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146話 コナーの過去

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 僕は瓦礫だらけになってしまった警察署だった場所に走ってきた。

 僕の目的の場所はここでは無いのだが、そこまで行くために僕が知っているのはここくらいなんだ。


「えっと、確かここら辺だったかな?」


 僕は瓦礫をかき分け、鉄のハッチのようなものを探す。

 瓦礫だらけになり元の記憶にあるあの強大で威圧感を出していたあの建物の姿は見る影もない。

 ここはついこの前まではここは機能を残して居たが、度重なるトレントなどのモンスターによる襲撃により遂に陥落してしまった。

 トレントは鬼などのモンスターよりは数段弱いが、それでもゴブリン等のモンスターとは比べ物にならないほどの強さを誇るモンスターだ。

 ここには多数の警察官、つまり戦闘要員が居たためかなりの時間を生き残る事を出来ていたが、それもこの前のモンスターの大量出現によって陥落してしまった。

 僕はそこに残る多数の瓦礫の中を進んでいき、そのハッチがあった大体の場所まで進んでいく。


「困ったなぁ。瓦礫が積み重なってる…………。」


 どうやら僕が探し出そうとしているハッチがある場所は特に崩壊が激しく、僕の身長よりも高いほどまで瓦礫が積み重なっている。

 僕はため息を着いた。

 これは骨が折れそうだ。

 僕はその瓦礫を一つ一つ取り除いていく。

 僕だって晴輝君とか程では無いけど、数百キロ程の物を投げ飛ばせる程には力がある。

 これもスキルによるものだ。

 それでもこれ程の量の瓦礫を取り除くのには時間がかかってしまう。

 僕はそれでも諦めずに地道に瓦礫を取り除いていく。


「うわっ、酷い匂いだ。」


 僕はその匂いに嗅ぎ覚えがあった。

 腐臭だ。

 それも人間が腐ったものだろう。

 恐らくこの下には逃げ切れずにこの瓦礫達の下敷きになって死んでしまった人が居るのだろう。

 嫌だなぁ、僕は人が死んでしまうのはもう何度も見てきたけど慣れるなんてことはいつまでもしないんだ。

 死体を見る度に毎回のように吐き気を催してしまう。

 僕は元々そこまで気が強い方では無いから、そういうのはごめんなんだよ。

 僕は嫌がる気持ちを抑えつつ瓦礫を撤去していく。

 少しづつだけ瓦礫の量が減ってきて、地面のような部分が見えてきた。


「…………やっぱりあるよね。」


 僕は大きめの瓦礫を取り除くと、そこに人の腕がはみ出ていた事に気づく。

 あぁ、きついなぁ。

 けど、この人が悪いわけじゃない。

 本当はしっかりと埋葬するか火葬したいんだけど、生憎僕にはそんな時間は無い。

 僕はその人を引っ張り出し、近くの大きめの瓦礫の上に寝かせて、周りの瓦礫をその上からかけた。

 そのままにしておいたら動物などが寄ってきて食べられたりしてしまうからね。

 僕はそしてそれに向かって手を合わせた。


「粗雑なお墓だけど、我慢してね。」


 僕はその人の冥福を祈った。

 そしてその場所に戻ると、その人が倒れてしたところに僕の目的のハッチがあった。

 ハッチはその人の体液やらなんやらで錆びてしまったのか、酷い有様だった。

 僕はそのハッチをかかと落としで破壊する。

 僕はそのハッチの開け方など知らないので、こうするしかないのだ。

 僕はそうしてそのハッチの中へと入っていく。

 中は少しカビっぽいが上よりはよっぽど綺麗な廊下が続いていた。

 はぁ、二度とこんなところ戻って来るとは思ってなかったんだけどな…………。

 僕はその廊下に露骨に悪態を着く。

 僕だって本当はこんなところ来たくなかった。

 けど、晴輝君を救う為にはここが必要なんだ。

 廊下を数十分ほど走り続けると、重々しい見た目をした鉄の扉が現れた。

 僕はその扉に予め持っていた薬品をかける。

 これはダンジョン産の酸のような物だ。

 これを使えばこのドアだって開けることが出来る。

 ダンジョン産の薬品の効果は絶大で、その扉は跡形もなくぼろぼろになった。

 その扉に触れないように気をつけて進むと、見覚えのある研究室のような場所に着いた。

 ここは僕が幼少期に過ごした場所だ。

 それでも僕の記憶の中には断片的な記憶しかない。

 何でかは分からないけど、僕がこの場所で幼少期を過ごし、その後逃げ出したというのは覚えている。

 だけど、それまでの記憶が曖昧なんだ。

 けど、一つ覚えているのは謎の薬を飲まされた事なんだ。

 そこから僕はひとつの仮説を立てた。

 それは僕は記憶を1度消されたという事だ。

 そして、その後何らかの力を使い記憶を取り戻し、ここから脱出したのだと思う。

 だとすれば一つ疑問に残る事がある。

 それは、僕は何故記憶を取り戻すことができたのかという事だ。

 僕はこの疑問に一筋の光が見いだせたような気がした。

 それは、僕が記憶を何らかの手段で取り戻す事が出来るかもしれないということだ。

 これが正しいのなら、僕はあることが出来る様になる。

 それが全部僕の妄想などだったりしたのだったらもう僕は終わりなんだろうけど、その考えが正しければ僕は晴輝君を救う事が出来るだろう。

 僕はその研究所中を探し回る。

 僕が探しているのは、記憶を消す薬と逆の効能のある薬だ。
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