だがしかし、あれは頭のネジが飛びすぎだろう?2、3本は飛んでるぞ。」
側近が答える。
「殿下。想いが強ければ強いほど頭のネジは飛ぶものです。」
「お前も飛んでるんじゃないの?頭のネジ。」
諦めてサラに質問を始めた王子。
「お前は一体私のどこが好きなんだ?言ってみろ。」
気持ちが高まり全身で表現したくなったサラ。高く高く飛び上がるサラ。相撲の四股を踏む姿勢で着地すると歌い出す。
「わーーーたーーーしーーーはーーー」
「それくらい歌わなくても言えるだろ。私は?次は?なんだ?言ってみろ。」
「殿下のーーーー」
「殿下の?なんだ。次、言ってみろ。」
「顔がーーーー」
「顔が?」
サラは腰を落として正拳突きを連続でし始めた。
「好き!好き!好き!好き!」
側近に尋ねる王子。
「おい。あれは好きと突きを掛けているのか?」
「まさに絶妙の愛の表現かと。」
「・・・。」
王子はその場を無言で立ち去り「父上に断って下さいと伝えよう。」
部屋を出る前にもう一度振り返ってみると、サラの踊りを見ながら側近君が手拍子をしていた。
サラの頭はもうとっくにお花畑になっていたので側近君の手拍子が心地良かった。
「側近も変えてもらおっと。」
そしてサラ男爵令嬢は今からネロ王子に求婚しようとしていた。
父であるアシャード・マクドナルド男爵がたまたまトーマス・ワースリー国王陛下と謁見する機会を得て、舞い上がった父上はうちの娘がネロ殿下に一目惚れして困っております。などと言ってしまい、気をよくした国王陛下がそれでは一度会わせてあげるから求婚してみるが良い。となって、今私はここにいる。
だけど父上も私も元平民なんだから無理に決まっているじゃない。でも、やるしかないわね。あ、あれ?な、なんか緊張してきたわ。私、ちゃんと求婚できるのかしら?
サラは緊張で頭の中が真っ白のままネロ王子の前に出た。
「貴族社会は階級社会でございます。王族、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、そして貴族最底辺は男爵家でございます。されど私はそのような階級は気には致しません。さあ、殿下、遠慮はいりません。私と夫婦になりましょうぞ。」
「嫌だ。」
思わず、ずっこけそうになったサラであったが、しっかりと床を踏みしめて耐えた。
「階級が下の者は気にしろよ。気にしなくていいのは階級が上の者だろ?」
サラは遠くを見つめて王子の言葉を無視した。
側にいた側近が王子に耳打ちをした。「ほう。」
王子はサラに向き直り
「お前はあのどぶさらい男爵の娘なのか?」
サラは満面の笑みで答えた。
「さようでございます。私の父はこの王都の街の全てのどぶを掃除した男、アシャード・マクドナルド男爵ですわ。」
王子は側近に聞いた。男爵はもと平民だと聞いたが、なぜ平民がどぶ掃除で男爵になれたのかを。
側近は答えた。
「どぶの中に魔王がいたからです。」
「はあ?詳しく言ってみろ。」
「はい。先の魔王軍と王国軍との戦闘で敗走した魔王軍が体を小さくしてどぶに隠れていたのですが、たまたま王国のどぶ掃除を請け負ったアシャードという掃除夫が、スコップ1本でどぶの泥をどんどん掻き出していきました。
翌日、泥にまみれて窒息死した魔王軍の死体が、山積みとなっておりました。つまり、魔王軍を全滅させたのがこちらのサラ・マクドナルド男爵令嬢の父と言うわけでございます。」
「で、なぜ私がこの令嬢と夫婦がどうのこうのと言う話しをしなきゃならんのだ?」
「それはただ単にサラ男爵令嬢がネロ殿下に一目惚れをしたからでございます。」
「はあ?待て待て!私はこの国の王位継承者1位の第1王子だよなあ?」
「身分は自分で言うのもなんだが男爵家よりもずーーーーーーーーっと上だよな?」
「これでは私が彼女に見初められて、ここにいるみたいになるじゃないか?どう言うこと?ねえ?側近君!」
「恐れながら、アシャード・マクドナルド男爵家は男爵家でも、ただの男爵家ではありません。魔王を滅ぼした国の英雄なのです。」
「いや。アシャードは仕事でどぶ掃除をしただけだろ?違う?」
「残念ながらもうアシャード・マクドナルド男爵は我が国の英雄なのです。勇者なのです。」
「いや、勇者は違うだろ?」
「いえ。魔王を倒しております。」
「偶然にな。」
「偶然に、でもです。アシャード男爵が謀反をもし起こせば国民全てが男爵に従うでしょう。」
「従う訳ないだろう?え?お前本気で言ってるの?」ため息をつきながら「つまりその男爵家の令嬢を粗末に扱うなということか?」
「はい。」
王子はサラに向って話しかけた。
「サラ男爵令嬢、あなたに質問がある。答えてくれますか?」
頭真っ白状態が続いているサラはもはや、会話が噛み合っていなかった。
「わかりました。お答えしましょう。私の胸の内をお見せいたします。」
「いや、私はまだ、質問をしておらんが?」
「私は殿下が大大大好きでございますーーー。」
「おい。今からする私の質問に答えろ。良いな?」
なぜか足でリズムを取り始めたサラ。頭の中は真っ白だが脳内麻薬が発生したのか気持ちが高まる。
側近に尋ねる王子。
「おい。この令嬢は頭のネジ1本飛んでるぞ。」
「殿下。女性と言うものは恋をすると誰でも頭のネジは飛ぶものでございます。」
サラの足のリズムの取り方が激しくなってきた。サラの頭の中は、気分サイコー!になっていた。
それを見ていた王子は
「だがしかし、あれは頭のネジが飛びすぎだろう?2、3本は飛んでるぞ。」
側近が答える。
「殿下。想いが強ければ強いほど頭のネジは飛ぶものです。」
「お前も飛んでるんじゃないの?頭のネジ。」
諦めてサラに質問を始めた王子。
「お前は一体私のどこが好きなんだ?言ってみろ。」
気持ちが高まり全身で表現したくなったサラ。高く高く飛び上がるサラ。相撲の四股を踏む姿勢で着地すると歌い出す。
「わーーーたーーーしーーーはーーー」
「それくらい歌わなくても言えるだろ。私は?次は?なんだ?言ってみろ。」
「殿下のーーーー」
「殿下の?なんだ。次、言ってみろ。」
「顔がーーーー」
「顔が?」
サラは腰を落として正拳突きを連続でし始めた。
「好き!好き!好き!好き!」
側近に尋ねる王子。
「おい。あれは好きと突きを掛けているのか?」
「まさに絶妙の愛の表現かと。」
「・・・。」
王子はその場を無言で立ち去り「父上に断って下さいと伝えよう。」
部屋を出る前にもう一度振り返ってみると、サラの踊りを見ながら側近君が手拍子をしていた。
サラの頭はもうとっくにお花畑になっていたので側近君の手拍子が心地良かった。
「側近も変えてもらおっと。」
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