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140話 鬼

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 私は刀を構えて先へと進んだ。

 この刀はコナーですら名前が分からなかった逸品だ。

 私の成長とともにこの刀も強くなっていってくれる私の相棒だ。

 今回もその力を借りるべく目の前に構える。

 私はこの刀であの鬼を倒す、そう決意して進む。

 ダンジョンはウルフのダンジョンをさらに険しくしたような見た目で、所々から炎が吹き出ている。


「…………居た。」


 私はこの目であの鬼を視界に入れる。

 鬼は私がダンジョンに入ってすぐの場所に居た。

 鬼は大きな岩のような場所に座っているようで、まだこちらには気づいていないようだった。

 私は奇襲などはかけずに単身でその鬼の前に出る。

 奇襲なんかしたら意味が無いからね。


「久しぶり、この前の借りを返しに来たわよ。」


 私は刀を鬼に向ける。

 私は鬼と戦うために鬼術を使う。

 鬼は私に気づいてゆっくりと腰を上げる。

 鬼は私を見ても焦ることはなく冷静に刀を構えた。

 鬼からオーラが吹き上がる。

 私も負けじと体に魔力を纏わす。

 私のスキルの鬼術では魔力をする身体中に纏うことによって身体中を活性化させて身体能力を向上させることが出来る。

 それと同じような事をあの鬼も出来るようだ。

 私と鬼は睨み合う。

 剣術のスキルのレベルが上がったからこそ分かる。

 あの鬼には隙がない。

 何処を攻撃したとしても攻撃を返される未来しか見えない。

 故に私はあの鬼に攻撃できないままでいた。

 一瞬、鬼がこちらを攻撃するような身振りをした。

 私はそれに反応して体を防御をするようか形に変化させる。

 そうすると鬼も攻撃を止める。

 痛い程の圧を受けて私は顔を強ばらせた。

 鬼の視線が私の一挙一動を全て観察する。

 私も負けじと鬼の行動を読む。

 フェイントや牽制が入り交じった高度な睨み合いが続き私達は攻撃ができない。

 …………これじゃあダメだ。

 これではあの鬼のペースになってしまう。

 私は無理にでもあの鬼に食らいついていかなければならないのだ。

 私は刀に魔力を込める。

 そして、あの鬼がその魔力に気づく前にそれを解き放つ。


【七月流火】


 白い炎が飛び散り私の刀は鬼へと迫る。

 それが開戦の合図となった。

 白い炎は鬼の全てを奪うべく猛威を振るう。

 しかし、鬼はその攻撃を易々と受け止める。

 鬼の顔がニヤリと笑うが、すぐにその表情は驚愕に染まる。


「ふふ、驚いた? この攻撃は防御しても無駄よ!」


 その炎は鬼を包み込み命の灯火を枯らしていくかのように鬼にまとわりついた。

 鬼が苦しそうにし炎を払いながら後退する。

 鬼は私を押し返し、炎を完全に断ち切った。

 鬼の体には火傷とは違う白い傷が出来た。


「まだまだ!」


 私は攻撃の手を緩めない。

 1度攻撃が始まってしまったのならそれに私は乗っかってしまった方が良い。

 私の刀が一撃、一撃と鬼へと振り下ろされる。

 それでも攻撃は鬼には届かない。


「やるわね…………けど、それでいい! 私の恐怖の源が弱かったらがっかりだもの!」


 私は流れるように鬼の刀を交わしカウンターを仕掛ける。

 初めて鬼の体に刀が届く。

 鬼の体に浅い切り傷が出来る。

 まだまだ鬼を死に至らしめるには足りない。

 私はまた刀に魔力を纏わす。

 晴輝が居た時のような強い魔力を込める事は出来ない。

 あの時は晴輝が私の事を守っていてくれたからこそ安全に魔力を込めることが出来たのだ。

 今になっても晴輝の存在が私の中で煌めいているのが分かる。

 私も未練たらしい女だ。

 私は強さを求めていればいいんだ。

 私はその思いも込めてそのままその魔力を燃やす。


【七月流火】


 白い炎が再び吹き出す。

 この攻撃ならあの鬼にも攻撃が当たる。

 命を奪う炎は強大になり、鬼へと迫る。

 鬼はその炎の性質を理解したのか、出来るだけ当たらないように行動するが、炎からは逃れられない。


「これで最後!」


 私の炎は遂に鬼の胸元に突き刺さる。

 その炎は鬼の中に入り込み鬼を蝕む。


「やった!?」


 私は鬼を見詰める。

 やはり消えたりはしない。

 まだ生きている。

 私は刀を振り上げた。

 そしてその刀を鬼へと振り下ろす。


「えっ!?」


 金属音をならし刀が鬼を貫く事は無かった。

 何が起こっているのか分からない。

 この鬼にはそこまでの防御力は無かったはずだ。

 かなりの防御力を持ってはいたが、私の刀で傷一つ付けられないほどのものでは無い。

 私はすぐに異変に気づく。

 しかし、それは遅すぎた。


「ぐはっ!?」


 私は近くの凸凹した岩まで体を飛ばされる。

 鬼は私の目の前で雄叫びを上げた。

 鬼のオーラが一段と極大なものになる。

 さっきまでとは比べ物にならない、命を燃やした力だ。


「やばいわね…………。」


 私は痛む体に鞭を打って無理やり戦闘態勢に入らせる。

 残りの魔力はまだある、けど、私の体は今の一撃で少しダメになってしまった。

 それでも私は戦い続ける。

 晴輝のために。
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