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一章 聖獣への道のり編
02
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~ シロ視点 ~
「 本当に行くのか? 」
「 行くわ! 」
昨日は丸一日なんとか止めたが、その後は本気のようで
リリアは荷物を纏め、旅人を気取るのかは知らないがマントを羽織り、城から抜けるために自分の部屋から窓の外を見た
「 わっ、たかっ…… 」
「 そりゃ、九メートルはあるだろ 」
王女の部屋は、城にある上の階
建物で言えば四階の床の高さ程から飛び降りようとするなら、それは少女には無理がある
其処を見て諦めて貰うよう、ベッドから動く気のない俺に、リリアは幾分か考えてから俺の方へと視線を向けた
「 私を乗せて、降りることって可能? 」
「 ……やって欲しいと言うならな 」
「 乗せて降ろして欲しいわ 」
「 はぁー、仕方ねぇな 」
結局、俺の力を借りることになるのだろ
監視のある表から出れないのは分かるが、態々家出なんてしなくとも
此処にいりゃ全てが終わる、その後に新しい王として登場してもいいだろうに
いちいち、めんどくさいと部屋に戻ってきたリリアを背中へと乗せた後に窓を飛び出した
「 わぁぁっ!! 」
空を飛べるが、そのまま向かって欲しいと言われたくないから
何事もなく、地面へと着地してから町の方へと走る
城の外にある、塀を軽々とジャンプし飛び越えては、町に出る裏道へと来れば彼女を背から降ろす
「 はー、ドキドキしたわ!こんな楽しいこと初めて! 」
「 そうか、城の出口へと行くぞ 」
「 はいっ!入口はこっちです! 」
「( いや、そこは出口から出ないか? )」
穴が空いてる場所から抜け出たりするのが、家出の気がするんだが
この箱入り娘は入口しか知らない
最初から期待するのは間違いだなと、彼女が隠れてるの分からないまま、こそこそと歩く後ろをついていく
「 私、町を見たの初めてですわ!こんなにも人が多いのですね! 」
「 キョロキョロしてたらぶつかるぞ 」
「 平気ですわ!ちゃんと見てますから 」
見えてるのか?マントで足元と、顔を上げた前しか見えないような気がすると歩いていれば
多くの人込みに混じり、嗅いだことのある匂いに反応する
「( コウガ、いるのか? )」
この町にコウガの匂いが残ってるのか、そう驚いた俺は辺りを見渡し
匂いがする方へと近づけばリリアは細道から明かりを見かけ走った
「 向こう側が入口ですわ! 」
「 だから、急に走るな! 」
こんなじゃじゃ馬娘の世話はもう二度と御免だと思うほどに、走り出した娘は
明かりのある道を出ると同時に、人へとぶつかった
「( 言った傍から……! )」
舌打ちをし、掛け走り後を追えば其処には倒れた少年の姿と、必死に倒れないよう踏ん張ってる姿のコウガが居た
『 っ…… 』
「( コウガ!!? )」
少年が意識を失ったのか、それでも聖獣は起きていられるが
彼等に感じる魔力が少ないことに気付く
コウガの身体が、消え少年の中へと戻ったのを見るもリリアは焦っていた
「 えっと、どうしましょ…… 」
「 人目につく、取り敢えず引っ張れ 」
「 は、はい! 」
大通だと人目がつくと、少年の足元のズボンを咬み、細道へと入れればリリアもまた身体を引き摺って隠した
ふっと、息をつく彼女に俺は人型へと変わる
「 えっ!? 」
「 話は後だ。チッ、人を乗せるのは嫌いだが、仲間の主ならいい…… 」
いいと言うことにしないと食い殺しそうだから、苛立ちを堪え、少年を肩へと乗せればリリアを連れ歩く
「 さっきの、黒いワンコはどこに……? 」
「 彼奴も聖獣だ、狼だがな 」
「 まぁ!他に聖獣を見たのは初めてですわ。それに狼だなんて、フィンレーと同じですね 」
「 ……そうだな 」
俺を普通の狼と同じだと思ってる、リリアはお気楽な奴だ
コウガが知れば驚きそうだからコイツが起きるまでリリアを部屋に近付けないようにしよう
町外れの小さな宿の二階、外が見えやすい窓際の宿を取れば、ベットが二つ置かれた部屋を選んだ
「 まぁ、私。宿も初めてですわ! 」
「 だる…… 」
楽しそうに部屋を見るリリアを他所に、ベッドへと落とすように寝かせた俺は
少年を見ればその赤髪と幼くとも、顔立ちのいい容姿を見て眉は寄る
「( 顔が好きとかいいそうだな…… )」
面食い彼奴なら好きそうな顔に、舌打ちしては
仕方無く額に触れる
「 フィンレー、なにを……くっ、っ……! 」
「 魔力が無いからな、御前のを与えた。コイツには俺のが混ざってるから一気に回復するだろ 」
有り余ってるリリアの魔力なんて、俺を召喚してる時点で膨大なものがある
其を多少、まだ未熟なコイツ等に与えても平気だろうと魔力を渡したが
流石、コウガの召喚師だ
気絶から意識を眠りへと変える程度で、リリアは膝を付き座り込んだ
