139 / 214
140話 鬼
しおりを挟む私は刀を構えて先へと進んだ。
この刀はコナーですら名前が分からなかった逸品だ。
私の成長とともにこの刀も強くなっていってくれる私の相棒だ。
今回もその力を借りるべく目の前に構える。
私はこの刀であの鬼を倒す、そう決意して進む。
ダンジョンはウルフのダンジョンをさらに険しくしたような見た目で、所々から炎が吹き出ている。
「…………居た。」
私はこの目であの鬼を視界に入れる。
鬼は私がダンジョンに入ってすぐの場所に居た。
鬼は大きな岩のような場所に座っているようで、まだこちらには気づいていないようだった。
私は奇襲などはかけずに単身でその鬼の前に出る。
奇襲なんかしたら意味が無いからね。
「久しぶり、この前の借りを返しに来たわよ。」
私は刀を鬼に向ける。
私は鬼と戦うために鬼術を使う。
鬼は私に気づいてゆっくりと腰を上げる。
鬼は私を見ても焦ることはなく冷静に刀を構えた。
鬼からオーラが吹き上がる。
私も負けじと体に魔力を纏わす。
私のスキルの鬼術では魔力をする身体中に纏うことによって身体中を活性化させて身体能力を向上させることが出来る。
それと同じような事をあの鬼も出来るようだ。
私と鬼は睨み合う。
剣術のスキルのレベルが上がったからこそ分かる。
あの鬼には隙がない。
何処を攻撃したとしても攻撃を返される未来しか見えない。
故に私はあの鬼に攻撃できないままでいた。
一瞬、鬼がこちらを攻撃するような身振りをした。
私はそれに反応して体を防御をするようか形に変化させる。
そうすると鬼も攻撃を止める。
痛い程の圧を受けて私は顔を強ばらせた。
鬼の視線が私の一挙一動を全て観察する。
私も負けじと鬼の行動を読む。
フェイントや牽制が入り交じった高度な睨み合いが続き私達は攻撃ができない。
…………これじゃあダメだ。
これではあの鬼のペースになってしまう。
私は無理にでもあの鬼に食らいついていかなければならないのだ。
私は刀に魔力を込める。
そして、あの鬼がその魔力に気づく前にそれを解き放つ。
【七月流火】
白い炎が飛び散り私の刀は鬼へと迫る。
それが開戦の合図となった。
白い炎は鬼の全てを奪うべく猛威を振るう。
しかし、鬼はその攻撃を易々と受け止める。
鬼の顔がニヤリと笑うが、すぐにその表情は驚愕に染まる。
「ふふ、驚いた? この攻撃は防御しても無駄よ!」
その炎は鬼を包み込み命の灯火を枯らしていくかのように鬼にまとわりついた。
鬼が苦しそうにし炎を払いながら後退する。
鬼は私を押し返し、炎を完全に断ち切った。
鬼の体には火傷とは違う白い傷が出来た。
「まだまだ!」
私は攻撃の手を緩めない。
1度攻撃が始まってしまったのならそれに私は乗っかってしまった方が良い。
私の刀が一撃、一撃と鬼へと振り下ろされる。
それでも攻撃は鬼には届かない。
「やるわね…………けど、それでいい! 私の恐怖の源が弱かったらがっかりだもの!」
私は流れるように鬼の刀を交わしカウンターを仕掛ける。
初めて鬼の体に刀が届く。
鬼の体に浅い切り傷が出来る。
まだまだ鬼を死に至らしめるには足りない。
私はまた刀に魔力を纏わす。
晴輝が居た時のような強い魔力を込める事は出来ない。
あの時は晴輝が私の事を守っていてくれたからこそ安全に魔力を込めることが出来たのだ。
今になっても晴輝の存在が私の中で煌めいているのが分かる。
私も未練たらしい女だ。
私は強さを求めていればいいんだ。
私はその思いも込めてそのままその魔力を燃やす。
【七月流火】
白い炎が再び吹き出す。
この攻撃ならあの鬼にも攻撃が当たる。
命を奪う炎は強大になり、鬼へと迫る。
鬼はその炎の性質を理解したのか、出来るだけ当たらないように行動するが、炎からは逃れられない。
「これで最後!」
私の炎は遂に鬼の胸元に突き刺さる。
その炎は鬼の中に入り込み鬼を蝕む。
「やった!?」
私は鬼を見詰める。
やはり消えたりはしない。
まだ生きている。
私は刀を振り上げた。
そしてその刀を鬼へと振り下ろす。
「えっ!?」
金属音をならし刀が鬼を貫く事は無かった。
何が起こっているのか分からない。
この鬼にはそこまでの防御力は無かったはずだ。
かなりの防御力を持ってはいたが、私の刀で傷一つ付けられないほどのものでは無い。
私はすぐに異変に気づく。
しかし、それは遅すぎた。
「ぐはっ!?」
私は近くの凸凹した岩まで体を飛ばされる。
鬼は私の目の前で雄叫びを上げた。
鬼のオーラが一段と極大なものになる。
さっきまでとは比べ物にならない、命を燃やした力だ。
「やばいわね…………。」
私は痛む体に鞭を打って無理やり戦闘態勢に入らせる。
残りの魔力はまだある、けど、私の体は今の一撃で少しダメになってしまった。
それでも私は戦い続ける。
晴輝のために。
0
お気に入りに追加
629
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる