上 下
83 / 263
一章 聖獣への道のり編

08

しおりを挟む

行為を終え、森から町へと流れる小川で身体を洗ったのだが、フィンレーは水が汚いなど相当文句を言ってた

そりゃ、神の庭にある川やら泉に比べると人間界の水は汚いものがあるだろう
我儘を言うなと告げれば渋々洗った彼と共に、宿に帰り、扉の前へと互いに獣の姿へと戻りおすわりしては扉を見詰める

『 裸だよな? 』

「 普通に考えればな 」

『 ……今日は、此処でねる 』

ルイスの時も起きてくる迄、部屋の外で待っていたのだから今回も同じでいい
扉の横にある壁に身体を当て丸めて寝ようとすれば、フィンレーは気にしなくとも、と呟き
のっそりと歩いて来ればその背中を向け凭れてきた

若干、身体が乗っかってる重みに嫌だと思うが本人は満足気
こんな時は図々しい奴だと改めて思えば諦めもつく、俺も抵抗を見せるように背中へと顎を乗せ目を閉じれば
頬へと感じる舐める感触に、徐々に睡魔は訪れ眠りについていた

夢の中で、神の庭でシロと共にゆっくりと過ごし時に一緒に駆け回っていたりする夢は
人間界より落ち着けることを実感させてくれる

「 ロルフー? 」

『 クァァア~ 』

ぐっすりと眠っていれば聞こえてきたファルクの声に大きく欠伸をし、ぐっと身体を伸ばしたところでフィンレーの姿がないことに気付く
先に起きたのなら起こして欲しかったと、耳を下げていれば彼は二言目を告げる

「 ほら、リリア王女と共にアイラン王の後を追うんだからさ 」

『 追う? 』

俺が寝てる間に随分と話が進んでると思った
既に着替えたらしいファルクは、鞄を持ちマントを被り口元を隠せば軽く走り宿を出た

お金は既にリリアが払ってたのだろう
部屋の鍵を返してから出る彼は、左右を見てから入り口の方に戻る

『 城の方には行かないのか? 』

「 そう、王が急遽、近衛を連れて進軍したから追い掛けるんだ 」

アルトゥーラ連邦に向かってると告げた彼の言葉に、リリアの後を追うって意味を理解した
彼女は既に王の近くにいるのだろ、どんな理由にしろ止める為には
まず両者の間に入ることをしなければ始まらない

説得できるか分からないがやるしかないことに、俺は争いが近いことを本能的に感じ取る

『 それで、追い掛けるってどうやって? 』

「 そりゃーもちろん。俺って盗賊でしょ? 」

質問に質問で返された事に、一瞬頭の上に浮かぶ疑問符が風船のごとくパンっと割れた瞬間に青ざめる

『( いや、盗賊ってそう言うことか!! )』

余り馴染みがない単語に、反応が遅れたが本来盗賊がすることかは盗みだ
近衛であり正義感強いルイスの魂が盗みなんて働くなんてどうかしてる!!と意外に走るのが早い彼を追い掛けながら、止めようとすればファルクはある店の前で立ち止まった

「 やっぱり旅人は来てる 」

『( コカトリス )』

どっかで見覚えのある鳥が繋がれ、数頭がその場にいた
旅人がいる朝っぱらから開いてる酒場であり休息場
その近くには紐を繋げれる場所があるのだが、俺はコカトリスの習性を思い出していた

「 さて、どの子に…… 」

『 コカトリスって卵から世話しないと、背中に乗せてくれなかった気がする 』

「 へっ!?そうなの!? 」

驚いたファルクに逆にこっちが知らなかったことに驚きだ

ルイスが近衛に入ったときに最初に送られたのは、鎧やら武器といった物とコカトリスの卵だった
数ある中で一番好きなのを選び、そして世話をして大きくする
まぁ、三ヶ月其処等で人を乗せれるほどまで大きくなるのだが
そこから忠実に着いてきたり、城に戻る方向を覚えるには一年ぐらいかかる

『 要するに、コカトリスって旅人や近衛にとって銀狼と同じなんだ 』

「 家族同然のものは盗めないや…… 」

銀狼をパートナーにする、ファルクなら分かるだろうと敢えて例えにすれば
彼は壁に手を付き肩を落とすなり落ち込む素振りを見せた
そりゃ移動手段に、魔力を消費しないコカトリスは脚も速く良いだろうが、彼等は乗ったら嫌がり暴れると思う

『 まぁ、乗ってみて無理矢理にでも走らせたら、走りそうだが…… 』

「 元の飼い主に戻る習性を利用して……俺やる! 」

『 頑張ってくれ 』

応援はしてると、軽く頷いた俺にファルクは心に決めたのか
家族同然と思ったコカトリスだが、帰らせればいい、と納得し酒場へと視線を向けてから
人の出入りがないのを見て、コカトリスへと近付いた

「 コァアア!!! 」

「 ギャッ!おちつけって、うわっ!! 」

紐を外すことは出来ても、乗ろうとするなら暴れまわるのは目に見えていた
背中から必死に振り落とそうとするコカトリスに引っ捕まるしか出来ないファルクを見てられず、重い腰を上げ姿を移動させる

『 グアッ!!( 走れ、鳥野郎!! )』

「 ガァッ!? 」

「 わわっ!! 」

俺はいつから、羊飼いにいる犬かと思うが
鳥の足元を咬むフリをすれば、コカトリスは驚いて走り出した

此でいいと追い掛けながら、時より咬むフリをする俺は背後で泥棒!!と叫ぶ旅人の声に笑みは溢れた

『( こういうのもなんか楽しいな!! )』

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...