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第二章 エメラルドグリーンの瞳
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なぜかはわからないが、ロレンツォの動きは一瞬止まった。その隙を見逃さず、ナーディアは大きく剣を振り上げた。ロレンツォの右腕めがけて容赦なく打ち込めば、彼はややバランスを崩した。相当の衝撃だったらしい。
だが、さすがに剣を落とすところまではいかない。ロレンツォが体勢を立て直す前に、ナーディアは弾みを付けて、彼の脚に跳び蹴りをくらわせた。完全にバランスを崩したロレンツォが、地面に倒れ込む。どよめきが起きた。
「ナーディア、やっちまえ!」
言われずとも、とどめは刺すつもりだ。ナーディアが剣を振り上げた、その時だった。
「お前ら、調練前に、何やってる!」
険しい表情で調練場に現れたのは、団長のザウリだった。その場が、しんと静まりかえる。
「勝手な真似をして……。体力が有り余ってるんなら、調練で発揮しろ!」
「団長、止めないでください」
そう言ってザウリの前に立ちはだかったのは、マリーノだった。
「俺たち王宮近衛騎士団の中で、ナーディアだけがロレンツォと手合わせしていません。皆、二人の勝負を見届けたいんです」
そうだそうだ、と賛同の声が上がる。だが、そこへひときわ大きな声が響いた。
「いえ、もう勝負はつきました」
声の主は、ロレンツォだった。全員注目する中、彼はナーディアに一礼した。
「俺の負けです。手合わせをありがとう。約束通り、フローラ嬢のエスコートは諦めますので、どうぞご安心を」
「あ……、ああ。こちらこそ、ありがとう」
かろうじてそう返しながらも、ナーディアは怪訝に思った。なぜロレンツォは、こんなにあっさり敗北を宣言するのか……。
わあっと、歓声が上がる。ナーディアを称える声もあれば、ロレンツォを嘲る声もあった。マリーノは、駆け寄って来てナーディアの肩を抱いた。
「やったな。やっぱり、お前は最強だよ。王宮近衛騎士団の面目を保ってくれて、ありがとう」
「……そうだろうか。とどめを刺したわけじゃないぞ?」
「もう一歩だったじゃないか。何より、本人が負けを認めたんだ」
マリーノは嬉々としているが、ナーディアは釈然としない思いだった。ロレンツォが途中で隙を見せたせいで、かろうじてナーディアは優位に立つことができた。だが彼は、それまで明らかに手加減していたではないか。
(絶対に今度は、本気で戦わせてみせる……)
さっさと調練場を去って行くロレンツォの後ろ姿を見ながら、ナーディアは言い様のない敗北感を味わっていた。
だが、さすがに剣を落とすところまではいかない。ロレンツォが体勢を立て直す前に、ナーディアは弾みを付けて、彼の脚に跳び蹴りをくらわせた。完全にバランスを崩したロレンツォが、地面に倒れ込む。どよめきが起きた。
「ナーディア、やっちまえ!」
言われずとも、とどめは刺すつもりだ。ナーディアが剣を振り上げた、その時だった。
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「あ……、ああ。こちらこそ、ありがとう」
かろうじてそう返しながらも、ナーディアは怪訝に思った。なぜロレンツォは、こんなにあっさり敗北を宣言するのか……。
わあっと、歓声が上がる。ナーディアを称える声もあれば、ロレンツォを嘲る声もあった。マリーノは、駆け寄って来てナーディアの肩を抱いた。
「やったな。やっぱり、お前は最強だよ。王宮近衛騎士団の面目を保ってくれて、ありがとう」
「……そうだろうか。とどめを刺したわけじゃないぞ?」
「もう一歩だったじゃないか。何より、本人が負けを認めたんだ」
マリーノは嬉々としているが、ナーディアは釈然としない思いだった。ロレンツォが途中で隙を見せたせいで、かろうじてナーディアは優位に立つことができた。だが彼は、それまで明らかに手加減していたではないか。
(絶対に今度は、本気で戦わせてみせる……)
さっさと調練場を去って行くロレンツォの後ろ姿を見ながら、ナーディアは言い様のない敗北感を味わっていた。
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