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第四章 実家にて
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手紙を書き終えたナーディアは、部屋を出た。向かう先は、寮内のロレンツォの部屋である。舞踏会の後、彼は王宮近衛騎士団の一員として、正式に職務を開始したのだ。今日は休日だが、部屋にはいると思われた。
ノックをすると、ロレンツォは予想通りすぐに出て来たが、ナーディアを見て意外そうな顔をした。
「フローラから話を聞いて。正式に婚約が整ったそうだな。おめでとう」
婚約祝いの入った箱を差し出せば、ロレンツォはますます面食らったようだった。
「ありがとう……。いや、まさか祝ってくださるとは思わなかったな。あなたは、俺とフローラ嬢のことを反対されているものと思っていたから」
「そりゃ、最初は戸惑ったさ。でも、考えを改めた。……ところで、敬語は止めてくれないか? ロレンツォはもはや、私の義兄だ。本来なら、私の方が敬語を使うべきだろう」
「プライベートではね。でも、職場では俺は新人の立場だし……」
少し思案した後、ロレンツォはにっこり笑った。
「それでは、互いに敬語抜きというのは?」
「妥当だな」
頷きながら、ナーディアはその笑顔に一瞬見惚れた。結婚を認めると言ったせいか、ロレンツォからは挑戦的な雰囲気が抜けて、逆に親愛の情すらうかがえる。邪気のない素直な表情は、フローラだけでなく、どんな女性も虜にするだろうと思われた。
「わざわざ祝いの品まで、ありがたいな。どうぞ、入って。大したもてなしはできないけれど」
ロレンツォはあっさりと言ったが、ナーディアは戸惑った。いくら義理の兄妹になる仲とはいえ、室内で男女二人きりになることに、抵抗はないのだろうか。
「……邪魔するぞ」
あえて扉は開けたままで、入室する。入寮したばかりだというのに、室内は意外にも綺麗に片付いていた。書棚には、本がぎっしりだ。武具にまみれて雑然とした、他の同僚男性騎士の部屋とは大違いで、ナーディアは感心した。同時に、妙に緊張するのを感じる。こんなことは初めてだった。
ノックをすると、ロレンツォは予想通りすぐに出て来たが、ナーディアを見て意外そうな顔をした。
「フローラから話を聞いて。正式に婚約が整ったそうだな。おめでとう」
婚約祝いの入った箱を差し出せば、ロレンツォはますます面食らったようだった。
「ありがとう……。いや、まさか祝ってくださるとは思わなかったな。あなたは、俺とフローラ嬢のことを反対されているものと思っていたから」
「そりゃ、最初は戸惑ったさ。でも、考えを改めた。……ところで、敬語は止めてくれないか? ロレンツォはもはや、私の義兄だ。本来なら、私の方が敬語を使うべきだろう」
「プライベートではね。でも、職場では俺は新人の立場だし……」
少し思案した後、ロレンツォはにっこり笑った。
「それでは、互いに敬語抜きというのは?」
「妥当だな」
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「わざわざ祝いの品まで、ありがたいな。どうぞ、入って。大したもてなしはできないけれど」
ロレンツォはあっさりと言ったが、ナーディアは戸惑った。いくら義理の兄妹になる仲とはいえ、室内で男女二人きりになることに、抵抗はないのだろうか。
「……邪魔するぞ」
あえて扉は開けたままで、入室する。入寮したばかりだというのに、室内は意外にも綺麗に片付いていた。書棚には、本がぎっしりだ。武具にまみれて雑然とした、他の同僚男性騎士の部屋とは大違いで、ナーディアは感心した。同時に、妙に緊張するのを感じる。こんなことは初めてだった。
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