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133話 ジリ貧
しおりを挟む俺はあの外道男を殺す気でかかるが、俺にはそれほど強い攻撃手段は無い。
ダンジョンでな陽夏が居たので良かったが、陽夏が居なくなってしまえば俺にこれといった攻撃のできるスキルなどは無いのだ。
鬼剣術などもあり普通の人よりかは明らかに強いが、それでもあいつには届かない。
しかし、奴の攻撃も俺を死に至らしめる程の力は無い。
今の俺はよっぽどの事が無い限り死なないだろう。
だからこそ奴の糸の攻撃などでは俺を殺すどころか無力化すら出来ないだろう。
はっきりいって俺も攻めきれては居ない。
頑なに攻めの姿勢を続けてはいるがどちらも攻めきれていない。
「あはは、君なんでそんなに回復できるんだよ、普通そんなに治し続けていたら精神にも来るはずだけど…………まさか痛みを感じてないとかじゃないよね?」
男はまだ余裕綽々なようで、俺が何度も何度も体を治し立ち向かっていく様を見て愉快そうにしていた。
そんな様子を見ると俺はますます不愉快になっていく。
あんな外道に負けたくは無いが、あの様子から見てまだ力を温存しているのは確定だろう。
何が来ても死なない自信はあるが、他の人たちがなにかされるのはまずい。
俺はまだ人を生き返らせることは出来ない。
ゆうちゃんは一応生き返ったが、それも全ての力をかけて本気でやらなくては出来ないことだ。
それを他の人にもやるということは不可能だ。
しかも生き返らせたとしてもその人は動けなくなるため人的資材としての価値は無くなる。
確かにその人の家族の事やその人の事を考えるの生き返らせてあげたいのはやまやまなのだが、俺はそこまでの事をやる余裕は無い。
その為あの男が俺を無力化しつつ他の人を殺し始めたら実質俺の負けなのだ。
なにか策は無いのか…………。
そう思い周りを見渡すと遠くから聞こえていた陽夏が出している攻撃音が大きくなってきていることに気がついた。
そうか、陽夏だ。
陽夏は別動隊として遠くの場所から攻めてきているが、陽夏程の力があればそこの敵を殲滅することだってある程度の時間があれば出来るはずだ。
だとすれば陽夏の到着を待てば俺の勝ちと言うわけだ。
俺はそれまでにここの人達か殺されないようにしてればいいと言うわけか。
俺は攻撃されながらも重傷を負った人などが居たら出来るだけ治していくようにしているし、今までにそこまで死んでいる人は居ないはずだ。
俺は変わらず男へと攻撃を再開した。
他の人のところに駆け寄って治療を進めた方が良い気もするが、今はこの選択肢が1番いいだろう。
何故なら俺がそこまで戻るということはこの外道男まで着いてきてしまうと言う事だ。
そうなってしまえば確実に危険度は上がってしまうことだろう。
それだったら俺はここに残り奴の攻撃を防ぎつつその攻撃を周りの敵にも当てさせる事によって気づかれないように相手の戦力を減らしていったほうが安全だろう。
ムカつくことにこいつの攻撃はかなり強力なので敵に当てようとしていないのにも関わらずかなりの数の敵が死んでいく。
少し哀れだが、俺達を攻撃してきてるんだ、甘んじて受け入れてくれ。
そんなことを少しの間繰り返していると、段々とあの男の攻撃が緩やかなものとなっていく。
「あーもう飽きたな。君あれでしょ、1発で倒さないと倒れないボスみたいなやつ。昔やってたゲームに似た様なのが居たよ。」
「…………何が言いたいんだ。」
「そのボスの倒し方だよ。そのボスは倒すのはすっごいめんどくさかったけど、色んなバフをかけて超高火力の攻撃をしたらすぐに倒れたんだよ。」
男は腕を上に掲げる。
「君はどうかな?」
男はそう呟くと気持ちの悪い笑みを浮かべ、指をパチンと鳴らした。
…………何も起こらない。
が、あの男は涼しげな顔をし続けている。
何かが来る。
そう思い俺は周囲を見渡して警戒する。
「あはは、馬鹿だなぁ、ヒント出してあげたのにさ。」
「何言って…………。」
その直後俺の体の中を焼きながら貫く痛みが俺を襲った。
身体中が焼ける様な感覚だ。
とんでもない威力で頭のてっぺんからつま先までを貫かれた様な感覚…………いや、本当に貫かれている。
頭が焼かれて一瞬何も考えられなくなる。
しかし、すぐに体全体が綺麗さっぱり治された。
頭を貫かれて考えられなくなった俺が貫かれる前に瞬時に出した司令は体全体を治す事だった。
その司令は脊髄を伝って身体中に広がり、体全体を治して脳まで治してくれた。
何故こんなにも早く判断できたのかと言うと、多分ここでも賢明が働いてくれたのだろう。
このスキルがなければ判断が遅れてそのまま俺は体を治すことが出来ずに死んでいたはずだ。
今までバカにしていたのを土下座して謝りたい気分だ。
「うっわ、本格的に化け物じゃん今の速度ほぼ音速に近いぐらいの速さ出てたと思うんだけど…………。」
「はっ、笑わせるな、俺に攻撃は効かん。」
「あはは、まじかぁ。」
俺は少しのはったりを混ぜてそう啖呵を切るが、全くもってあの男には効いていないようだ。
それでも俺は戦いを続ける選択肢を取った。
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