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ドラマティック合コン
第16話
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ちょうどいいタイミングで大きなトレーにジョッキ5つを乗せて現れてくれた救いの女神を指差して、必死の形相で美樹に迫る。
「あ……うん。そ、そうだったね……」
恵子さんがジョッキをそれぞれの席に並べてくれる。泪さんはそれに気づき、一旦話を止め、会釈して、「あ、これは恐れ入ります! ……それで、宿命のライバルみつるくんとのPK対決でタカシくんは、遂に禁じられた必殺技、オリエンタル・クリスタルシュートを……」と話を続けてた。峰岸くんは受け取る時も「あ、ごめんな、ありが、どうも」とどれを言えばいいか迷ってるような発言をしていた。
「じゃあ!」
どん、と美樹がジョッキの底で机を叩いた。
「一回戦は、かおりと寡衣くんでいってみようかー!」
「はぁ~?」
それに、私は思い切り非難の声を上げた。な、なんでよりにもよってこの男と……?
「いや、ほら。かおりは、わたしと峰岸くんとは顔見知りでしょ? んでキャプテンは一人語りモードに入っちゃってるし――」
ちらりと横目で見る。「その迫り来る宝石のような凄まじいシュートを、盟友であるみつるくんは顔面で受け止めたのだ! 俺はそれを見て、体が、魂が震える出すのを感じずには……」あぁ、確かにまだ続いてるなぁ……
「なら、あとはかおりと寡衣くんで親睦を深めてくれれば、もっと盛り上がると思うのよねー」
そう言って、私と陸堂を交互に見る。……見ると、峰岸くんもぼんやりと私達二人を見てた。
どうしよっか……。
考えていると、スッ、と陸堂が自分のジョッキを持ち上げた。
……おもしろい。
私は口の端を吊り上げた。先ほども言ったが、私はお酒に対する強さには自信があるのだ。こんなボサボサ髪の理不尽男なんかには、負けてやらないんだから。
そう思うと、なんか闘志が湧いてきた。そもそも、何でこんなやつを峰岸くんは連れてきたのか知らないが、ここで潰してしまうのもいいかもしれない。こんなやつ早々と退場させれば、私ももっと気分がよくなるかも。
スッ、と私もジョッキを持ち上げた。
それを見て美樹が笑顔を作って、
「……せーの、」
くん、
とジョッキを傾け、取って口を唇にくっつけた。そのままごくごくと喉を鳴らしてビールを胃に流し込む。爽やかな喉越しにすー、と体が心地よくなる。周りでは「や、それ一気、一気!」という美樹の声が響いている。目で残りの量を確認。700ミリあるジョッキはすぐに2割がなくなり、半分がなくなり、あと三口になり、二口になり、一口になり――
ごくん、と飲み干し、
だん、とジョッキの底を机に叩きつけた。
口の周りについた泡を手の甲で拭き取る。時間にして8秒ほど。我ながら、惚れ惚れする一気だと思う。
どうだ! と寡衣の方を見た。
拍子抜けした。
奴は、未だにごくごくとジョッキを傾けていたのだ。いや、それはごくごくというより、ちびちびと言った方が正しいかもしれない。その減り方は極端に遅く、まだ7割以上が残っていて、とても一気をしているように見えなかった。
「はい、かおりの勝ち~」
美樹が手を叩いて私を讃えた。それに気をよくし、手を腰に当て胸を張って喜びを表す。うっふっふー、お酒で私に勝とうなんて、100年早いってーの。……うーん、少しは回ってきたのかな?
その合図で、陸堂はまだたっぷり中身が残ってるジョッキを机に置いた。……というか、その隣にまだほとんど手が付けられてないジョッキが並んでいた。……なに? こいつ、お酒飲めないんじゃ……
「トイレ」
言って、陸堂がゆらりと立ち上がった。こいつ大丈夫か? そう思った刹那。
「……っお」
陸堂は、真後ろに傾いていった。あ、まず。そっちには――
がしゃん、と派手な音が響き渡った。
陸堂が倒れこんだ方向には、面倒なことに他のお客さんとの敷居があり、それをまともにひっくり返してしまった音だった。そして、当然その向こうには他のお客さんがお酒を飲んでいたはずで……
「痛(て)っ! ……んだよ、お前ッ!?」
運が悪いことにそこにいたお客さんは大学生と思われる背の高いお兄さん方だった。それも、ピアス開けてたり髪の毛染めてたりじゃらじゃらとアクセ付けまくってる、いかにも軽そうなお方々。その方々は、鼻息も荒く立ち上がり、自分達の領域に倒れこんだ陸堂を睨みつけていたが、その雲行きをみつめているこちらの様子に気づくと、にゅっと顔を突き出してきた。
美樹がそれに気づき、慌てて謝る。
「あ、その、ゴメンなさ――」
「お、」
「あ……うん。そ、そうだったね……」
恵子さんがジョッキをそれぞれの席に並べてくれる。泪さんはそれに気づき、一旦話を止め、会釈して、「あ、これは恐れ入ります! ……それで、宿命のライバルみつるくんとのPK対決でタカシくんは、遂に禁じられた必殺技、オリエンタル・クリスタルシュートを……」と話を続けてた。峰岸くんは受け取る時も「あ、ごめんな、ありが、どうも」とどれを言えばいいか迷ってるような発言をしていた。
「じゃあ!」
どん、と美樹がジョッキの底で机を叩いた。
「一回戦は、かおりと寡衣くんでいってみようかー!」
「はぁ~?」
それに、私は思い切り非難の声を上げた。な、なんでよりにもよってこの男と……?
