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68話 ダンゴムシ
しおりを挟むとりあえずは攻撃して、反撃されて、治して、また攻撃してを繰り返しているが、俺も盾の女の人も特に消耗してないようだ。
このままだとイタチごっこだな…………。
ちらっと陽夏の方を見ると、陽夏は冷静に俺達の戦いを観察しているようだ。
この様子だと陽夏に攻撃に混ざってもらうことも出来そうだな。
俺は陽夏に呼びかける。
「陽夏! もうちょっとしたら絶対に攻撃を食らわないようにしながら攻撃に混ざってくれないか!」
「分かったわ! やっと出番ね!」
陽夏は嬉々として戦いに混ざった。
あんまり嬉々としてやるような事でも無いのだが、たまには強敵とも戦いたいのだろう。
さっきからゴブリンの処理の繰り返しで流石の俺もウンザリしていたからな。
さて、じゃあここから俺の仕事は陽夏のサポートだな。
何とかして俺はこの盾の女の人の気を引く必要がある。
とはいえ俺に出来ることと言えば格好の悪いゾンビアタックのみだ。
俺は体に常に治れと念じ続ける。
体をポカポカとした全能感が包み込む。
何故かは分からないが力が満ち溢れる。
これも俺のスキルの効果なのだろうか。
まぁ、今はそれを考えているどころでは無い。
今ならあの盾の女の人をどうにかできるかもしれない。
俺は黒鉄を地面に投げ捨てた。
今は黒鉄よりも俺の身体の方が強い。
俺は盾に向かってタックルした。
爆音と共に俺の体が吹き飛ばされそうになるが、身体中を常に治し続け盾と地面にへばりつき続けた。
「陽夏! っ、今だ! 回り込め!」
攻撃面を陽夏に頼りきっているというのは少し申し訳ないが、ここは協力していかないと勝てないのでしょうがない。
陽夏は俺と比べたら防御面が弱いため、この役割がピッタリなのだ。
陽夏は素早く盾の女の人の横に回り込んだ。
そして、素早く技を放った。
この技はこの前までは少し貯め時間が必要だったのだが、今は威力を落として直ぐに放てるようになったようだ。
斬撃は盾の女の人を斬り裂いた。
俺は皮肉な事に女の人の盾に隠れていたため攻撃を受け無かった。
「やったか!?」
俺がそう言った瞬間、とびきり大きい爆音が鳴り響く。
「くっ!?」
今までで一番の威力に盾の女の人が倒れたと思い込み油断していた俺は思い切り吹っ飛んだ。
俺の体はすぐさま治したが、神経や脳など色んな所が傷付いたからか、体がピリピリして動きにくい。
そうだ、陽夏だ。陽夏は大丈夫なのか!?
俺は周りを見渡すと、陽夏はかろうじて攻撃を避けられたようだ。
俺は陽夏をとりあえず回復させ、自分の体も最大限の力で治していった。
「晴輝! 大丈夫!?」
「すまん、ちょっと今動けなそうだ!」
「しょうがないわね!」
陽夏は俺の肩に手をかける。
「とりあえず退くわよ!」
「ありがとう!」
俺は陽夏の肩を借り、階段付近まで退いた。
「…………あれ?」
盾の女の人がこっちまで追いかけて来ていないかどうか見るために盾の女の人の方向を見ると、そこには異様な光景が広がっていた。
そこには、亀のようなドーム型の物体がそこにあった。
「何あれ?」
「んー、あの盾の女の人…………だと思う。」
ドーム型の物体の柄はあの盾の女の人が持っていた盾の柄と同じ柄だったし、多分あれはあの盾の女の人なのだろう。
本当は今すぐ見に行きたいが、一旦俺の体の回復を待つことにした。
この体では危険すぎるからな。
という訳で、一旦休憩する事にした。
「晴輝、あのたこ焼きの缶詰頂戴!」
「…………いいぞ?」
すごいな、この状況で飯を食えるなんて。
「むぅ、別にいいじゃない。あの技を使うと無性にお腹が減るのよ。エネルギーをいっぱい使うから。」
「あぁ、別にいいぞ、いっぱい食ってくれ。」
俺は缶詰を陽夏に渡した。
陽夏は美味しそうに缶詰を食べていく。
俺は盾の女の人らしい物体を眺める。
あれは本当にどうゆう状況なんだろうな。
ダンゴムシが危険を感じたら丸くなるやつみたいなことなのだろうか。
休んでいるうちに全回復でもされたらまずいなと思っていたが、そんなことにはならず、少し経ったあとでもあの盾の女の人はあの状態のままだった。
そんな事をしているうちに俺は全回復した。
「それじゃあもう一度戦おうと思うんだが…………。どうするよ。」
「うーん、どうする?」
陽夏と俺はその盾をコンコンと叩きながら考える。
幸いな事にこの状態だと攻撃はしてこないようなので、色々とやってみることは出来る。
「けど、この硬さはお手上げよ。」
陽夏は諦めた様子で刀を鞘に戻し、プラプラしてしまっている。
さっきまでは横と後ろが空いていたからいいものの、この状態だとどこから攻撃しても盾によって防がれてしまう。
しかもその盾はものすごく硬くて俺にも陽夏にも壊せないときた。
こいつを放置して上の階に登るという手もあるが、そうなるとどんな弊害が出てくるかも分からないし、このような状態なら出来るだけ倒していきたい。
「そうだ! あなたのスキルの…………あれ、ばく? とかいうスキル使えないの?」
「夢食か…………試す価値はありそうだ。」
俺はそのスキルを試してみる事にした。
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