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214話 最後の戦い5
しおりを挟む陽夏は容赦なく俺に向かって攻撃をしてくる。
その度に肉片が辺りに散乱する。
その肉片の一つ一つに誰かの意識が入り込み、自立して陽夏を襲いかかる。
肉片は全てモルフィスの意思によって行動を決定されているため陽夏やコナーに攻撃をするが、肉片になったところにその意識が入り込んでいるということは、少なくとも一つになって一緒になりたいとは誰も思っていないのだ。
そうやって攻撃していると、陽夏の様子が変わる。
「…………ねぇ、にぃに、やっぱり私にぃにのそんな姿みたくないよ! ねぇ、戻ってきてよ!」
これは、ソルか。
明らかに陽夏の様子が違う。
その姿に、明らかに俺の中のモルフィスが揺れているのが分かる。
それでもモルフィスは何も考えないように、俺達に何も伝わらないようにしている。
…………俺は少しイラッとした。
自分の蒔いた種だ、自分で何とかしてもらいたい。
「…………にぃに。」
陽夏の中に居るソルが寂しげにそうつぶやく。
その瞬間、モルフィスが激しく陽夏を攻撃し始める。
「やめ……ろ!」
俺は陽夏を攻撃している俺の顔面をぶん殴る。
俺の中に入っている人達の力もどんどんと弱まっていっているし、モルフィスもかなり揺れている。
そのため俺が自由に身体を動かす事が一瞬可能になった。
俺はモルフィスにイラついていたので、俺の中に居るモルフィスに怒鳴りつける。
モルフィスの行動は明らかに矛盾している。
みんなを助けたいという純粋な想いが今では歪曲して世界を滅ぼすという想いにまで発展している。
だが、普通に考えてみろ、それって幸せって言えるのか? それがお前の幸せだって言えるのか!?
俺の記憶にあるモルフィスの幸せは教会でみんなと楽しく笑って暮らすことだった。
だが、今ではそんな事出来なくなっているじゃないか。
所か一緒に過ごしたかったはずのソルやセイラを悲しませている。
今俺の中に居る教会のみんなの意識は楽しそうにしているが、それは全部お前が植え付けたものだ。
それが本心じゃないのはモルフィスだって気づいているはずだ。
もうそろそろ目を覚ませ!
…………俺のその言葉に、壁を作っていたモルフィスの本心が俺達に伝わってきた。
そこから出てきたのは親に捨てられ弱っていた頃のモルフィスだった。
オルクスに育てられ、一時期は普通の子供に戻ったと思われたが、日々モルフィスの心にあったのはまたあの時のように捨てられないか、1人になってしまわないかという恐怖だった。
モルフィスの行動は全てがそこから来ていた。
みんなと離れたくない、1人になりたくない。
そういう想いが激化して逆にみんなの幸せを奪っていたようだ。
自分でもそんな事して1人にならないようにするのは間違っているのは分かっていた。
それでも、怖くて、怖くて、それ以外が考えられずにみんなから全てを奪ってしまおうという思考に陥っていたみたいだ。
…………もっと早くそれを言ってくれたら良かったんだけどな。
今はもう引くに引けない所まで来てしまっていた。
モルフィスの想いは増えに増えて今ではもはやその想いだけで増殖を始めている。
そのため、今モルフィスがどれだけ止めようとしても、もう俺は止まらないみたいだ。
俺は、その全てを打ち切るため、体の制御をモルフィスとゆうちゃんと共に行い陽夏の前に立った。
「陽夏、最終決戦が始まる! 俺の事を切るんだ!」
俺は手を広げて陽夏が切りやすい様な体制をとる。
そんな姿に陽夏は混乱してしまっている。
今の俺の姿はもうほとんど元の俺の姿になっているからだろう。
「け、けど、もうそれだけ動けるならもういいんじゃ…………。」
「…………大丈夫、切っても切らなくても同じだからね、切った方が後腐れなく終われると思う…………だから、切ってよ、陽夏ちゃん。」
混乱している陽夏の背後からボロボロになったコナーが出てきた。
目からは大量の血が常に吹き出しており、身体中の至る所からも血が出ていた。
しかし、そのコナーの顔は悲痛に歪んでいた。
「それってどういう…………分かったわ。」
陽夏はコナーの言葉にさらに混乱したような様子を見せたが、コナーの言葉を信じて俺に刀を向ける。
そして、俺の無防備な身体を一刀両断した。
そして、二分された俺の体の、俺の意識が無い方が先に起き上がった。
まさか、あれは、俺の力の大部分を奪い取っている!?
今の俺には滾る魔力が少ししか無い。
スキルも、身体能力もその大部分がが奪われてしまっている。
そして、1番厄介なのは、その俺の分身は俺の中の意識を持っていない、ただ純粋なモルフィスの想いの塊だという事だ。
この分身はどうやら陽夏たちを全員吸収してこの世界を滅亡させることしかかんがえていないようだった。
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