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二章 宝物捜索 編
1話 交わった魔力らしい
しおりを挟む大切な物を取られ、そう簡単に心の傷は塞がる訳がない
それでもシロは俺が話すまで待ってくれてるように、起きれば優しく舐めてはすり寄ってくれる
その優しさに今はずっと甘えていた
大切な人との宝物、命を司る神様である" ライフ "から貰った子である、新しい聖獣を生み出すための魂はもう、腹の中にはなく
腹下に触れても魔力が溜まる感覚は、今はもう普段と変わりようがない程に感じない
それが余りにも寂しくて、心臓がぎゅっと掴まれたように痛みが走る
俺はこんなにも孕むことを望むような奴だったか、いや……違うな
最愛の人と子供だからこそ、欲しかったのだろう
いつか必ず奪い返すと心に決め、べそべそと泣いていた顔を上げ久々に外へと出た
『 相変わらず、外は散乱してる 』
「 ……態とじゃねぇ 」
人型を得るのは簡単だが、少年だし小さいから変わらず狼の姿で居ることの方が多く
シロもまた、俺と同じく姿を合わせてくれる
洞窟の上にある岩場へと立ち、フリーレンから貰ったフード付きのマントを靡かせながら辺りへと見渡せば、空は晴れてるにしろ大地は見るも無惨なまま
これをやった本人はプイッとそっぽを向けて他人事のようにシカトすれば
俺がジトッと視線を向けてる事に気付き、溜め息を吐き告げた
「 たっく、分かった。ライフ、片付けてくれよ 」
「 最近、扱いが酷くはないかい? 」
『 ライフ! 』
シロの言葉と共に現れたライフに、尾を揺らす俺に、彼は此方を見ては笑みを向ける
「 やぁ、氷牙。元気になったかい? 」
『 少し!なぁ…… 』
「 おっと、話の前に片付けるよ 」
ストップとばかりに口元へと指を当てたライフに、直ぐに言葉を閉じれば
彼は身体を大地の方へと向け両手を前に出し呟く
「 お片付けのスタートだ 」
『 !!? 』
地鳴りが響き、空が割れたように青空が歪み
大きな色白の皮膚が出てくれば、その片手は大地へと手を置き横へと滑らせた
『 えぇぇぇえ…… 』
マジでそんなのありかよって思うぐらいに、目の前の光景に唖然になる
「 おっと、ちょっと避けててねー 」
目の前にいるライフの手首にある飾りと同じようなものを付けた、その手は森の中にいた聖獣を摘まんでは他の場所へと移動させ
地面がまるで大きなシートのように、べりっと剥がし、新しいシートは貼られた
いや、シート言うか大地が全く別の物へと変わったんだが
顎が外れたんじゃ無いかって位に驚いてる俺に、ライフは平然と答えた
「 あの、手は俺の本体みたいなもの。ついでに北やら南やら全て変えての、一からにしようか 」
「 随分と大掃除だな 」
「 たまにはいいだろ?数百年に一度の大掃除だ 」
大掃除って言うか、玩具箱をひっくり返した様に世界が歪み
グルングルンと視界が廻ることに気持ち悪く思えてきた
上も下も、左も右も、全てが変わったところで吐き気より目が回った俺はぺたりと顎を地面に付け倒れれば、神の庭は全くの別物になる
もっと、洞窟を部屋に変えたように、キラッとピカッと光って一瞬で片付けるのかと思ったら物理的
とても豪快に片付ける、と言うより" 模様替え "のレベルだからこそ
此所が" 箱庭 "と呼ばれる由縁が分かった気がする
「 半分は前とかわらず自然で、残りは人間っぽく街やら地形を作った。人形を置いておくから買い物したりデートコースにどうぞ 」
街と言うより祭りに来る、派手な屋台のようなものが建ち並び
早速、羽根の生えた聖獣達が向かってるのが見える
「 なんのつもりだ、こんな人間っぽいものなんて…… 」
「 只の暇潰し。それと大気に影響が出るランクの者にはペナルティーをあげる 」
「 ペナルティー? 」
この神様にとって、この世界は自分が造ってる人形の住む家と同じ
気に入らなければ模様替えして、そして置いてる人形達に印を付けるのと同じ様に
シロへと指をさし、その耳へとピアスを付けた
「 これは魔力を抑えるもの。安心して、人間界でいるときは必要に応じて解除されるから……で、氷牙もこれを 」
シロとは反対の耳へとついたピアスに気づけば痛みはなく、飾りが付いた程度にも思えた
首を捻る俺に彼は頭に触れ撫でてくる
「 同じく魔力を抑えるもの……大切な主が口輪を与えてだろ?あれと効果は同じだ。まぁ、こっちの方が頑丈だがの! 」
『 そう、ありがとう…… 』
壊れないと笑ったライフに、神の庭の掃除と模様替えが終わったと同時に本題へと入った
フリーレンから貰った口輪と同じ機能を持つピアスの飾りは、其々の瞳と同じ色をしている
俺のは深いラピスラズリ色、そしてシロのは琥珀色
「 それで、聞きたいことはなんだ? 」
『 あ、俺達の子は……また返して貰えば生まれますか? 』
何故か敬語になるが、其でも希望だけは持ちたかった俺に、ライフは笑ってた表情に笑みを無くした
その顔に目線をさげた俺へと、シロは首元に鼻先を当て頬をすり寄せる
「 あの人の子の実験次第だ。魂はそう簡単に扱えないだろうがな……壊される前に取り戻すとよい 」
『 !!それって、希望があるってこと!? 』
「 だがな、良く聞け。氷牙……あの錬金術師に出逢う事がなければ意味がないのだ。御前は主の命令を忘れるな 」
その言葉は、人間界に召喚された時にその時の主が錬金術師に出逢うような人間ではなければ、勝手な行動はするなってこと
一人で遠くまで探し回ることは、主を離れてはならない聖獣として有り得ない
あくまでも、敵が現れるまで動くなって言葉に理解すれば口角を上げた
『 十分、まだ希望があるならそれを信じるだけだ 』
「 そうだな……御前を狙ってるなら向こうから来るだろうし。俺も人間界に行った時に会った時は調べてみるさ 」
『 ありがとう、シロ 』
「 あぁ……俺達の子を取り返そう 」
ふっと横で笑ったシロと共に、顔を擦り寄せ
首を絡めて尾を振っていればどこか呆れたように溜め息を漏らしたライフはその場から消えた
まだ希望がある、あの魂は人間にはそう簡単に扱えないって分かったなら十分じゃないか
『 シロ、街に行ってみよう! 』
「 そうだな……帰ってきたら、になりそうだが 」
『 えっ、わっ! 』
俺達の足元に同時に発動した魔法陣
それはいつもより光ってるように見え驚けば
彼は頬へと口付けを落とす
「 またな、コウガ。探ってはみる 」
『 おう!俺も調べる 』
反対の頬へと口付けを落とせば、光へと包まれた
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