「いや、ほら。かおりは、わたしと峰岸くんとは顔見知りでしょ? んでキャプテンは一人語りモードに入っちゃってるし――」
ちらりと横目で見る。「その迫り来る宝石のような凄まじいシュートを、盟友であるみつるくんは顔面で受け止めたのだ! 俺はそれを見て、体が、魂が震える出すのを感じずには……」あぁ、確かにまだ続いてるなぁ……
「なら、あとはかおりと寡衣くんで親睦を深めてくれれば、もっと盛り上がると思うのよねー」
そう言って、私と陸堂を交互に見る。……見ると、峰岸くんもぼんやりと私達二人を見てた。
どうしよっか……。
考えていると、スッ、と陸堂が自分のジョッキを持ち上げた。
……おもしろい。
私は口の端を吊り上げた。先ほども言ったが、私はお酒に対する強さには自信があるのだ。こんなボサボサ髪の理不尽男なんかには、負けてやらないんだから。
そう思うと、なんか闘志が湧いてきた。そもそも、何でこんなやつを峰岸くんは連れてきたのか知らないが、ここで潰してしまうのもいいかもしれない。こんなやつ早々と退場させれば、私ももっと気分がよくなるかも。
スッ、と私もジョッキを持ち上げた。
それを見て美樹が笑顔を作って、
「……せーの、」
くん、
とジョッキを傾け、取って口を唇にくっつけた。そのままごくごくと喉を鳴らしてビールを胃に流し込む。爽やかな喉越しにすー、と体が心地よくなる。周りでは「や、それ一気、一気!」という美樹の声が響いている。目で残りの量を確認。700ミリあるジョッキはすぐに2割がなくなり、半分がなくなり、あと三口になり、二口になり、一口になり――
ごくん、と飲み干し、
だん、とジョッキの底を机に叩きつけた。
口の周りについた泡を手の甲で拭き取る。時間にして8秒ほど。我ながら、惚れ惚れする一気だと思う。
どうだ! と寡衣の方を見た。
拍子抜けした。
奴は、未だにごくごくとジョッキを傾けていたのだ。いや、それはごくごくというより、ちびちびと言った方が正しいかもしれない。その減り方は極端に遅く、まだ7割以上が残っていて、とても一気をしているように見えなかった。
「はい、かおりの勝ち~」
美樹が手を叩いて私を讃えた。それに気をよくし、手を腰に当て胸を張って喜びを表す。うっふっふー、お酒で私に勝とうなんて、100年早いってーの。……うーん、少しは回ってきたのかな?
その合図で、陸堂はまだたっぷり中身が残ってるジョッキを机に置いた。……というか、その隣にまだほとんど手が付けられてないジョッキが並んでいた。……なに? こいつ、お酒飲めないんじゃ……
「トイレ」
言って、陸堂がゆらりと立ち上がった。こいつ大丈夫か? そう思った刹那。
「……っお」
陸堂は、真後ろに傾いていった。あ、まず。そっちには――
がしゃん、と派手な音が響き渡った。
陸堂が倒れこんだ方向には、面倒なことに他のお客さんとの敷居があり、それをまともにひっくり返してしまった音だった。そして、当然その向こうには他のお客さんがお酒を飲んでいたはずで……
「痛(て)っ! ……んだよ、お前ッ!?」
運が悪いことにそこにいたお客さんは大学生と思われる背の高いお兄さん方だった。それも、ピアス開けてたり髪の毛染めてたりじゃらじゃらとアクセ付けまくってる、いかにも軽そうなお方々。その方々は、鼻息も荒く立ち上がり、自分達の領域に倒れこんだ陸堂を睨みつけていたが、その雲行きをみつめているこちらの様子に気づくと、にゅっと顔を突き出してきた。
美樹がそれに気づき、慌てて謝る。
「あ、その、ゴメンなさ――」
「お、」
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