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87話 機械

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 この部屋は今までの部屋とは打って変わって近未来な機会が沢山置いてあった。

 というかまだ今までの半分ほどしか登ってきていないのに部屋に変化があった事に驚いていた。

 つまりこの部屋はあのだだっ広い部屋とは違う部屋なのだろうか…………。

 しかし、この部屋は見渡す限り機械ばかりで、どこを見ても階段のようなものがあるとは思えない。


「ねぇ、ここって何なの? よく分からないけど嫌な感じがする…………。それにびっくりするほど魔力が強い…………。絶対ここには何かあるわ。」


 そう言って陽夏は露骨に嫌な顔をする。

 俺は不思議な部屋だとは思っていたが、特に嫌な感じがする訳では無かったが、陽夏がそういうのなら何かあるかもしれない。

 魔力に関してはここまで来てもからっきしなので、やはり俺には魔力が感じられないのだろうか…………。

 ともかく早く探索を終わらせよう。

 俺達は周りのものを調べてみる。

 周りの機械の使い方など分からないため、触るのはやめておいたが、一つだけ気になる部分があった。

 それは部屋の真ん中にあった異質な雰囲気を醸し出している金属の筒の様なものだ。

 周りの機械も十分異質だが、その中でもこれは特に異質だった。

 その筒の下には赤黒いボタンが置かれており、それもまた異質な雰囲気を醸し出していた。

 このボタンを見つけた俺達は息を飲んでそのボタンを見つめていた。


「これは…………押さない方がいいのか?」

「いや、押しましょう。」

「…………え?」


 ちょっと待て、このボタンを押す?

 このボタンはどこからどう見ても危なさそうだろ。

 というかこれを見てどう押していいって判断になるんだ?


「…………なによ、その顔。まぁ、分かるよ? 明らかに押しちゃダメな感じはする。けど、何か押さなきゃダメな感じもするのよ。」

「いや、どういう事!?」


 何か陽夏の言っていることが矛盾に満ちている。

 陽夏はそのままどんどんとボタンへと近ずいて行く。

 まずい、このままでは陽夏がボタンを押してしまう。

 その時昔やったゲームを思い出した。

 赤いボタンを押すと様々な事が起こるというゲームだ。

 少なくともそのゲームではろくでもないことしか起こっていなかった。

 核弾頭が起爆したり、謎の生物が現れたり…………。

 そんなような事が起こってしまえばもうおしまいだ。


「待て陽夏! 安全を確認してからじゃないと駄目だ!」


 俺が引き止めるが、陽夏は止まらない。

 俺は陽夏の腕を掴み、陽夏の動きを止める。

 それでも陽夏は無理やり進んでいき、ボタンを押してしまった。


「はっ、私は何をやって…………。」


 陽夏は正気になったのか青ざめて自分が押してしまったボタンを呆然と眺めていた。


「あぁもう、しょうがない、早くその筒から離れろ! 何があるか分からん!」

「う、うん!」


 これから何が起こるか分からないが、陽夏だけでも守らなくては。

 俺の言葉に呆然とボタンを眺めていた陽夏はハッとしてすぐに俺の所まで駆け寄ってきた。


 俺と陽夏は息を飲んでその筒を眺める。

 少しするとその筒から怪しげな機械音ともまた違う甲高い音が鳴り出し、筒が開いていく。


「何だ…………これ…………。」


 そこにあったのはだった。

 肩から指先までの腕で、不思議な事に切断部分は良く見えない。

 その腕は下から上へと流れるよく分からない色の液体の中に漂っており、腐っている様子は無い。

 というか、よく見たら腐る様子どころかまだ生きているようで、ほんの少しだけ鼓動のようなものが感じられる。

 俺はあまりの不気味さにたじろいでしまうが、陽夏はその光景を冷静に眺めていた。


「あれ…………待って、あれって私の腕じゃないわよね?」

「いやいや、何言ってるんだ? 陽夏腕はそこにちゃんと着いてるだろ?」


 陽夏はあの腕を指差しておかしな事を言っている。

 冷静に見えて陽夏もかなりの衝撃を受けているのだろうか…………。

 陽夏はその腕と自分の腕を交互に見てオロオロとしている。

 俺達は最初は身構えていたが、どうやらあれ自体は攻撃をしてこない…………というか、こちらをあの腕に誘っている様な感じまでした。


「陽夏、とりあえず引こう。俺もお前も冷静な判断が出来なくなってるはずだ。」

「分かった…………。」


 陽夏は終始オロオロしながらも俺に付いてきて階段を降りた。

 俺は陽夏が冷静になるまで水を飲ませたりした。


「さて、もう大丈夫か?」

「うん、大丈夫ではあるんだけど…………やっぱり体というか心というかがあの腕に引き寄せられてる感じがする。」

「引き寄せられてるか…………。」


 やっぱりあれは罠なのだろうか。

 陽夏は俺には感じられない何かを感じているようだった。


「あの時何か感じたこととかは無かったのか?」

「うぅん…………あ、そういえば、あの筒が開いた瞬間すっごい強い魔力を感じたの。勘だけど、多分あれがこのダンジョンの魔力を生み出してるものだと思う。」

「どういう事だ??」

「ええっと、つまり、多分あれが最深部だと思うってと全てのモンスターとかアイテムはあそこから生まれてると思う。」

「じゃあ、あそこを探索する以外に選択肢はないってことか?」

「多分ね。」


 まじか…………はっきりいってあんな異様な所を探索したくない。

 けど、ゆうちゃんを助けるためだ。

 進もう。
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