131 / 214
132話 サイコキネシス
しおりを挟む俺がその男に斬りかかろうとすると、いきなり体に負荷がかかるような感覚が俺を襲った。
「くっ、何をした!?」
「さて、何だろうね。」
そう言って男は気持ちの悪い笑みを浮かべる。
体は少し動きにくいが、全く動けない訳では無い、この程度ならまだ戦えそうだ。
「へぇ、凄い力だねこれでも動けるなんて…………。これはちょっと想定外だなぁ。」
その男はそう言うが笑みは崩れない。
その笑みに不気味なものを感じてしまう。
俺は動きにくいがそのまま黒鉄に魔力を込めながらその男の元へ迫った。
男はまだ余裕の表情で後ろへと下がっていく。
俺はすかさず魔力を込めた斬撃を放った。
斬撃は周りの敵も巻き込みながらあの男へと迫るが、あの男の前に着いた瞬間、男のは遙か上空へと跳び上がった。
その跳び方は明らかに人間が普通に跳ぶ様子とかけ離れていた。
普通は跳ぶ時に跳ぶモーションは少なからず生まれるはずだ。
しかし、あの男にはそれがなく、不自然に上へと飛んでいった。
男は緩やかに降りていき、あの集団の中へと消えていった。
俺はその男を追いかけていく。
あの男を放置していたら確実にこちらに被害が広がってしまう。
それは避けなくてはならない。
幸いな事にこの集団はこちらから明確に進路を邪魔しなかったら攻撃などはしてこない。
なのでその人達の合間を縫ってあの男へと向かう。
もちろんついでにそこら辺の敵を気づかれない程度に切りつけていく事は忘れずにやっていく。
あの男は目立つ金髪をしているため間を縫ってそこまで近づくことは容易な事だった。
しかし、問題はそこからだ。
俺が間を縫って攻撃しようとしているように、あの男も俺に向かって攻撃してきたのだ。
しかし、違う点があるとすればそれはあの男は間を縫って攻撃するという事は一切しないということだった。
俺は糸によって体のいたる所を切り裂かれるが、それは直ぐに治すことが出来る。
しかし、周りの敵はそんな事は出来ないため、切られたらそのまま切られっぱなしになってしまう。
それなのにも関わらずあの男は周りの事は気にせずに周り諸共俺を切りにかかってくる。
あいつらは味方なんじゃないのかと思う程に周りの敵まで倒してくれる。
だが、そのおかげでどこから攻撃が来るのか分かりにくなってはいる。
「くっ!?」
またヒットしてしまった。
敵の後ろから敵を貫いてこちらに攻撃されると回避もできなければ防御も出来ない。
つまり為す術なく攻撃されてしまうのだ。
そんな中でも俺はその男に向かって進んでいるのだが、その男も一定の距離を取って俺の事を攻撃してきているので、なかなか追いつけない。
俺は段々とイライラしてきた。
「くそ、てめぇら邪魔だ!」
俺は周りの人を全員切り倒した。
魔力の籠った一撃なので大半の人が死ぬ。
「見えたぞ!」
俺はその奥にいる男の姿を見つけた。
俺は死体を踏みつけながらその男の元へ大きく飛び付いた。
「へぇ、やるじゃん、じゃあこれはどうかな!」
そう言うとその男は小さなナイフを何本も投げつけてきた。
だが、その程度ならば俺でも防ぐことが出来る。
俺は黒鉄を使ってそのナイフを弾き飛ばそうとした。
しかし、そのナイフはすんでのところで軌道を変え、俺の胴へと綺麗に刺さってしまう。
明らかにおかしい。
投げられたナイフは確実に俺に当たらない軌道を描いていたはずなのに、そのナイフが全て俺に刺さっている。
しかもそのナイフ達は未だに俺の体の中に侵入しようとし、ぐりぐりと動いている。
間違いない、あいつの能力はサイコキネシスの様なものだ。
そんな能力を使って糸を飛ばしたりナイフの軌道を変えたりしているのだろう。
俺は未だに動くナイフを引き抜き傷口を治す。
ナイフには毒が塗ってあったようでかなり痛いが、それでもしっかりと治すとその痛みは自然と無くなった。
手に残るナイフは俺の手を何度も何度も刺そうと動いているが、そのナイフはどこか遠くに投げ捨てた。
ナイフはすぐにこっちに帰ってくるかと思ったが、予想に反しナイフは軌道を少しこっちに向けただけで帰ってくることは無かった。
サイコキネシスにも限界があるのだろう。
糸のようなものなら振動させて攻撃手段として使えているが、ナイフほどの重さを持ってしまうともう自由自在に使うのは難しいのだろう。
「えぇ、あの毒すっごい痛いはずなのにもう治っちゃったの? 化け物じゃん。回復力は凄いと思ったけどもっと痛がると思ったんだけどな。」
「お前に言われたくないな、平気で仲間を殺すような奴の方がよっぽど化け物だ。」
「あは、その使い捨ての駒共がどうなろうと別にいいじゃん、確かに君の所みたいに回復してくれるなら使えると思うけど…………うちは数がいっぱいいるからね、ちょっとくらい殺してもいいのさ。それに、目的のために死ねるなら彼らも本能だよね!」
「…………外道が。」
あの男の物言いは虫唾が走る。
人を人と思わない鬼畜の所業。
あの外道は絶対に生かしてはいけない。
俺はその首を目掛け黒鉄を突きつけた。
0
お気に入りに追加
629
あなたにおすすめの小説
狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!
【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】
ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。
主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。
そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。
「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」
その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。
「もう2度と俺達の前に現れるな」
そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。
それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。
そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。
「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」
そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。
これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。
*他サイトにも掲載しています。
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜
撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。
そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!?
どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか?
それは生後半年の頃に遡る。
『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。
おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。
なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。
しかも若い。え? どうなってんだ?
体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!?
神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。
何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。
何故ならそこで、俺は殺されたからだ。
ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。
でも、それなら魔族の問題はどうするんだ?
それも解決してやろうではないか!
小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。
今回は初めての0歳児スタートです。
小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。
今度こそ、殺されずに生き残れるのか!?
とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。
今回も癒しをお届けできればと思います。
転生少女、運の良さだけで生き抜きます!
足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】
ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。
女神はミナの体を創造して問う。
「要望はありますか?」
ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。
迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
獅子姫の婿殿
七辻ゆゆ
ファンタジー
ドラゴンのいる辺境グランノットに、王と踊り子の間に生まれた王子リエレは婿としてやってきた。
歓迎されるはずもないと思っていたが、獅子姫ヴェネッダは大変に好意的、素直、あけっぴろげ、それはそれで思惑のあるリエレは困ってしまう。
「初めまして、婿殿。……うん? いや、ちょっと待って。話には聞いていたがとんでもなく美形だな」
「……お初にお目にかかる」
唖然としていたリエレがどうにか挨拶すると、彼女は大きく口を開いて笑った。
「皆、見てくれ! 私の夫はなんと美しいのだろう!」
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる