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番外編

現パロ第二弾

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 私の名前は脳乱度のうらんど朱里亜じゅりあ。同い年の妹(腹違いの妹‥)をこよなく愛する16歳、高校1年生。

 私の自慢の妹の愛里衣ありいは今日が誕生日なの‥。こんこんと降り積もる雪を見上げながらの誕生日‥。愛里衣は今日が自分の誕生日だって、たぶん忘れてるけどね。

 お父様は大企業の社長をしていて非常に忙しく、お母様は韓流ドラマとSNSに命をかけていて部屋から滅多に出てこない。たまに突然出てきたと思ったら大きなキャリーケースをお手伝いさんに持たせて、颯爽と海外旅行に出掛けてしまう。
 お兄様は社会に出ていて家にはたまにしか帰って来ないから、私は愛里衣ととても長い時間を共にしている。あ、お手伝いさんの酢雨斬すうざんさんや裸好裸らいら杏奈あんなとも、共に時間を過ごしているんだけど。

 今日はたまたま週末で、夜には家族も集まれる。みんなで愛里衣のお誕生日をお祝いするんだ。楽しみだなぁ。

 突然リビングの扉が勢いよく開いてそのまま壁をバン!と鳴らした。私は思わず肩を縮ませて、ゆっくり扉の方を見た。どうやら愛里衣が鼻息荒めにリビングに入ってきたみたい。一体どうしたんだろう‥。
 私が首を傾げると、愛里衣は苛立ちを隠せないままに息を吐いた。パッチリと大きくてまんまるな瞳は少しだけつり目。まるで猫みたい。

「お姉様!!!」

 あれ‥?あ、愛里衣‥私に怒ってたの‥?なんでだろう‥?

「‥‥愛里衣‥?ど、どうしたの‥?」

「どうしたもこうしたもありませんわ!!!なんですの!!あの馬鹿みたいに大きな包み紙は!!どなたからのものですの?!赤い薔薇の花束に添えられたメッセージカードには“僕の聖母、朱里亜さんへ”なんていう気色の悪い一言が書いてありましたけども!!!!」

 あ‥。私が愛里衣に用意したプレゼント、あまりにも大きすぎて部屋の扉に入らなくて、とりあえず大広間に置いていたんだよね‥。
 そのプレゼントの横に待丁明日まてぃあす様からもらった花束を置いたままにしてたの忘れてた‥。
 待丁明日様は私が道を歩いていた時に、突然ヘリコプターが近づいて来て、ヘリコプターから吊られた梯子に誰かが掴まっているなぁと思っていたら、「君は運命の人だぁ!」って叫んできたの。それが約1ヶ月前のこと。

 あまりにも突然のことだったし、たぶん愛里衣にその出会いを伝えたら「不審者だわ!!」って騒ぎになると思うから、待丁明日様のことを愛里衣にはまだ伝えられていなかったの。
 
 あ、でも‥。愛里衣は何故か私と烈屑れっくす先輩が恋仲だと勘違いをしているみたいだから、待丁明日様のことを伝えたらその勘違いは解消するかな‥?わぁ、私、天才‥‥!!

「あ、あのね、愛里衣。その大きなプレゼントは一旦置いといて、その花束をくれた人はね、待丁明日様って人なの」

「待丁明日?!?!?!」

 あれ、愛里衣が目をまんまるにしてる‥知ってる人なのかな?

「待丁明日様のこと、知ってるの?」

「あ、当たり前ですわ‥!!世界的に有名な石油王の子孫で、本人自身も若くして大企業の副社長に上り詰めたっていうとんでもない男ですのよ!!」

「へ、へぇ‥」

 すごい人だったんだぁ‥知らなかった。

「‥‥‥‥え、まさか???え、?その待丁明日様とやらが、その気色の悪い花束を?????え、そもそもどんな風に知り合ったんですの?お父様との繋がりもないでしょうし‥」

「あ、あのね、信じられないかもしれないけどね、私、この間までウォーキングしてたでしょ?お正月太りしちゃったから‥。いつも通り土手沿いをウォーキングしてたらね、ヘリコプターが近づいてきて」

「‥ヘリコプター?」

「う、うん。そのヘリコプターの梯子に待丁明日様が掴まってて」

「‥‥」

「君は運命の人だぁ!って‥」

「‥‥‥‥なんてことですの。ツッコミどころしかありませんわ」

「なかなか珍しい出会いだから、愛里衣にどう伝えればいいのか分からなくて‥」

「‥‥そうですわね、まずは警察に通報をして‥我が家専属弁護士を呼んで‥‥‥あ!!そうですわ!!烈屑先輩は?!お姉様には烈屑先輩がいましたわね!!烈屑先輩にはご相談はされてるんですわよね?!?!」

