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その言葉の裏にある想いは

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 私が呪いで眠った件で、レックス様がマティアス殿下に消費者制度の見直しを要請していたそうです。あれからひと月ほど経ったでしょうか。‥な、なぜレックス様がそんなことをしてくれたのでしょう‥なんて野暮なことはもう言えませんけども‥!!

 デリック男爵とクラリッサ嬢は、侯爵家令嬢を危険に晒したとして今も牢屋に入っているそうです。
 本日はその2人の代わりにデリック男爵の使いの方がノーランド家にやってきました。

 消費者制度が正式に見直されるまでには時間がかかると思いますが、デリック男爵が今回の件に関して誠意を込めて謝罪したいということで‥クラリッサ嬢がジュリアに売りつけた商品は全て返品返金を受け付けると仰ってくださいました。

 今日は使用人の方に商品を返却し、返金していただく日なのです。開封済みのものもありますが、それも応じてくださるとのこと。返金して手に入るお金はジュリアに返すつもりですし、ジュリアが如何に無駄遣いをしていたのか自覚してもらう為にもジュリアに同席させました。
 ジュリア‥呪いのヘアブラシのことで少しは反省してくれればいいのだけど‥。クラリッサ嬢ではなくまともな商人から購入するのであれば良い買い物もできるかもしれないけど、ジュリアのことだからまたとんでもない物を買ってしまうかもしれないわ。まぁこの1ヶ月、特に買い物もしていないみたいだけど‥。

「‥わぁ、こんなに‥‥」

 返金してもらって手に入ったお金を手に、ジュリアが驚きの声をあげています。

「‥‥それだけ無駄に使っていたということですわ!!」

 ふんっと横目でジュリアを見ると、ジュリアは小さく頷いていました。いつもよりも真剣な表情をしている気がするけど‥一体なにがあったのかしら。

「‥本当にその通りだと思う。‥‥アリー、私ね、上辺の情報だけではもう買わないって決めたの」

「‥‥‥な」

 扇子を勢いよく開いて口元を隠しました。
まさか‥今の言葉‥‥ジュリアの口から出たんですの?え、細胞の一つ一つにぽわぽわが詰まっているジュリアが‥‥?

「‥アリーにね、幸せを感じてほしかったの。だから幸せになれる、幸せを感じられるっていう商品をね、すごく買ってたの」

「‥‥か、買ってましたわね。大量に‥」

「‥‥でもね、そんなうまい話ないんだよね。私はそれに気付けなかった。沢山お金を出せば、良いものが買えると信じていたし‥」

 ジュリアはポンコツでしかありませんでしたけど‥。でもジュリアはどこまでも純粋で、どこまでも人を疑いませんでしたわ。それが彼女の一番の長所で、一番の短所。

「‥‥呪いのヘアブラシで、考えを改めなさったのですか?」

 私がそう尋ねると、ジュリアはほんの少し唇を緩ませながら頷きました。髪色と同じ甘栗色の長い睫毛が、ジュリアの大きな瞳を隠しています。

「‥‥アリーが目覚めなかったあの時はね、どうして‥何で‥ってそればっかりだったの。きっと、私が買ったのは悪いものだったんだって‥それは気付いたかもしれないけど‥‥でも、レックス様が教えてくれたの」

「‥‥‥」

 急に飛び出してきたレックス様という台詞に私は唇を結びました。‥‥私が寝ている間のことはざっくりとだけ聞いていました。私が一番幸せを感じた物を皆で探したのだとか。‥それがジュリアからの手紙だったとは、自分でも驚きですわ。あんな下手くそな字の、ぼろぼろの手紙なんて‥‥!え?なんでわざわざパンドラの箱の底に貼っていたかって??
 そんなの、視界に入らないようにしたかっただけに決まってるじゃない!!す、捨てるのも、ほら、その、紙の無駄遣いですし。

 兎にも角にも、果たしてレックス様が何を喋ったと言うのでしょうか。

「‥気になる?」

 ジュリアがエヘッと笑っています。私はヘラァっと緩みに緩んだジュリアの顔にアイアンクローをかましたくなりましたが必死に堪えました。

「‥‥気になりません。どうでもいいですわ!」

「‥‥あのね、アリーの幸せを思うなら、その美味しい話にアリーにとっての不利益がないか考えなさいって言われたの」

「ど、どうでもいいと言いましたわ!!!」

 何なんですのこの姉は!!人の話を聞く気がないじゃないの!!
それなのにレックス様の言葉は真剣に受け止めているみたいね‥‥ふん。ジュリアの買い物の基準が、何故私になっているのよ。そして‥‥レ、レックス様は、どうしてジュリアにそんなことを言ったのかしら。‥‥野暮かもしれませんけど、信じられないのです。

 私はレックス様と2人きりになると頭が破裂してしまいます。ですが、他の方から聞くレックス様の話は、まるで私を本当に想ってくれているような、そんな気がしてしまうのです。

 好きとか可愛いとか言われましたけど‥‥それも簡単に言われましたけど、でも、そんな簡単な言葉の裏に、レックス様の想いも感じてしまう気がして、私は気が気ではなくなってしまうのです。
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