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二章 宝物捜索 編
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しおりを挟む悪名高い海賊団
漆黒の死神団の
船長であるクラウスの召喚獣となって、早数時間
俺はこの主がパートナーの中では、歴代一位って位に忙しい立場の人物なんじゃないかと思い始めた
「 キャプテン、進路なんですが…このまま順調に航海を続ければ、後六刻後にはシーヴァル•ラ ヴィルに辿り着くかと 」
「 なら、その様に舵を切れ 」
「 アイアイキャプテン 」
この海賊船の航海士である男…と言うか、黒髪の青年である獣人は一見スラッとした細身に見えるが、
耳を見ると像っぽいんだよなぁ
像って空気を感じるのが敏感だと、人間だった頃にアニマルを特集するTVで観たことあると、遠い記憶の中でフット思った
『( なら、航海士として適任だな… )』
クララの影の中で、彼等の会話やら行き交う人を目で追いながら見ていく
「 キャプテン!先程の戦闘で樽に入ってた酒が溢れて… 」
「 無いなら、我慢しろと伝えておけ 」
「 キャプテン!修理費の見積もりが出来て 」
「 嗚呼、いらねぇ宝を売って金にしろ 」
「 キャプテン!食糧の確保なのですが… 」
「 六刻後には新しい港に着く。それ迄、蒸した芋でも食って腹の足しにしてろ 」
『( おえ……… )』
次から次へと仕事を持ってくるクルー達に、見るからに慕われているクララは的確に答えていくが、
そういった事が昔から嫌いな俺にとって、聞いてるだけで吐き気と頭痛がしてくる
『( 海賊ってこんなに忙しいの? )』
見た目は古びた服を着た連中で、盗賊にも思える外見なのに、やってる事は陸で働いてる奴等と何ら変わりないじゃないか
特にクララはまるで、騎士団長や司令官のような立場
いや、海賊団のキャプテンなのだから強ち間違ってはないだろうが…
俺の記憶にあった、酒を呑んで遊んでるだけの海賊とは程遠いな
「 はぁ…… 」
『( やっと、静かになった…? )』
気を張ってたように見えるクララが溜め息を吐き、肩の力を抜いたのは日付が変わった後の深夜だった
それ迄、船長室である此処に何度も出入りしていた為に、彼が休める時間はなかった
『( ちゃんと食って寝ろと言うべきだろうか… )』
ワインのコルクを開け、グラスに注ぎながら書類へと視線を落としてるクララに、これ以上仕事をするなと言いたいが、また睨まれるのがオチだと思うから下手に声を掛けれない
必要な時だけ呼ばれる
それが本来の召喚獣としての役割だろうが、
なんとなく胸の辺りが痛いのはなんだろうか…
『( 俺はこのままでいいのか分からないな…でも、一つだけ確かなのは…。クララの迷惑になるような事はしたくない… )』
忙しい主を、これ以上気を遣わせたりなんかしたら、召喚獣としての立場じゃなく、
只の手の掛かるペットになってしまうからな!
それは避けたい為に、俺なりに頑張ることにする
役に立てるのは召喚獣として、嬉しいからな!
『( よし、そうと決まれば見張りでも交代してやろうかな! )』
クララが座り直し、一人でゆっくり仕事をする様子を見てからその場を離れ、甲板の方へと移動した
『 相変わらず…ボロボロだな 』
召喚獣を出さなければ行けない程に、攻撃をされ続けた船は、御世辞にも綺麗だとは言えない程に争いの傷が残っていた
此れで、次の港まで行こうとしてたのだから、俺が氷で覆う事をしなければ海の藻屑となってたじゃないか?って思うぐらいだ
『 あ、さっきのツーブロ 』
「 んぁ? 」
甲板に姿を見せ、歩いていれば手摺り凭れている黒髪のツーブロックをした海賊を見かけ、近付けば彼は視線を海から俺の方へと落とした
「 どうしたペット、キャプテンの元に居たんじゃねぇのかー? 」
『 アルトだ。そう名を貰った 』
「 へぇ?んじゃ、アルト。俺は、ヤーゴフ。ヤーゴでいいぜ 」
『 分かった。そう呼ぶ 』
クララもそうだが、海賊は名字を名乗らないな
もしかすれば、名字は無いのかもしれないが…
まぁ、それは追々分かるだろうと思い、
ツーブロックの彼の名前が゙ヤーゴ゙と言う名だと知って、ちょっとだけ嬉しくなった
此奴とは仲良く慣れそうな気がするからな!
「 んで、もう一回聞くけど… 」
『 見張りを交代してやる! 』
「 は? 」
『 疲れてるだろ?俺に任せてくれ! 』
あんなモンスターに負けるような人間より、ずっと俺の方が見張りに向いてると思って尾を振りながら彼を見上げれば、目をキョトンとさせた後に盛大に溜息を吐かれた
「 はぁー…んなこと知ったら、俺が鮫の餌になるじゃん 」
『 え、なんで?一晩起きてる事ぐらい平気… 』
「 いや、そういう問題じゃ無くて。キャプテンって自分の物に対しての… 」
ヤーゴが言い掛けた言葉と共に彼の視線が俺の後ろへと向き、俺もまた足音と気配で気付いた為に振り返れば、
其処には仕事をしながらも休んでたはずのクララの姿があった
「 アルト、テメェなに勝手にほっつき歩いてんだ 」
『 へ?俺は見張りを… 』
「 夜の散歩はこの位にして帰りな?なっ?? 」
『 え?散歩じゃ… 』
散歩じゃないと言いかけたのにヤーゴの無言の圧を見て、俺は見張りをしない方がいいのだろうか?と思い仕方無く身を起こして、クララの元へと戻れば、彼は俺を見下げて睨んだ後に背を向け歩き出した
「 ヤーゴ、朝までに全ての便所掃除をしろ。テメェ一人で 」
「 そ、そんなぁ…あんまりっすよ~ 」
『( 大所帯にあるトイレの掃除…大変そうだ… )』
なんで彼にそう命令を出されたか分からないが、
俺は見張りが出来ないことに残念に思いながら船長室へと戻った
「 テメェ…誰のペットか、理解してんのか? 」
『 へ? 』
もしかして…
今回の主は、めちゃめちゃ難有りかもしれない
血の気が引くような感覚に自然と耳は後ろに下がり、尾は腹の方へと丸まってしまう
クララ…その手に持ったの、鞭じゃない?
俺には、そんな趣味ないからな!?
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