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二章 宝物捜索 編

6話 決着をつけるらしい

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テールとシエルの居るこの国は、街の色んな場所に花が咲き誇る数回目の春が訪れた

冬は、俺が雪だるま作ったり氷の彫刻で遊びまくって、クリスマスにはプレゼント貰ったりと、余りこれといって代わり映えの無い冬だったからこそ、今年の春からの話をしよう

因みに、今年と言ってるが子供達の成長は早いもので、テールは十八歳、シエルは十六歳になっていた

そう、俺が此所に来て二度目の白夜の日が夏の終わり頃に訪れる
それは十八歳になったテールの挑戦だ
彼はソレイユを召喚してからずっと白夜の日の為に鍛錬を日々行っていた

十八歳未満はどんなに強くても、参加できないのは怪我とかするからだろう
下手したら命を落とすなんて聞く程だが、四年前の勇者はレヴァン叔父さんだった為に詰まらないほどに余裕で勝っていた
彼は二回連続の勇者であり、今年も参加するかは分からないが、
まだ今年は姿を見せてはないな

この国の者なら参加資格が有ると言うが、あの人の飛び入り参加は禁止して欲しいものだ

白銀の竜ヴァイスシルヴァーと戦えるのはその前に行われるトーナメントで勝つ必要があって
その優勝者が戦う資格を得るのだが、前回は決勝戦後にレヴァンさんがやって来て、優勝者に勝負を挑んで、優勝者が負けたから結果その年もってことだ

ブーイングはあったけど、ドラゴンとの対戦で勝ってたから、終わり良ければってことでいいのだろう

シャルルー国と言うぐらいには温厚な人達が多いもんだな
まだ幼さが残るシエルは格好いいなんて言ってたが、俺とソレイユは呆れていたのを思い出すと懐かしくも感じる

「 花見って面白いなー! 」

「 うん、花を見て御弁当広げて食べるだけって 」

今日は、城の裏にある薄桃色の花を咲かせた大きな木の下に来ていた
桜のように五枚の花弁を付けた花のために、桜!だなんて喜んでたが
此は" ブリスローズ "と言う名前らしく幸せの桃色の花で桜とは違う
花弁の形を含めて似てるんだがな……

国の平和を象徴するらしく、樹齢八百年を越えてると聞いたが
聖獣になった俺にとって、八百年って気にならないほど短いものだ
だからこそ、ソレイユも木なんて興味なかったらしいが、今年はどうしても花見をしたくて誘ったんだ

理由は簡単、日本の春の風物詩をしたくなったから

花見ってなに?って聞かれて簡単に説明したら、二人はシェフから御弁当を作って貰いこの場に来た

「 外で食べる弁当は美味しいけどな! 」

「 うんうん、なんだかいつもと違う気がするぐらい 」

彼等は聖獣召喚する前までは、護衛がいたらしいのだが、俺達の実力を知って護衛はいなくなった
相変わらず獣人のセバスチャンは騒がしいが、それも彼等が成長して静かになっている

護衛が居ないからこそ、のびのびと生活できるのは城の中に住んでいても、国民の子供達と似てる
まぁ、同い年の友達が居ないって点を除けば

「 ……花見は、故郷でやったのか? 」

『 ん?そうそう…花見は春の風物詩だよ 』

楽しげに話してる兄弟から少し離れ、ソレイユと並んで座り、俺はずっと花を見ていれば彼は問い掛けてきた
未成年に見えるから!なんて文句言ったら大人の姿を得て、酒を片手に飲んでいた
味覚がないから匂いと雰囲気なんだろうが、聖獣だしな、俺を含めてザルなんだよ
アルコールは毒として認識されて分解されて水分へと変わるみたいだ 

「 風物詩か……御前の故郷をよく知らねぇから、不思議な感覚だ 」

『 花を愛でる習慣? 』

「 まぁ、それもが……色々な 」

お供え物みたいに聖獣様!なんて言われて貰う酒を捨てるわけにはいかないし、俺達が貰ったからと、他の者は飲まないしで、結局は飲むことにしたんだ

未成年に見える俺の片手にもワインの香りがする酒が有るのだが、出来れば焼酎とかの方が雰囲気あったのに…

我儘は言えないな、と諦めて飲む気のない酒の入ったワイングラスを持ち
ソレイユの言葉に耳を傾け視線をやる

『 色々? 』

「 前回の召喚の時は早々に帰って、俺は一緒に人間界がいる事がなかったから…なんとなく 」

確かに俺達が一緒にのんびりとした時間を、人間界で過ごしたのは今回が初めてだ

その事もあり、冬は雪だるま作ろう、春は花見がしたい、夏は虫を捕ろう、秋は焚き火をしよう、なんてソレイユからしたら不思議な事なんだろう

彼が前世で人間だった頃はそういった遊びを知らなかったから、俺に教えて貰って全てが初めて体験するらしい

『 でも、きっとさ…… 』

「 ん? 」

『 俺がこの世界の生まれで、成り上がりだったなら……彼等のように花見なんて知らなかったよ 』

「 嗚呼、それもそうか… 」

花見をして喜ぶ兄弟を見てると、俺の知ってる文化をそれとなく教えるのも悪くないと思う

国民とか大勢に教えれば、この世界の流れが変わってしまうかも知れないから身内だけの、楽しみだ

「 ……御前の故郷は綺麗なものを綺麗だと愛でる習慣は、悪くねぇな 」

『 んー、そう? 』

「 嗚呼、御前の横顔を見て酒が飲める 」

『 ……っ!! 』

このイケメン狼!!何をサラッと言ってやがるんだ!
通りで普段なら余所見すんな、とか言うのに今日は自棄に静かだったな!!

恥ずかしくて沸騰するかと思った

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