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第十四章 婚約解消
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しばらくの間、沈黙が続いた。不審に思い、ナーディアは恐る恐る顔を上げてみた。瞬間、息を呑む。ロレンツォは、満面の笑みを浮かべていたのだ。
「ありがとう、ナーディア。俺は、嬉しい」
ロレンツォは、感極まったような声を上げる。ナーディアは焦った。
「お、おい……。今のは、私の思いを伝えただけだ。結婚が認められると、決まったわけじゃないぞ!」
「それで十分だ。ナーディアの気持ちさえ手に入れば、他の障害なんてねじ伏せてみせる……」
ロレンツォが抱き寄せてくる。女性にしては身長の高いナーディアだが、それでも顔は彼の肩の辺りまでしかない。ナーディアはそこに、ぽすっと顔を埋めた。ぼそぼそと呟く。
「私の気持ちだって、ねじ伏せるんじゃないのか」
「そうかもな」
クスクス笑いながら、ロレンツォはナーディアの頭をぽんぽんと叩いた。器用にナーディアの顎を捕らえ、上向かせる。ゆっくりと、唇が重なった。
ロレンツォの唇が、ナーディアのそれを愛おしげに食む。やがて、熱い舌が侵入してきた。優しく、だが執拗に、ナーディアの口内を愛撫する。ナーディアは、瞳を閉じてロレンツォのなすがままに任せた。薄いシャツ越しに、温かい彼の体温が伝わってくる。……そして、力強い鼓動も。
ひとしきりナーディアの唇を貪った後、ロレンツォはにやりと笑った。
「今日は、噛まれなくて済んだ」
前回、思いきり舌を噛んだことを指摘されて、ナーディアは真っ赤になった。
「そりゃ! あの頃は、お前は敵だったから……」
「ああ。でも今は、敵じゃない。そうだよな?」
言うなりロレンツォは、あっという間にナーディアを抱え上げた。ベッドに下ろされて、ナーディアはぎょっとした。
「……おい!」
「何か問題があるか?」
ロレンツォは、ナーディアに覆いかぶさると、早くも首筋にキスを落とし始める。ナーディアは、慌てて突っぱねた。
「問題あるに決まってるだろう!」
「なぜ。もう敵同士でもなければ、俺には婚約者もいない」
ロレンツォの唇が触れたところから、甘い痺れが広がっていく気がして、ナーディアは急いで言葉を探した。
「ここは寮だぞ!」
「あれだけ脅せば、ザウリだって注意はできないさ」
「ええと……。湯浴みをしていない」
「俺は気にしない」
キッパリと言い切られて、ナーディアは黙るしかなかった。ロレンツォが、顔をのぞき込んでくる。
「どうだ、もう言い訳は尽きたか?」
その通りなのだが、認めるのは癪だった。どうすべきか逡巡していると、ロレンツォはふと真剣な顔つきになった。
「ナーディア。真面目な話、俺には今夜、お前を抱きたい理由がある」
ナーディアは、ハッとした。
「もしかして……。明日、何かが起きるんだな?」
『復讐よりも大切なこと』『今日までかかりきりだった』という先ほどの台詞が蘇る。ロレンツォは無言だったが、それは肯定だと直感した。
「ナーディア……」
口づけが降ってくる。ナーディアは、もう何も言わなかった。瞳を閉じて、ロレンツォに身を委ねる。
「ありがとう、ナーディア。俺は、嬉しい」
ロレンツォは、感極まったような声を上げる。ナーディアは焦った。
「お、おい……。今のは、私の思いを伝えただけだ。結婚が認められると、決まったわけじゃないぞ!」
「それで十分だ。ナーディアの気持ちさえ手に入れば、他の障害なんてねじ伏せてみせる……」
ロレンツォが抱き寄せてくる。女性にしては身長の高いナーディアだが、それでも顔は彼の肩の辺りまでしかない。ナーディアはそこに、ぽすっと顔を埋めた。ぼそぼそと呟く。
「私の気持ちだって、ねじ伏せるんじゃないのか」
「そうかもな」
クスクス笑いながら、ロレンツォはナーディアの頭をぽんぽんと叩いた。器用にナーディアの顎を捕らえ、上向かせる。ゆっくりと、唇が重なった。
ロレンツォの唇が、ナーディアのそれを愛おしげに食む。やがて、熱い舌が侵入してきた。優しく、だが執拗に、ナーディアの口内を愛撫する。ナーディアは、瞳を閉じてロレンツォのなすがままに任せた。薄いシャツ越しに、温かい彼の体温が伝わってくる。……そして、力強い鼓動も。
ひとしきりナーディアの唇を貪った後、ロレンツォはにやりと笑った。
「今日は、噛まれなくて済んだ」
前回、思いきり舌を噛んだことを指摘されて、ナーディアは真っ赤になった。
「そりゃ! あの頃は、お前は敵だったから……」
「ああ。でも今は、敵じゃない。そうだよな?」
言うなりロレンツォは、あっという間にナーディアを抱え上げた。ベッドに下ろされて、ナーディアはぎょっとした。
「……おい!」
「何か問題があるか?」
ロレンツォは、ナーディアに覆いかぶさると、早くも首筋にキスを落とし始める。ナーディアは、慌てて突っぱねた。
「問題あるに決まってるだろう!」
「なぜ。もう敵同士でもなければ、俺には婚約者もいない」
ロレンツォの唇が触れたところから、甘い痺れが広がっていく気がして、ナーディアは急いで言葉を探した。
「ここは寮だぞ!」
「あれだけ脅せば、ザウリだって注意はできないさ」
「ええと……。湯浴みをしていない」
「俺は気にしない」
キッパリと言い切られて、ナーディアは黙るしかなかった。ロレンツォが、顔をのぞき込んでくる。
「どうだ、もう言い訳は尽きたか?」
その通りなのだが、認めるのは癪だった。どうすべきか逡巡していると、ロレンツォはふと真剣な顔つきになった。
「ナーディア。真面目な話、俺には今夜、お前を抱きたい理由がある」
ナーディアは、ハッとした。
「もしかして……。明日、何かが起きるんだな?」
『復讐よりも大切なこと』『今日までかかりきりだった』という先ほどの台詞が蘇る。ロレンツォは無言だったが、それは肯定だと直感した。
「ナーディア……」
口づけが降ってくる。ナーディアは、もう何も言わなかった。瞳を閉じて、ロレンツォに身を委ねる。
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