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第十四章 真犯人への罠

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「え!? それは……」

 返事に困り、私は目を白黒させた。するとマルク殿下は、ふっと笑われた。

「冗談ですよ。あなたには、アルベール殿がいらっしゃる。あなたを妃に迎えたら、今度は彼に毒を盛られかねない。……昨日、アルベール殿が来られて、二人で話をしたのです。彼は、心からあなたを愛してらっしゃると感じました」

 他の方からそう言われると、何だか照れくさい。うつむいた私を、殿下はにこにこしながら眺めておられる。

「とまあそんなわけで、あなた以外の女性を探すとしましょう。病気は簡単に克服できるものではありませんが、モニク嬢と話していると、頑張らねばという気になりますね。勇気づけてくれて、ありがとう」
「いえ、そのような……」

 恐れ多いお言葉に、私はまた赤くなった。すると殿下は、再び深刻な表情に戻った。

「とはいえ。この婚約問題、そう簡単には解決しなさそうです。というのも、父上はあなたをたいそう気に入られた様子なのです」
「……」

 『ありがた迷惑』という言葉が、これほどぴったりな場面も無かろう、と私は遠い目になった。

「先ほどミレー公爵が来られて、父上と話し合われたそうです。公爵は父上にとって、信頼する友人ではありますが、今回に限っては譲るつもりは無いと」
「そんな……」
 
 私は、愕然とした。ですが、とマルク殿下が付け加えられる。

「父上は、条件を一つ提示しました。モニク嬢がその条件をクリアされれば、私との婚約を解消し、アルベール殿との結婚を認める、と」
「本当ですの!? 条件とは、何です? 私、何でもいたしますわ!」

 私は、身を乗り出した。だが殿下は、浮かないお顔だった。

「あなたとアルベール殿は、殺人事件解決のために、別れたふりをなさっていた。それを信じて私とあなたを婚約させたことで、父上は面子を潰された気分でいるようなのです。そこで父上は、こう言い出しました。それならば、モニク嬢お一人で、殺人犯を捕らえよ、と。それができれば、私との婚約は無かったことに、と」

(――いや、その殺人犯は、陛下、あなたの息子ですから……!)
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