5 / 9
5話 宿屋
しおりを挟む俺は空を見上げた。もう夕方らしい。
あと一狩と行きたいところだが、夜の狩りは視界が悪くなり危険だ。
今日は止めておこう。
よし、じゃあ宿屋を探すか。
俺は実家に住んでいたため、追放されてしまったいま寝泊まりする場所がないのだ。
その為に俺はお金を10000円ほど残しておいた。
このくらいあれば普通の宿なら泊まれるだろう。
俺は宿屋を探しに歩きだした。
テクテク
おっ、宿屋だ。
ここなら泊まれそうだな。
看板にも一泊3000円と書いている。
俺はその宿屋に入った。
「ごめんくださーい。」
「いらっしゃいまって、なんだ。リエルか。」
「え?何で俺の事知って......。」
「実家を追放されたのに金なんて持ってるはずないだろ。しっしっ。」
俺は追い出された。
何て事だ。噂はこんなところまで広がっているなんて......。
サエルは余程俺の事が嫌いだったんだな......。
はぁ、こんな調子じゃどの宿屋にも泊まれそうにないな。
こうなったら......!!
俺はとぼとぼとした足取りでサインリーアへと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えぇ!? 宿屋に泊まれなかった!? とういうこと!?」
宿屋から追い出された話をすると
メイラはビックリしてそう聞いてきた。
「俺が追放されたからお金を持っていないと思われて問答無用で追い出されたよ......。」
「ひどい......。」
ここまでひどい勘違いをされることなんて普通ないと思うが、多分誰かが俺を困らせるために噂を誇張して広げてるんだろうな。
はっきり言って滅茶苦茶悔しい。
それに、そんな噂のせいで被害を受けてしまう俺が情けない。
絶対に幸せになってやる。お前らになんか邪魔されない。
だが、今日は......。
「メイラ......俺をお前の家に泊まらせてくれ!!」
「うぅーん。良いんだけどさぁ、うちってほとんどが店だから、寝るスペースがほとんどないんだよね?」
「わかった。俺は売り場で寝る!!だから泊まらせてくれ!!」
「いやいや......それはちょっと罪悪感があるというか......あぁもう!!しょうがない!!今日は一緒に寝よう!!」
うぅっ。優しい。
さっきまでひどい奴にあったからか尚更優しく感じる。
俺はメイラの厚意に甘えて、メイラと一緒に寝ることにした。
ー
ーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーー
ー
スルスル
俺は布団のなかに入った。
メイラの部屋はこう思うのはしつれいなのだが、本当に狭かった。
入ってすぐに布団があり、すぐ横にキッチンなどかあった。
「こうやって一緒に寝るのは久しぶりだな。」
「うん。そうだね。何年ぶりだろう。10才くらいの時が最後だったから5年ぶりくらいかな?」
「そうだな。あの頃は俺たちも子供でちょっかいかけたりしてたよな。」
「そうだね。思えばあの頃が一番元気だった気がするよ。」
「そうだな。」
俺はたちそんな会話をしていたが、俺は意を決してメイラに話しかけた。
「泊まらせて貰っているのにこんなことを言うのはなんだが一つだけ言いたいことがあるんだ。」
「ん?なに?」
「大したことじゃないんだが......。」
そう。大したことじゃない。大したことじゃないんだ。
そう、気持ちを押さえ付けていたが、我慢の限界が来た。
「なんで俺たちは同じ布団で寝なきゃいけないんだ!?」
「まぁ、図々しい。布団が一つしかないんだからしょうがないでしょ!!」
「だから俺は布団から出て寝るって言っているのにそれを拒むのはお前だろ!!」
「だって風邪引いちゃうでしょ!?」
正論なのがイライラする。
メイラの言っていることは間違ってはいないため逆らえない。
だからせめてもの反抗で布団のギリギリのところまで逃げて、その上メイラの逆方向を向いて寝ている。
「だけどな!! 年頃の男女がこんなことしたら間違いが起こるかも知れないだろ!?」
「それはないよ。だってリエルなそんなことするはずが無いもん。」
そしてメイラはクスリと嗤った。
俺は信頼されていることに少し嬉しさを感じたが、それでも反論を続ける。
「それでもだ!!」
「もうしつこい!!そのままで寝なさい!!」
メイラはそれっきり黙ってしまった。
本当にメイラは頑固だな。昔からそうだ。
あのときだって......。
そんなふうに昔のことを思い出し感傷に浸っていると、メイラの穏やかな寝息が聞こえてきた。
「スースー。」
「はぁ、あんなに 大声を出していたのにもう寝たのか......。」
俺は呆れたようにそう言って布団からでた。
やはり、年頃の男女がこんなことしてはいけない。
俺はメイラに布団をしっかりとかけた。
そして。
ポンポン
俺はメイラの頭を撫でた。
「ありがとな、メイラ。俺にはもうお前しかいないんだ。このまま親友でいてくれよ?」
俺はそう言って、敷布団のはしっこに寝転がった。
ぶわっ
何かが舞うような音と共に背中に弱い痛みが走る。
何事かと思い振り返ろうとするが、からだが動かない。
何かに押さえられているようだ。
すると、耳元で声が聞こえてきた。
「もう、駄目じゃない。寝ている女の子を撫でるなんて。私じゃなかったら通報されてたわよ?」
「っ!!」
俺は声がでなくなってしまった。
まさか起きていたとは。
「もう。罰として布団から出られないように抱きついて寝るからね。」
「くっ!!」
俺はメイラに抱かれたまま寝ることに決定してしまったらしい。
リエルの眠れない夜が始まった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者パーティーに追放されたけど、僕は女神様と魔王を倒しに行きます。
クラットス
ファンタジー
勇者にハックは理不尽な理由でパーティーを追放される。
ハックは武器と防具を剥がされ、勇者達の居る町からでた。
その末に辿り着いたハックは一つの村に辿り着くと新しい出会いに運命の歯車が動きだし魔王討伐へと向かうのであった。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる