214 / 214
「愛してる。」
しおりを挟む陽夏のその一撃は陽夏の全ての体外魔力と体内魔力と生命力を使い切った技だったようだ。
陽夏は技によって出来たクレーターの中心地に倒れ込んでいた。
俺はその陽夏に向かって行き、すぐさま陽夏を治した。
「うぅ、あ、ありがとう…………って、やったの!? 終わったの!?」
「…………あぁ、全てが終わったよ。」
本当に、全てが終わったんだ。
俺達を脅かすカルト集団の主である現人神も死んだ。
そして、現人神によって全てのダンジョンが1箇所に集められていたようなので、世界中のダンジョンは全て消えた。
これによって世界には本当の平和も戻ってきたのだ。
ただ、魔法はまだ使えるようだけどな。
「はぁー、良かった、これで一件落着…………ともいかないよね。」
「…………そうだな。」
俺達は死んでしまったコナーの元に駆け寄る。
俺達はその所で思いっきり泣いた。
関係ないはずのモルフィスまで泣いていた。
コナーはもうこんな状態で人に見られたくもないだろう。
俺達は何とか周りにある布などを使ってコナーを巻いて姿が見えないようにした。
「…………それで、どうすればいいの?」
「えーっと、多分俺の事をまた切ればいいと思う。ある程度の能力は僕の元に戻ってきたりもしたし、死ぬ事は無いと思うから…………。だからえっと…………。」
「なに急にコミュ障みたいになってるのよ、そんな話してないわけ、で…………も…………。」
陽夏はそこでこの戦いが始まる前に言ったことを思い出したようで、思いっきり赤面する。
俺は耐えきれずにすぐに指示を出す。
「まぁ、いい、とりあえず俺の事を切ってくれ!」
「あぁ、うん、そうね!」
陽夏は俺の言葉に恥ずかしいからか、物凄い勢いで俺を3枚に下ろすという超人技を披露した。
俺は3人に別れた。
俺とモルフィスとゆうちゃんだ。
ゆうちゃんと俺は思いっきり抱き合う。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
ゆうちゃんはずっと俺の事を抱きしめ続ける。
その上からさらにもう1人俺を抱きしめた。
陽夏だ。
「本当に…………心配したんだからぁ!」
「あぁ、2人とも、本当にごめんな…………。」
俺は2人の頭をポンポンと撫でる。
…………あぁ、本当にこのままこのふたりと一緒に居たい。
だが、もうそれも無理みたいだ。
「なぁ、モルフィス。」
「な、何ですか? 晴輝さん。」
「ははは、そんなに畏まらなくったっていいって、さっきまでの威勢はどうした?」
「いえ、俺はあなた達に酷い事をした罪人です、そんな態度では…………。」
「まぁ、いいよ、一つ頼みたい事があるんだ。」
本当はこいつに頼む仕事は俺がやりたいことだった。
しかし、それももうできない。
「陽夏とゆうちゃん、俺の大切な人を、お前が守ってくれ、俺の代わりにな。…………あ、手を出すのは許さないからな?」
「え? 晴輝、何言ってるの? これから一生私達のことを守ってくれるんじゃないの?」
「うん、お兄ちゃんはこれからずっと私達と一緒だよ?」
「…………。」
俺の頬から涙が流れ落ちる。
「ごめんな、2人とも、俺の体はもう駄目なんだ、色んな人の意識がでたりはいったりしたり、体が何個も分かれたり、挙句の果てにはあの分身体から溢れ出る負の魔力を大量に吸収したんだ、もう俺は、どうやっても死んでしまうみたいなんだ。」
俺だって死にたくない。
生きれるものならこれからずっと生きていたい。
だけど、自分の体の事だから自分が一番分かっている。
俺はもう、長くない。
「嘘…………冗談よね? 晴輝はせっかく元に戻って私達の元に帰ってきたのに死ぬなんて…………。」
「お兄ちゃん、もう一緒に居れないの? やだよ…………。」
「本当にごめんな、もう、俺は動く事すら出来ないんだ。」
俺の体は塵と化していっている。
何とかか内部が先に塵になるようにしているが、もうそろそろ限界だ。
だけど、こんな最後なら悪くない。
俺の大切な人2人に囲まれて、その2人に看取られて死ぬんだ、最高の最後じゃないか。
「…………最後に、最後にもう一度だけ、俺と、キスをしてくれないか? 恋人っぽい事なんて殆ど出来てないけど…………最後にこれだけはしておきたいんだ。」
「…………そんなのいくらでもしてあげるわよ! だから、だから死なないでよ!」
陽夏とゆうちゃんは号泣してくれている。
俺の心がジーンと熱くなる。
そして、俺は2人とキスをした。
紛うことなき最後のキスはどこまでも甘かった。
「2人とも…………愛している。」
俺は涙を流しながら満面の笑みを浮かべる。
「晴輝…………私も、愛してる!」
「お兄ちゃん…………私も愛してるよ!」
2人も涙を流しながらも満面の笑みを浮かべて俺を看取ってくれた。
これで、もう悔いは無い。
2人とも、幸せに生きてくれ。
俺はその想いだけを残して塵となり消えた。
その空間には陽夏とゆうちゃんの泣き叫ぶ声だけが鳴り響いていた。
◇◇◇◇
核の冬。
度重なる戦闘の末、世は塵に覆い尽くされていた。
それでも、ダンジョンが無くなり、平和は訪れた。
その塵を見る度に2人は思い出すのであった。
私達の愛した人を。
1
お気に入りに追加
629
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(11件)
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結!
……していた……だと?
……忘れてるから最初から読もう……。
嬉しいこと言ってくれるじゃないですか、泣きますよ
持ちスキルでは蘇生不可(別ルートをお探しください)か……。
しかしこれは、新鮮なままでの保存とかには役立つのかな……。
それとも修復スキルとかかな。
続きが楽しみです