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第十二章 波乱の鷹狩り

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(諦めちゃダメよ)

 私は、自分に言い聞かせた。もっと専門的な本を捜すか、薬師や学者に尋ねるかするのだ。アルベール様を、助けるために……。

 その時、背中にガツンと痛みを覚えた。振り返ると、数人の令嬢たちがクスクス笑っていた。

「あら、ごめんなさい。ボーッとしてらっしゃるから」
「次はどの殿方を誘惑しようか、考えてらしたんじゃない? お忙しいことね」

 甲高い笑い声を上げた後、彼女たちは、離れた所にいるローズと私を見比べた。

「サリアン伯爵家のご次女が尻軽、というのは存じておりましたけれど。お姉様も、とは思いませんでしたわ」
「半分とはいえ、血が繋がってらっしゃいますものねえ。争えない、ということかしら」

 私は、黙殺を決め込んだ。そう言われても、当然である。私とアルベール様が『破局』したという噂は、あっという間に広まったのだ。そして今日はドニ殿下のパートナーを務めるのだから、尻軽呼ばわりされても仕方ない。

 無反応な私に、令嬢たちは拍子抜けしたようだった。

「この方、言葉をお忘れになったのかしら?」
「ドニ殿下ったら、彼女のどこがお気に召したのかしらね!」

 ブツブツ言いながら、彼女たちは去って行った。そういえば、ドニ殿下にご執心の方々だったわ、と今さらながら思い出す。

(のんきなものね。一歩間違えたらあなたたちだって、利用されて殺されていたわよ……)

 やれやれとため息をついていると、コレットがやって来た。心配そうな様子だ。

「モニク様、大丈夫ですか? 絡まれていたのですか?」
「嫌味を言われただけよ。大したことじゃないわ。それよりもコレット、あなた、やったわね!」

 とたんにコレットが、ぽっと頬を染める。彼女は何と、モンタギュー侯爵とパートナーを組むことになったのである。昔から好きだった男性、というのは、彼のことだったのだ。その上これを機に、長年の想いを打ち明けたのだという。

「ありがとうございます……。夢みたいですわ」

 モンタギュー侯爵は、ミレー公爵の部下というお立場上、昔からよくミレー家へ出入りされていた。コレットもまた、アルベール様の従妹として、ミレー家をよく訪れており、恋心を抱くようになったのだという。

 とはいえ、二人の間には十一歳もの年の差があった。コレットの想いも空しく、侯爵は二十歳過ぎで結婚なさった。そこで一度は諦めたものの、二年前、侯爵の奥様は亡くなった。再婚の気配も無い彼に、コレットは、思い切ってアタックしてみたのだという。

「びっくりしてらっしゃいましたけど……。私のこと、真剣に考えると言ってくださいました。ガストンの尋問の際、彼の嘘を見破ったことで、評価してくださったようです」

 そういえばマルク殿下からお聞きしたな、と私は思い出した。
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