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第六章 偽装恋人宅の訪問

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 果たして屋敷の外には、すでにミレー家の馬車が停まっていた。アルベール様は馬車から降りて、お父様、そしてバルバラ様と歓談なさっていた。

「ごきげんよう、アルベール様。わざわざ、お迎えにいらしてくださったのですか?」

 言いながら近付くと、三人は同時にこちらを振り向かれた。彼らは、一様に目を丸くした。周囲に控えている使用人たちも、あっけにとられたような表情だ。

(何……? やっぱり、変だったかしら……?)

 最初に言葉を発せられたのは、お父様だった。

「――本当に、モニクか?」

 裏返った声でそう仰った後、お父様は私を、上から下までまじまじと見つめた。

「いや、見違えたよ。どこの令嬢かと思った」
「ええ、本当に」

 バルバラ様が同意される。微笑をたたえているが、目は笑っていない。

「アルベール様の、従妹の方のおかげですわねえ。有能な方をご紹介くださって、ありがとうございましたわ」

 全くその通りではあるのだが、どこか嘲るような彼女の言い方に、私は気持ちが沈むのを抑えられなかった。すると、アルベール様の凜とした声が響いた。

「原石をダイヤに変身させられるかどうかは、持ち主次第だと思いますよ。良い職人を雇うか、研磨に費用をかけるか否かは、持ち主の自己責任です」

 お父様とバルバラ様は、さっと青ざめられた。アンバーのような侍女を雇っていたことや、私の衣装代をケチっていたことを当てこすられた、とわかったのだろう。

「では参りましょうか、モニク嬢」

 言いたいことを言い終えると、アルベール様は私に腕を差し出された。おそるおそるすがれば、使用人たちが感嘆の声を上げた。

「お似合いだなあ」
「お二人とも、スタイルが良いから」

 信じられなかった。この格好良いアルベール様と、私がお似合いですって?

(身長のせいかしら……?)

 私は、女性にしては背が高い方なのだ。でもアルベール様は、さらに頭一つ分くらい長身でいらっしゃるから、バランス良く見えるのかもしれなかった。

 アルベール様は、私を巧みにエスコートして馬車に乗せると、ご自分も乗り込まれた。彼が隣に座ると、私は急に緊張するのを感じた。コレットの言葉が蘇る。

 ――モニク様は、アルベールにとって、特別な女性だと思っていますから……。

 こんな狭い空間に二人きりだと、否応なしに意識してしまう。これからミレー家まで、ずっとこの状態なのか。まるでデートみたいだわ、と私は思った。

(ああ、ハードルが高すぎる……)
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