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第十四章 婚約解消

15(※R18)

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「あうっ……」
「まだまだ、キツイな」

 慎重に指を抜きししながら、ロレンツォが呟く。彼の空いた手は、ナーディアの乳房を愛おしげに愛撫している。ただでさえ小さな膨らみは、ロレンツォの大きな掌の中ではいちだんと貧弱に見えて、ナーディアとしてはいたたまれないくらいだ。だがロレンツォは、まるで宝物のようにそれを揉みしだいては、時折口づけている。

「んっ……、んんっ……」

 ロレンツォは、下を弄る手も止めることはない。最初に覚えた違和感はすでに消失し、ぞわぞわとした快感が背筋を上ってき始めていた。無意識に腰を揺らせば、ロレンツォが嬉しそうに笑う。

「そんなに、締めるなよ」
「――あっ……、やだ、馬鹿……」

 このままではもう一度、みっともなく乱れながら達してしまいそうだ。そう思っていた矢先、不意に指が引き抜かれた。突然の喪失感に、ナーディアはぼんやりロレンツォを見上げた。

「悪い。そろそろ、我慢できない」

 いつの間にか彼のそれは、腹に付かんばかりに反り返っていて、ナーディアは思わず生唾を飲んだ。前回と違って、視界に入れてしまった分恐ろしいが、一方で微かな期待を覚えるのも否定できなかった。

「力抜いてろよ」

 優しくナーディアの躰を撫でさすってから、ロレンツォはやおら自らの先端を、蜜口にあてがった。ゆっくりと、押し入って来る。二度目だというのに、相変わらずすさまじい圧迫感だった。ただ、痛みはほぼない。

「――ああっ……」
「ゆっくり、息をして……」

 言われた通りに呼吸をしながら、ナーディアはロレンツォの背に腕を回した。右肩には、微かに赤い筋がある。ナーディアは、手を伸ばしてそっと撫でていた。前回見た時は、絶望しか感じなかった。でも、今は愛しい。

「動くぞ……」

 荒い息の中で、ロレンツォが言う。ナーディアは、返事の代わりに、背中に回した腕の力を込めた。ロレンツォが、くっと笑う。

「さすがだ。すごい腕力」
「ふざけん……、な……、あっ……」

 言い返そうとしたが、声は途中で喘ぎに変わった。ロレンツォの先端が、良い所をかすめたからだ。もちろんロレンツォが、それを見逃すはずはない。執拗にそこを刺激するように、抽挿を開始した。

「あっ……、あっ……、ああっ……」
「ナーディア。愛してる……」

 律動の合間に、激しい口づけがナーディアを襲う。同時に胸も揉みしだかれて、ナーディアは次第に朦朧としてきた。ロレンツォは、腰を引いては、力強く打ち付ける。突かれ、擦り上げられ、全身を揺さぶられて、ナーディアはひたすら喘いだ。もはや、声を我慢する余裕など、とてもない。

(ダメ……。また、来る……!)

 だがその時、ロレンツォは突如腰を引いた。彼の意図を察したナーディアは、とっさに脚に力を込めていた。彼の腰を挟み付ける。

「おい、止めろ! さすがに、持たん……」
「いいから!」
 
 ナーディアは叫んでいた。子を宿せば、騎士の仕事は休まねばならないだろう。それでも、体内にロレンツォの証が欲しかった。そうしないと、後悔する気がしたのだ。これが、オルランドの言うところの『女の勘』だろうか。

「ジャンニ。愛してる……」

 エメラルドグリーンの瞳を見つめて、告げる。次の瞬間、胎内に熱いものがじわりと広がる。ナーディアもまた、全身を痙攣させて達していた。ロレンツォが、荒い息の中で呟く。

「ナーディア……。俺も、愛してる……」

 二人は固く抱き合ったまま、どちらからともなく熱い口づけを交わしていた。
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