117 / 240
第十一章 新たな真実と反撃の決意
5
しおりを挟む
「……いえ、何でも。バール男爵の所業についてはよくわかりましたが、これは今回の事件とは関係なさそうですね」
アルベール様は、その書類をさっさと封筒にしまい込まれた。
「エミール、他は?」
「はい。こちらは、ピエールが研究していた調香に関する記録です。それから、こっちは……、奥様へ宛てた手記です」
私とアルベール様は、まず調香の記録を読み始めた。びっしりと、専門的な説明が綴られている。正直、ほぼ内容はちんぷんかぷんだ。だが、私たちはその中で、大きく印が付けられている項目を発見した。その植物の説明には、こう書かれていた。
『危険。強い毒性を持つ。誤飲すれば、心肺停止をもたらす』
私とアルベール様は、思わず顔を見合わせていた。
「もしかして……」
「バール男爵が妃殿下殺害に用いたのは、きっとこれでしょう。だから印を付けたのでしょうね」
それを聞いたエミールは、ぎょっとした顔をした。
「ええ!? 九年前に殺された高貴なお方って、王妃殿下だったのですか?」
「ああ。俺とモニクは、そう踏んでいる」
頷いた後、アルベール様は眉をひそめられた。
「しかし、他にも印が付けられた植物がありますね」
確かにそれ以外にも、小さい印が付いた項目が二つあった。一つは、同様に毒性を持つもので、摂取すれば体に不調をもたらす、とある。もう一つは『タバイン』と書いてあり、聞いたことは無いが麻薬の一種のようだった。
「バール男爵は、他にも誰か殺していたのかしら?」
「かもしれませんね」
アルベール様は、最後の書類を手に取られた。ピエールが妻に宛てた手記だ。
『愛するマーゴへ
お前には、本当に申し訳ないことをした。オーギュストなんかと手を組んだために、犯罪に関わってしまった。金を稼いでお前に楽をさせてやりたい、その一心だったのだが……。
そして、もう一つ謝らねばならない。子供を授けてやれなくて、申し訳なかった。すべて、タバインのせいだ。若気の至りで、オーギュストと一緒に十代の頃常用していたんだ。オーギュストは好都合と喜んで、後にシモーヌ夫人にも与えた。俺はすぐ止めたんだが、手遅れだったようだ……』
私は、エミールに尋ねていた。
「この手紙の後半、どういう意味かしら?」
アルベール様は、その書類をさっさと封筒にしまい込まれた。
「エミール、他は?」
「はい。こちらは、ピエールが研究していた調香に関する記録です。それから、こっちは……、奥様へ宛てた手記です」
私とアルベール様は、まず調香の記録を読み始めた。びっしりと、専門的な説明が綴られている。正直、ほぼ内容はちんぷんかぷんだ。だが、私たちはその中で、大きく印が付けられている項目を発見した。その植物の説明には、こう書かれていた。
『危険。強い毒性を持つ。誤飲すれば、心肺停止をもたらす』
私とアルベール様は、思わず顔を見合わせていた。
「もしかして……」
「バール男爵が妃殿下殺害に用いたのは、きっとこれでしょう。だから印を付けたのでしょうね」
それを聞いたエミールは、ぎょっとした顔をした。
「ええ!? 九年前に殺された高貴なお方って、王妃殿下だったのですか?」
「ああ。俺とモニクは、そう踏んでいる」
頷いた後、アルベール様は眉をひそめられた。
「しかし、他にも印が付けられた植物がありますね」
確かにそれ以外にも、小さい印が付いた項目が二つあった。一つは、同様に毒性を持つもので、摂取すれば体に不調をもたらす、とある。もう一つは『タバイン』と書いてあり、聞いたことは無いが麻薬の一種のようだった。
「バール男爵は、他にも誰か殺していたのかしら?」
「かもしれませんね」
アルベール様は、最後の書類を手に取られた。ピエールが妻に宛てた手記だ。
『愛するマーゴへ
お前には、本当に申し訳ないことをした。オーギュストなんかと手を組んだために、犯罪に関わってしまった。金を稼いでお前に楽をさせてやりたい、その一心だったのだが……。
そして、もう一つ謝らねばならない。子供を授けてやれなくて、申し訳なかった。すべて、タバインのせいだ。若気の至りで、オーギュストと一緒に十代の頃常用していたんだ。オーギュストは好都合と喜んで、後にシモーヌ夫人にも与えた。俺はすぐ止めたんだが、手遅れだったようだ……』
私は、エミールに尋ねていた。
「この手紙の後半、どういう意味かしら?」
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
同級生の異世界転移に巻き込まれた直後に前世を思い出した結果、乙女ゲームの世界だと判明しました
吉瀬
恋愛
《完結 校正中》
旧題名 大団円エンディングの作り方
乙女ゲーム『隔たれし君を思う』は、ヒロインが聖女として魔法の世界に召喚され、モンスターを倒し世界を救い、ぶっちゃけ逆ハーレムしながらヒーロー達を籠絡していくゲームだ。
高校に入学したばかりの山下えいこは、何故か見覚えのある美少女やイケメン男子と知り合いになり、彼らと関わるうちに巻き込まれる形で異世界転移してしまう。
と、その衝撃で前世を思い出し、この世界が前世にプレイしていた乙女ゲームの中である事が判明した。
モブキャラA子も一緒に転移するなんて知らないんですけど?
着いた先は滅びかけの魔法の世界。
なのにまさかのMPゼロ。魔法何それ美味しいの?
健気、純粋、鈍感、天然の1つも当て嵌まらない全てが『並』のえいこだけど、
魔法が使えなくて最弱だけど、
紆余曲折あってヒーロー倒しちゃうけど、
それでも大団円エンド目指してます(自己都合)
小説家になろうでも公開しています。
if的エロ話は別で纏めていくので、平気な方はそちらもどうぞ。
催眠術にかかったフリをしたら、私に無関心だった夫から「俺を愛していると言ってくれ」と命令されました
めぐめぐ
恋愛
子爵令嬢ソフィアは、とある出来事と謎すぎる言い伝えによって、アレクトラ侯爵家の若き当主であるオーバルと結婚することになった。
だがオーバルはソフィアに侯爵夫人以上の役目を求めてない様子。ソフィアも、本来であれば自分よりももっと素晴らしい女性と結婚するはずだったオーバルの人生やアレクトラ家の利益を損ねてしまったと罪悪感を抱き、彼を愛する気持ちを隠しながら、侯爵夫人の役割を果たすために奮闘していた。
そんなある日、義妹で友人のメーナに、催眠術の実験台になって欲しいと頼まれたソフィアは了承する。
催眠術は明らかに失敗だった。しかし失敗を伝え、メーナが落ち込む姿をみたくなかったソフィアは催眠術にかかったフリをする。
このまま催眠術が解ける時間までやり過ごそうとしたのだが、オーバルが突然帰ってきたことで、事態は一変する――
※1話を分割(2000字ぐらい)して公開しています。
※頭からっぽで
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から1年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、111話辺りまで手直し作業中)
押して駄目なら推してみろ!~闇落ちバッドエンドを回避せよ~
咲宮
恋愛
侯爵令嬢に転生したイヴェットは、このままだと母の行う心中に巻き込まれて死んでしまう運命だと気が付く。母は愛を求めるも一向に振り向かない夫に絶望してしまったのだ。無理心中を回避するため、イヴェットは新たな愛の形を提案する。
「押して駄目なら推してみましょうお母様!!」
果たして母の闇落ちバットエンドを回避できるのか⁉
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しております。
※毎日更新の予定です。
※感想の返信がない場合がございます。ご了承ください。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる