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二章 宝物捜索 編
09
しおりを挟む今、此処に来て二度目の入浴タイムを経験してる
それも主であるシエルに直々に洗われて超ご機嫌で尻尾を真上に持ち上げてるのだが
目の前で同じくテールに洗われてる、ソレイユは凄く不服そうに耳を下げ目は座っていた
「 ベトベトになるのが悪いんだぞ。だから綺麗にしないと 」
「 別に自分で出来る 」
テールに言われた言葉に顔を背けた彼が何故、こんなに機嫌が悪いのかって理由は
単純に人の姿になれば洗えるものの、今は獣姿で上質できめ細かい泡が身体中を覆って、人の手、それも子供によって洗われてるからだ
勉強を終え、お風呂に入るからって来たら
一緒に入ろう!なんて言い出してこのようになった
『 いいじゃないか、俺は洗われるの好きだぞ!気持ちいいし、獣の特典だな 』
「 ルーナ、気持ちいい?痒いところとかない? 」
『 痒くはないから大丈夫!ありがとう 』
「 ははっ、ルーナ。尻尾振ったら泡が飛ぶだろ 」
泡がいっぱいなんて贅沢な、滅多に経験は出来ないと尻尾を振る俺に、飛び散った泡が顔に当たらないよう横を向くシエルは、俺の身体に触れ、もう一度全身で洗ってくれる
野生の金狼より大きくなったこの身体、子供の両手では足りず全身を使ってわしゃわしゃしてくれるのだが、また其が心地いいと思う
まぁ、シエルからしたら大きな虎とか洗ってる感じだろうがな
「 はっ、身体がでかくなっただけで脳は餓鬼だな 」
『 ……その手には乗らない。あ、分かったぞ 』
「 なんだ? 」
鼻で笑いそっぽを向く彼に、俺はいつもみたいに大人気なく文句を言わないと決め
冷静に判断すれば、彼の不機嫌な理由が分かった気がする
兄弟もまた手を止め、ソレイユへと視線をやれば告げる
『 ヤキモチ妬いてるな? 』
「 なっ!? 」
『 そんなにシエルに洗って貰いたかったのか…… 』
「 えっ?そうなのか?洗うよ? 」
シエルの方が洗い方が上手そうだもんな、やっぱりそうかと納得した俺は、何度か頷いていれば身体に感じる静電気のようなバチバチとした感覚に血の気は引く
『 えっ……違うの? 』
「 御前は……本当、態とかぁ!!! 」
「「『 !!!?? 』」」
外でも無いのに雷鳴が鳴り響いた事に驚き、肩を揺らす
此所は水回りであり、身体には湯がかかって濡れている
こんな時に電気なんて感電すると思うが、ソレイユの不機嫌は治まりそうにない
『 お、落ち着けよ……冗談だって、なっ? 』
「 冗談?御前はいつ、冗談が通じるような柔軟なやつに変わったんだ? 」
『 うぅ…… 』
こっちへと体勢を低くし歩き始めたソレイユの恐ろしさに後ろへと下がり、耳は隠れ尻尾を腹へと巻き肩を竦める
ごく自然に本能的に怯えてる俺は目線を泳がせるも彼には通用しない
「 御前は……! 」
「 はい、お風呂で騒がない 」
「 っ!? 」
ソレイユの動きが止まればそこには、彼の尻尾をぎゅっと掴んだ兄のテールが止めてくれたようだ
ナイスタイミング!と内心喜んだ俺を見ては
ご機嫌ななめな狼さんに睨まれた
「 チッ、わかった…… 」
『( 感電死は免れた )』
ふーと深く息を吐き安心した俺は、シエルに石鹸を綺麗に洗い流されてから、共に四人で広々とした大浴場の湯船へと浸かる
『 もう、溺れないと風呂もいいなぁ~ 』
チビで丸っこい時はお風呂入るにも勇気が必要だったが、今は気にもならない
顎を湯船の外に出し、肩までしっかりと浸かっている俺は温かくてポカポカする感覚を堪能していた
『 なぁ、なんでそんな機嫌悪いんだ? 』
風呂を上がり、身体を乾かして貰った後
いまだに機嫌の悪いソレイユへと問い掛けてみた
兄弟は、部屋に戻った為に俺達がいる此所はセバスチャンに与えられた客室
もちろん、そういった事をするなら……と言われた場所だ
客室にしては広くて大きな白い天蓋カーテン付きのベッドが中央にあり、横には炎で付けるライトすらある
他には、真っ白なベッドに合わせたクローゼットやタンスなどだが俺達は使わない
流石、城の客室とばかりに置かれている花瓶すら高価な感じがするほど
天井には灯りの付いてないシャンデリア、これもまた必要ないだろうと、返事をする気がない彼の言葉を待ちつつ辺りを見る
そんなにお風呂で洗われた事が気に触ったのか、それとも俺だけが楽しそうにしてたのがいけないのか、どちらでも有り得そうだと思う
獣のまま早々にベッドへと上がり、横たわった彼を見て寂しいと思う
『 ……言わなきゃ、分かんないだろ 』
ゆっくりとベッドに飛び乗り、此方に背を向けて目を閉じて寝たフリを決め込む、ソレイユにどうしたら良いのか考えながら
これ以上、機嫌を損ねたく無いために鼻先で首回りの飾り毛へと触れ、耳や頬を舐めて様子を伺えば
彼はやっと、目を開ける事無く告げた
「 たまには…気付いて欲しい時もある…… 」
それはまるで、喧嘩した後の彼女みたいな言葉だと思った
いや、彼は彼氏なんだから強ち間違いでは無いのだが、何となくそんな気がすると、背を向け横たわる
背中に当たる温もりはいつもより冷える気がする
『 おやすみ…… 』
「 えっ、寝るのか? 」
『 だって、考えても分かんないからな…… 』
寧ろなんで驚いてるんだとばかりに鼻を鳴らせばベッドのスプリング音は鳴り、身体は僅かに沈む
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