上 下
161 / 214

162話 出航2

しおりを挟む


 俺はだだっ広い大海原の真ん中で船を操縦していた。

 嫌いな人もいるかもしれないが、その清々しい雰囲気は嫌いじゃない。

 …………それがこんな状況じゃなかったらな!

 俺は意識を乗っ取られないように、意識を奪い返そうとはせずに、俺の意識を留めて強く保つ事に全てを注いでいる。

 それのお陰で俺という存在は消えていないが、依然として俺の体は俺の中のナニカが乗っ取ったままだった。

 まぁ、最悪中国などに行ったとしてもそこでゆうちゃんを見つけられればそれでいいのだが…………。

 なんだか中国やロシアは宗教まで厳しく規制しそうなので、俺が探しているカルト集団も居ないような気がするのだ。

 まぁ、これも全て俺の偏見なのでもしかしたら普通にゆうちゃんが居るかもしれないし、中国やロシアも友好的で、俺に向かって無闇に攻撃したりしてこずに情報を提供してくれるかもしれない。

 不安要素は尽きないが、今はこいつに着いていってもいいかもしれないな。

 俺は度々方向を確認しながら進んでいく。

 俺にはそんな発想はなかったのだが、俺の中のナニカは普通に方位磁針と地図を使って現在地の大体の位置を調べて進んでいた。

 …………まぁ、ゆうちゃんを取り戻せるならなんでもいい。

 無闇に人を殺したりする気は無いが、ゆうちゃんを助け出すためなら全人類を殺す覚悟だってある。

 俺は俺の中のナニカは少なくとも碌なものでは無いとは思っているが、それとは裏腹にゆうちゃんを取り戻すためのキーとなってくれるとも思っている。

 だが、とりあえず俺はこいつから意識を取り返せ無ければいけない。

 ゆうちゃんを取り戻したあとこの意識のままなら何かの拍子にゆうちゃんに危害が加わってしまうかもしれない。

 それだけは絶対に防がなくてはいけないからな。

 少し経つと肉眼でも見えるほどの距離に海岸が見えた。

 俺は地図を確認する。

 ここはどうやら韓国辺りのようだ。

 本当はロシアに着く予定だったらしいが、少し狂ってしまったらしい。

 まぁ、ロシアの首都はヨーロッパに近い所だ。

 人も恐らくそこに多く住んでいるだろうから、まずは中国から行こう。

 俺は船から降り、走り出した。

 完全に人は居ない。

 見たことの無いモンスターがちらほら見えるが、そいつらは無視して俺は走る。

 日本に居る時ならそいつらは全員倒すのだが、ここにはもう生きている人間は居ないはずだ。

 ならばそんな事をする必要は無い。

 俺は構わず走る速度をあげていく。

 今の俺の走る速度はもはや車よりも早いだろう。

 しかも車よりも小回りが利くため、建物を避けたしながらほぼ一直線に中国へと向かっていく。

 韓国の街並みは悲惨な程に破壊し尽くされていた。

 韓国だって軍事的にはそこまで弱い国では無い。

 どころか世界基準で言えば強い方だ。

 それでも滅ぼされてしまう。

 モンスターの脅威がどれほどの物なのかがよく分かるな。

 とはいえ俺は物凄い速さで走っているため、モンスターの影響は受けていない。

 チラッと見えた感じでは首の無い騎士のようなモンスターやごつい牛のようなモンスターなど、明らかに強そうなモンスターも多数居たため、いちいち戦っていては時間がかかりすぎてしまうだろう。

 今の俺にはそんな時間は無いんだ。

 箱を開けているとそっちに集中してしまい、意識がそっちへ行ってしまうためそれすらもしていないからな。

 そんな事をしてまで俺は早く走ったが、そこでひとつの障害にぶつかってしまった。

 板門店だ。

 韓国と北朝鮮の国境であり、昔は厳重な警備をされていた。

 今は人も生きていないと思い、特に警戒はしていなかったのだが、そのには様々な武器を持った人達が何人か警備をしていた。

 俺は猛スピードでそこを通り抜けようとしたため、その人達に止められてしまう。

 なんて言っているのかは分からないが、明らかに怒っている様子だったため、俺がここに侵入しようと勘違いしているのだろう。

 まぁ、確かに侵入をしようとはしているのだが、あくまで通り抜けたいだけであって、ここになにか害を与えたい訳では無い。

 …………いや、まてよ、これだけ厳重な警備をしているのだ。

 中に独自のコミュニティが形成されていてもおかしくない。

 コナーから話は聞いていないが、まぁ、北朝鮮だ。

 他の国へと情報を発信しなくてもおかしくは無い。

 それでも周りの情報は集めているだろうし、この人たちから話を聞けばゆうちゃんの情報も手に入れられるかもしれない。

 俺はその人達から話を聞こうと、出来るだけ笑顔を使って話しかけた。

 しかし、こっちの言葉も伝わっていないため、両者どちらとも会話にならない。

 しょうがない、日本語を使える人を送ってもらおう。

 そうすれば何とか話せるはずだ。

 俺はそう思ったため、その人達にその旨を伝えようとして…………その人達を斬った。


「…………えっ、ええぇ!?」


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...