上 下
3 / 24
第一章 カレンとロバート編

③王子の記憶

しおりを挟む
「私と君は幼馴染で子供の頃からの仲良しだった。私の両親と君の両親も仲が良かった。」

「私たちは幼稚園、小学校、中学校、高校は別々だったけど、大学はまた一緒だった。」

「私が君を初めて異性として意識したのは君が中学生になったときだ。制服を着た君は可愛かった。もともと顔立ちの良い女の子だったけど、制服を着た君は大人の女性のように私の目には映った。」
 
「女の子を意識する自分がなんかいやだった私は、君と少しづつ距離をとるようになっていった。」
 
「でも胸が苦しかった。学校で君を見かけると、私の目は自然と君を追いかけていた。だけどもう君と目が合うことはなかったよ。」
 
「私は君を忘れるために部活に熱中した。サッカー部に入っていた。グランドの横を通る君を見かけるときがあったが、君は私の方なんて見むきもしなかった。」
 
「高校は私は男子校へ行った。君と同じ共学の高校へ行きたかったが、君と同じ学校へ行くとまた中学の時と同じになるからな。そんな辛いことをまた経験するのはごめんだったから、私は男子校へ行った。」
 
「たまに君を見かけたが、高校生になった君は綺麗になってたよ。一緒の高校に行けば良かったかもなんてちょっと後悔した。」
 
「男子校は楽しかったよ。私は16歳でバイクの免許を取って。その頃はバイクに夢中で君のことをバイクに乗っている間は忘れられた。」
 
「そんなある日、バイクで街中をゆっくりと走らせていると私の目に君が目に入った。君はやっぱり綺麗だった。そのまま通り過ぎようと思ったがやめた。君はガラの悪い他校の奴らにからまれていたからだ。」

「私はバイクをそいつらの横に止めてエンジンをふかしてやった。驚いた奴らを尻目に私は叫んだ。『春菜!乗れ!』予備の半ヘルを君に被るように言うと君は半ヘルを急いで被ってバイクにまたがった。『俺にしっかりつかまれ!』バイクを急発進させて、私は君を乗せて家まで乗せて帰った。」

「ほんとはまだ二人乗りをしちゃいけなかったんだけど。免許取って1年経ってなかったから。でも緊急事態だったから神様も許してくれるだろうって言ったら君は笑ってた。」

「間近で見た春菜は眩しかった。可愛くって。バイクから降りて私に半ヘルを返して君が言った。『助けてくれてありがとう。翔ちゃん。』そう言って家に帰って行った。」

 「君が俺のことを『翔ちゃん』って呼んでくれたのは、中学一年の時以来のことだった。」
 
「私と君はその事がきっかけで仲が戻って・・・。それからはもう天国のような毎日だった。大学も同じところへ行って4年生になって就職も卒業も目処がたって。」

「私は君にプロポーズをした。大学を卒業して内定している会社に入ってやっていけそうだったらその時、結婚してくれないかと。君はOKしてくれた。」

「私はその時に、中学生の頃からの君への気持ちを伝えたんだ。君は黙って聞いていてくれた。聞き終わったあと君は『ありがとう。私を好きでいてくれて。』って。」

 「もう私は天にも登る気持ちで両親に伝えた。春奈と結婚したいって。」

「そしたら反対されたよ。両親は反対するだけで理由を言わない。君も両親に私と結婚したいと伝えた。けど君も反対された。君も理由を教えてもらえなかった。」

 「私と君は両方の両親を呼んで話し合いをした。だが、どうしても理由を話してはくれなかった。
 だから思わず『一緒になれないなら俺達は心中する』そう言って立ち上がったときに、君のお母さんが私たちを呼び止めたんだ。」



「あなた達は実の姉弟なのよ。」



「私の父が話してくれた。私の父と君のお母さんは恋人同士だった。」

「だが父の心変わりで私の母を好きになり母と結婚した。」

「残された君のお母さんは君のお父さんと結婚した。」

「でも父と君のお母さんの関係はつづいていた。」

「しばらくして両方が妊娠して、私と君が生まれた。君が5月生まれ。私が6月生まれ。だから君が姉で俺が弟。」
 
「なんで私と君が姉弟とわかったのか?君のお母さんがDNA鑑定をしたんだ。」

「ずっと気になっていたので思い切って検査をした。君のお父さんと君に血縁関係はなかった。」  

「そうなると相手は当時付き合っていた私の父ってことになる。私と君は異母姉弟ってことにね。」

 「天国から地獄へ落ちるとはこのことだ。中学の頃から君に恋い焦がれてやっと君との未来が見えてきた矢先に絶望が待っていた。」
 
「私はもう生きる気力がなくなってビルの屋上から飛び降りようとしたんだが、後をつけてきた君に止められた。」

「だけど私の決心が強いとわかった君は私も一緒に飛び降りると言ってくれて。」

「私たちはそのまま飛び降りた。」

 「私は気がつくとこの体にいてこの体で生きて行くことになった。私は自分がこの世界にいるのなら、春菜も来ているかもしれないと思って探し始めた。」

「そんなとき社交パーティで君を見たんだ。すぐに春菜だと思った。」

  翔ちゃん。

王子は立ち上がってカレンのそばに来て

「カレン。愛している。私と結婚してください。」

「ロバート様。」

カレンもまた前世を思い出していた。

「謹んでお受け致します。」

 私は王子が公爵家を乗っ取るために、私と結婚しようとしていると思っていた。だから催眠術をかけて彼の本音を探ろうとした。

 でも・・違った。王子は、ロバート様は私を愛してくれている。

 私は椅子から立ち上がって王子を抱きしめた。

「私をずっと愛してくれてありがとう。」

「春菜。」

「翔ちゃん。」


 その後、私とロバート様は結婚した。彼はエレッセ公爵家次期当主となった。


 私をずっと探し続け、待ち続けてくれたそんな彼が・・・。




浮気をしているかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

もう一度だけ。

しらす
恋愛
私の一番の願いは、貴方の幸せ。 最期に、うまく笑えたかな。 **タグご注意下さい。 ***ギャグが上手く書けなくてシリアスを書きたくなったので書きました。 ****ありきたりなお話です。 *****小説家になろう様にても掲載しています。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

捨てられた妻は悪魔と旅立ちます。

豆狸
恋愛
いっそ……いっそこんな風に私を想う言葉を口にしないでくれたなら、はっきりとペルブラン様のほうを選んでくれたなら捨て去ることが出来るのに、全身に絡みついた鎖のような私の恋心を。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

処理中です...