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第十二章 波乱の鷹狩り

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「ありがとうございます。本当に、モニク様のおかげですわ。あの時、ガストンの尋問に立ち会わせていただいて」
「あら、そんなこと。元々私が、アルベール様に会いに行きたかったわけだし。……でも、それであなたは、やけに立ち会いたがっていたわけね」

 私は、あの時のコレットの、そわそわした様子を思い出した。ええ、と彼女が照れくさそうに答える。

「それに、今回も。モニク様が止めてくださって、助かりましたわ。アルベールに付き合わされるところでした」
「いえ。あれはアルベール様に、デリカシーが無さすぎるのよ。コレットにもパートナーを組みたい男性がいるかも、という気配りが無いのだから」
「言えてますわ」

 私たちは、声を合わせて笑った。

「で、そのアルベール様のパートナーは、どちらに?」
「そろそろ来られるかと……。ああ、いらっしゃいましたわ」

 コレットが、手招きをする。こちらに近付いてきた人物を見て、私は目を見張った。

「これはまた、化けたわね」
「ミレー家の侍女たち、面白がって張り切ったみたいですよ」

 金髪を華麗に結い上げた、小柄な細身の女性が、私たちの前に立つ。女性は、小声で囁いた。

「モニク様、コレット。ぼ……、私、おかしくないですか?」
「いいえ、どこからどう見ても、立派なレディだわ……。エミール……、いえ、『エミリー』」

 エミールは、この鷹狩りに潜入したいと、またもやごねたのである。

『危険人物・ドニ殿下から、義姉様をお守りします!』

 彼は、そう言い張った。そこで登場した案が、彼を女装させ、アルベール様のパートナーを務めさせる、というものだった。アルベール様も、『今からパートナーを捜すのは面倒だから、それでいい』と仰ったし、私も異存は無かった。

(ドニ殿下のパートナーを務める私が、文句を言う資格は無いけれど。アルベール様が他の女性とパートナーを組むところなんて、できることなら見たくありませんもの……)

 私は、エミールに言い聞かせた。

「いい? 『エミリー』。あなたは今日は、ミレー家の遠縁の女性で、年齢は十八歳ですからね。そこを間違えないのよ?」
「はい、義姉様……、いえ、モニク様」

 エミールは、真剣な面持ちで頷いた。

「それにしても女性って、大変なんですね。コルセットはきついし、結い上げた髪は重いし。……でも、ちょっと楽しいかも。自分じゃないみたいで」

 私とコレットは、無言で顔を見合わせた。

(これを機に、おかしな趣味に目覚めなければよいのだけれど……) 
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