「してないよ‥」

「何故?!?!烈屑先輩のおうちは日本屈指の法律事務所のオーナーのはずですけど?!?!」

「だ、だって、私、そもそも烈屑先輩とそういう関係じゃないし、私は待丁明日様と仲良くなりたいもん‥‥」

「またそんなことを言って!二人の様子を見ればただのお友達だとは到底思えませんけど!!」

「‥‥いつも愛里衣のことを話してるだけだもん‥‥」

「え?なんですって??」

 愛里衣の剣幕に、私は思わず声のボリュームが下がっていた。どうやらさっきの一言は聞こえなかったみたい。よかった。烈屑先輩は愛里衣のことを私にたくさん質問してくるんだけど、それは愛里衣には秘密って言われていたから。

「と、とにかく!私がいいなぁって思ってるのは、烈屑先輩じゃなくて待丁明日様なの!」

 なんとか愛里衣の勢いに飲み込まれないように、大声を出すことができた。私の主張‥伝わったかな?

「‥‥‥はぁ、もういいですわ。それなら私が動きます!!」

「‥え?」

 愛里衣は怒った顔のままスマホを操作していた。そしてスマホを耳に当てている。もしかしてもしかすると電話をするのかな。‥警察?弁護士?それとも烈屑先輩?

「もしもし!!!私ですけども!!」

 なんて高圧的なんだろう‥私ですけども!!ってことは、たぶん警察ではないよね。弁護士もそんなに仲良いわけじゃないだろうから、やっぱり相手は烈屑先輩かなぁ‥。

「自分の恋人がヘリコプターで現れた変人にストーキングされているっていうのに、何をウカウカしているんですの?!」

 あー、やっぱり烈屑先輩か。それにしても、自分の恋人って‥‥。違うって言ってるのに‥‥。

「え?恋人なんていない??またそんな見え透いた嘘を言って。お姉様のことを言っているんですの!!お姉様はポーッとしているのに無駄に可愛いからすぐに虫が寄ってくるんです。いつもいつもその害虫を駆除する私の苦労を少しは理解して頂けないかしら?!それは貴方の役割でしょう?!」

 え?いま、可愛いって言ってくれた‥‥?愛里衣‥好き。愛里衣の方が可愛いよ。とっても。

「なっ!!なんで貴方が怒ってるんですの?!逆ギレですわ!!!え???実は我が家の目の前にいる?!何故ですの?!」


 愛里衣が目を丸くして、頬を一瞬で赤くしていた。会えるかもと思って嬉しくなったのかな。愛里衣は絶対認めようとしないけど、烈屑先輩のこと、実は好きだもんね。

 愛里衣がせかせかと玄関に向かう。私もそのあとをそっと追う。にやにやした口元を隠しながら、酢雨斬さんもこっそり陰から私たちを見守っている。

 愛里衣が玄関の戸を開けると、すごくムッとした烈屑先輩がいた。

「‥‥‥だから、何で怒ってるんですの?怒りたいのは私ですわ」

 さっきまでの勢いが嘘のよう。愛里衣は口を窄ませて、少しいじけたように烈屑先輩を睨んでる。可愛い。

「何回も言ってるよね。俺と朱里愛さんはそういう仲じゃないって」

「‥‥何故認めないのか知りませんけど、いつもお姉様に笑いかけているじゃありませんか。お姉様の前でしかそんな顔してませんもの」

「‥‥‥はぁ。‥‥‥いっつも愛里衣の話をしてんの!!朱里愛さんと!!笑った顔が可愛いとか、今日の朝ごはんは愛里衣が何を作ってくれたのかとか、そんなことを聞いてんの!!」

「‥‥は?」

「こんなこと本人に聞いたら、そうやってポカンとされるだろ」

「‥‥え、いや、何故そんな会話を?‥え?」

 愛里衣が本気で首を傾げてる。可愛い。

「愛里衣が好きだからだよ!!」

「‥‥え?」

 烈屑先輩は愛里衣にプレゼントを突きつけた。小さな紙袋。中には何が入ってるんだろう。愛里衣は信じられないようで目をパチパチさせている。

「お誕生日おめでとう!!じゃあまた!!!」

 烈屑先輩はまだ少しムッとしたまま、でも少し恥ずかしそうにそう言った。愛里衣が紙袋を受け取ると、烈屑先輩は踵を返して離れていく。

「‥‥‥お姉様、本当にそんな会話だったんですの‥?」

 信じられない、といった様子の弱々しい声。

「そうだよ。秘密にしてって言われてて言えなかったけど、烈屑先輩はずっと愛里衣を好きだったよ」

「‥‥」

 愛里衣は烈屑先輩を追いかける為に玄関を出て行った。


 良い誕生日になってよかったね、愛里衣。
私が用意した大きなプレゼントはみんなの想像にお任せするね。まぁ、愛里衣は白い目をしてたけどね。‥なんでかな?

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