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9話 魔力中毒

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 俺は陽夏にベットのある部屋に連れて行ってもらい、寝かして貰った。


「それで質問なのだけど、君は前からモンスターを倒したりした事無いわよね。」

「あぁ。と言うか、この前のゴブリンが初めてだ。」

「そうよね。じゃあ、魔力中毒って訳じゃ無さそうね。」

「さっきから気になってるんだが、その、魔力中毒って何なんだ?」


 俺はずっと気になっていた事を聞いてみた。魔力中毒なんて聞いたことも無い言葉だ。

 それが俺がさっきやったことの理由になるのだろうか。


「それを説明するにはまずモンスターのことを詳しく話さなきゃダメね。まずモンスターっていうのはらしいの。魔力が何かっていうのはあまり分かっていないけど、魔力を摂取すると身体能力が向上したり、スキルが獲得出来たりするの。魔力には依存性があって、1度魔力を摂取してしまうと体が魔力を欲して異常な行動をとってしまうの。例えば魔力の塊であるモンスターを直接体内に取り込む為に食べようとしたりね。」

「それがさっきの俺の状態と酷似してるって訳か。」

「そうよ。まぁ、モンスターを食べても魔力は得られないから意味ないんだけどね。魔力はモンスターを倒せば手に入るわ。その事を体に覚えさせればそんな事にはならないのだけど、その過程で結構魔力中毒になる人は多いの。けど、モンスターを倒したことのない人が魔力中毒になるなんて聞いた事ないわ。」


 俺はその話を聞いてひとつの事を考え付いた。

 それは、謎の箱を開けると魔力が手に入るという事だ。

 思えば、魅力スキルを手に入れる前から痩せていた気がするし、調子も良かった。それに、何個か開ける度にスキルが手に入った。これは魔力が手に入っていると言えるだろう。

 という事は今の俺は身体能力も高いのか?

 あまり実感は無い。ゴブリンにも追い付かれていたし、そこまで上がっていなさそうな気もする。

 それは一旦置いておいて俺が魔力中毒になったのは謎の箱を開け続けた事が原因だろう。

 しかもそれによって普通の人よりも大量に魔力を得た為あんなにおかしな事が起こったのだろう。

 だが、それを陽夏に言っても良いのだろうか。謎の箱は俺が考えるに物凄く有能なものだ。

 他の人には悪いが俺はこの箱を独り占めしたい。

 だが、陽夏に話してしまったらそれが他の人に流出してしまうかもしれない。

 何とか誤魔化せないものか…………。


「分からないけど、魔力中毒は治さなきゃよね。私も手伝うから一緒にモンスターを倒しに行かない?」

「いいのか? 頼みたい。」


 うぅ、こんなにいい子の事を騙していると考えると心が痛いな。

 幸いな事に彼女は特に俺に詰め寄ったりはしないみたいなので、変に嘘を着く必要は無さそうだ。


「血を見ると魔力中毒の人は奇行をしやすいからさっきの所のモンスターを倒すってのは出来ないから、これを機にダンジョンに行ってみない?」

「うーん。」


 正直言って行きたくない。

 だって自衛隊の人達が何人も死んでしまってるんだよ? 俺みたいなやつが行ったら瞬殺だよ。瞬殺。


「あ、その顔はビビってるでしょ。大丈夫だよ。そんなに危険な所には連れてかないよ。すぐそこにあるダンジョンは君がこの前会ったゴブリンしか居ないところよ。普通の人が行ったら非常に危険だけど、私もいるし気をつけていけば大丈夫!」

「うーーん。」

「頑張れたら私がご褒美をあげたりあげなかったり…………。」

「よし、行こうか!」

「おぉ、いい返事。」


 陽夏のご褒美だと? あんな事やこんな事出来るかもしれないってことか!? 流石にそこまでは期待しないが、陽夏が何かやってくれるなら俺は何でもやろう!


「えー、そんなにご褒美が欲しいのか。」


 陽夏は少し頬を染め笑った。


「まぁ、ご褒美は考えてあげるからとりあえず行こう!」

「分かった。」


 そうして俺はダンジョンに行く事が決定した。







「ここがダンジョンだよ。」

「ここは…………。」


 俺は驚いてしまった。何故ならそれはこの前窓の外を見た時に見えた物凄く大きなビルだったのだ。

 だが、近くで見るとその異常さを感じ取れた。

 まず、そのビルは最上階が見えないのだ。

 見えないほど高いとかじゃないくて、最上階が無いように見える。何処まで見ても同じビルなのだ。


「あはは、びっくりしているようだね。今更こんな顔見れるなんて思って無かったよ。じゃあ入ろうか。」

「わ、分かった。」


 俺はダンジョンの異常さに完全に萎縮してしまっていた。

 そんな俺を笑いながら陽夏はどんどん進んで行くので俺もビビりながらダンジョンの中へと入っていくのであった。



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