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一章 聖獣への道のり編

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キマイラ、元人間の時にゲームや本で見たことはあったが 
この世界に来てから実物を見るとは思わなかった

様々な生き物を組み合わせて造り出した、錬金術師の禁忌と言えるものだろう

命を司る神であるライフの意思に背き、自ら新しい命を造り出すこと 
いや、目の前にいるキマイラに" 命 "が有るかは分からないが、牙を剥き出して怒る猿みたいなのや、ライオン、そして大蛇のような三頭の身体は数種類の魔獣が組み合わさってるように見えた

「 落ちぶれた錬金術師が…… 」

「 酷い言い方だなぁ。錬金術は魔法より優れてると証明してるだけじゃないかぁー 」

「 命を玩ぶ者に優れてるとは言えない! 」

「 五月蝿いなぁ……ほら、ボクの可愛い玩具達。ワンコを喰らいな 」

ファルクの怒りを感じるも、俺は何処か間違ってるのか分からない 

科学のために命を犠牲にする世界があるように、錬金術のために犠牲にするのは似てる気がした

少年がやってることは惨いと言われるものだろうか
俺が居た世界も同じ様に動物のミックスを作り出す世界
見た目がいい、可愛いから、そんな理由で作られた動物達の行き先は飼い主や捨てられたりして
保健所へと行き安楽死と呼ばれる、毒ガスによって苦しんで殺されるか
ペットショップで売れ残った奴等は、日本の保健所は引き取らない
その為に" 引き取り屋 "と呼ばれる業者に一匹何万で売り
彼等はケージいっぱいに詰めて餓死をさせて殺してから、川や海付近に捨て去る
その死体は、市役所の職員ではなくそういった死体処理専門の者が行う

ペットは生ゴミとして扱う酷い世界を知ってる俺にはまだ、玩具と笑って武器にしてる方が可愛げがあるように見える……

俺は今、死ぬことの無い盾であり武器の" ペット "なんだ

神様から創り出された…動く玩具だ

『 冷凍剣山れいとうざん! 』

「 グァアァッ!! 」

氷った地面に現れた、氷の剣山によって串刺しになった猿の姿にコウモリの羽根が生えた奴を足止めしていれば、辺りでは逃げる国民の声と、近衛隊達が吹き飛ぶ姿が見える

「 っ!!? 」

「 ガッ!! 」

大蛇でありその身体は鰐の鱗のように硬く、鋭い まるで全身が硬い鎧で出来るような大蛇の尾によって、銀狼は歯も立たず地面へと身体を叩き付け
起き上がろうと唸ってるのを見れば、俺の身体は動いていた

「 ふはっ!戦えるワンコが一頭だけなんて、銀狼を犬に成り下げた国だけある。君達のそいつはもう銀狼じゃない。只の犬だよね!? 」

「 全てを氷らせ、他の者を捕らえよ……氷河牢ひょうがろう 」

言葉に聞く耳持たず、大蛇へと噛みつきその身体に歯が立たないことを知った俺は
振り払われると同時に離れ、地面へと着地すれば残りのキマイラと少年に向け、ファルクは牢を作った

氷の牢では有るが、その頑丈さは御墨付き 
身体をぶつけたり噛み付いても壊れない氷の牢を見れば、ファルクは息を吐き少年へと視線を向けた

「 彼等を犬と言われようが構わないが、街中で暴れられては近衛の名に傷がつく。今なら間に合うよ 」

立ち去れともう一度告げたファルクに、僅かに俯いた少年は肩を揺らし始めた 

「 はははっ。ほーんと。甘いなぁ…… 」

『 ファルク!! 』

「 っ!? 」

少年の動きに気付いた俺は、影移動を使いファルクの身体の前に出れば、現れた白い巨体は俺の背中へとその牙を深々と突き立てた

『 いっ…… 』

「 ロルフ!? 」

「 まだボクの玩具はいるんだよ 」

地面へとボタボタと赤い血痕が落ちていく

例え死なないとは言えど、痛みはある
背中に走る激痛に奥歯を噛み締め、咬んでる者へと視線を向ければ、そのキマイラの目の光は無かった

「 此処まで大きくしてくれた事に、寧ろ感謝してるよ……。キマイラ、そのワンコを喰い殺せ 」

「 ギャウゥ!! 」

『 ガッ!! 』

森で親が見付からないと、ファルクは何度か口にしていた
見たことのない柄だと、何故魔獣であり成長したばかりなのに喋れるのか
そして、その成長速度の速さに頭がついていけてない理由も気付いていた

「 ぱ、ぱ…… 」

「 ロルフ!! 」

振りほどく首に合わせ、身体は浮き地面へと倒れ
飛び散った血と共に氷の鎧は砕け散った
駆け寄るファルクが焦りをみせ、俺の首元へと触れるが動く気はなかった

御前も……玩具として創られてたのか……

『( 可愛がったものを殺すなんて、俺には出来ない…… )』

「 ギャァッ!! 」 

「 ファルクさん!!銀狼、足止めを!! 」

「「 ガウッ!! 」」

俺より体格がデカい虎に、狼犬が勝てるわけ無いだろう
片手を動かすだけで身体に爪痕が入り、吹き飛ぶ銀狼達は唸り声を上げ向かおうとする
けれど、ルークの吠えた威嚇に怯える様子を見れば、俺が動くしか無い……

『 いい子だから……仲間に傷付けんな 』

「 ロルフ、動けるの? 」

『 俺は聖獣だ……どんなにバラバラにされようが、主が死なない限り戦い続ける 』

だから俺に命令してくれ、キマイラを殺せと……

「 分かった……ロルフ、ルークを助けてやろう。呪縛から解くのも役目だ 」

『 ガゥ!( おう!! )』

「 ははっ。聖獣ねぇ……なら" 死なないもの同士 "……身を削りなよ 」

我が子同然と、可愛がった子に牙を向けるなんてな……

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