「 起きろ…… 」
『 ん、んっ……? 』
俺が呼んだことで目を覚ましたコウガは、姿を見せ起き上がる
少年の横に寝転がっていたその姿を見れば安堵する俺はきっと優しげに笑っていたと思う
目を合わせた、コイツもまた嬉しそうに笑ったのだから
『 し…… 』
「 フィンレー、御前は? 」
「 ……ロルフ 」
本名を言えないことに気付いた、コウガ……
いや、今はロルフへと自ら名乗れば
彼もまた言葉を返した
随分と、見た目そのまんまの名前を貰ってるじゃないか
ロルフ、名高いオオカミか……
悪くないな
「 本当に行くのか? 」
「 行くわ! 」
昨日は丸一日なんとか止めたが、その後は本気のようで
リリアは荷物を纏め、旅人を気取るのかは知らないがマントを羽織り、城から抜けるために自分の部屋から窓の外を見た
「 わっ、たかっ…… 」
「 そりゃ、九メートルはあるだろ 」
王女の部屋は、城にある上の階
建物で言えば四階の床の高さ程から飛び降りようとするなら、それは少女には無理がある
其処を見て諦めて貰うよう、ベッドから動く気のない俺に、リリアは幾分か考えてから俺の方へと視線を向けた
「 私を乗せて、降りることって可能? 」
「 ……やって欲しいと言うならな 」
「 乗せて降ろして欲しいわ 」
「 はぁー、仕方ねぇな 」
結局、俺の力を借りることになるのだろ
監視のある表から出れないのは分かるが、態々家出なんてしなくとも
此処にいりゃ全てが終わる、その後に新しい王として登場してもいいだろうに
いちいち、めんどくさいと部屋に戻ってきたリリアを背中へと乗せた後に窓を飛び出した
「 わぁぁっ!! 」
空を飛べるが、そのまま向かって欲しいと言われたくないから
何事もなく、地面へと着地してから町の方へと走る
城の外にある、塀を軽々とジャンプし飛び越えては、町に出る裏道へと来れば彼女を背から降ろす
「 はー、ドキドキしたわ!こんな楽しいこと初めて! 」
「 そうか、城の出口へと行くぞ 」
「 はいっ!入口はこっちです! 」
「( いや、そこは出口から出ないか? )」
穴が空いてる場所から抜け出たりするのが、家出の気がするんだが
この箱入り娘は入口しか知らない
最初から期待するのは間違いだなと、彼女が隠れてるの分からないまま、こそこそと歩く後ろをついていく
「 私、町を見たの初めてですわ!こんなにも人が多いのですね! 」
「 キョロキョロしてたらぶつかるぞ 」
「 平気ですわ!ちゃんと見てますから 」
見えてるのか?マントで足元と、顔を上げた前しか見えないような気がすると歩いていれば
多くの人込みに混じり、嗅いだことのある匂いに反応する
「( コウガ、いるのか? )」
この町にコウガの匂いが残ってるのか、そう驚いた俺は辺りを見渡し
匂いがする方へと近づけばリリアは細道から明かりを見かけ走った
「 向こう側が入口ですわ! 」
「 だから、急に走るな! 」
こんなじゃじゃ馬娘の世話はもう二度と御免だと思うほどに、走り出した娘は
明かりのある道を出ると同時に、人へとぶつかった
「( 言った傍から……! )」
舌打ちをし、掛け走り後を追えば其処には倒れた少年の姿と、必死に倒れないよう踏ん張ってる姿のコウガが居た
『 っ…… 』
「( コウガ!!? )」
少年が意識を失ったのか、それでも聖獣は起きていられるが
彼等に感じる魔力が少ないことに気付く
コウガの身体が、消え少年の中へと戻ったのを見るもリリアは焦っていた
「 えっと、どうしましょ…… 」
「 人目につく、取り敢えず引っ張れ 」
「 は、はい! 」
大通だと人目がつくと、少年の足元のズボンを咬み、細道へと入れればリリアもまた身体を引き摺って隠した
ふっと、息をつく彼女に俺は人型へと変わる
「 えっ!? 」
「 話は後だ。チッ、人を乗せるのは嫌いだが、仲間の主ならいい…… 」
いいと言うことにしないと食い殺しそうだから、苛立ちを堪え、少年を肩へと乗せればリリアを連れ歩く
「 さっきの、黒いワンコはどこに……? 」
「 彼奴も聖獣だ、狼だがな 」
「 まぁ!他に聖獣を見たのは初めてですわ。それに狼だなんて、フィンレーと同じですね 」
「 ……そうだな 」
俺を普通の狼と同じだと思ってる、リリアはお気楽な奴だ
コウガが知れば驚きそうだからコイツが起きるまでリリアを部屋に近付けないようにしよう
町外れの小さな宿の二階、外が見えやすい窓際の宿を取れば、ベットが二つ置かれた部屋を選んだ
「 まぁ、私。宿も初めてですわ! 」
「 だる…… 」
楽しそうに部屋を見るリリアを他所に、ベッドへと落とすように寝かせた俺は
少年を見ればその赤髪と幼くとも、顔立ちのいい容姿を見て眉は寄る
「( 顔が好きとかいいそうだな…… )」
面食い彼奴なら好きそうな顔に、舌打ちしては
仕方無く額に触れる
「 フィンレー、なにを……くっ、っ……! 」
「 魔力が無いからな、御前のを与えた。コイツには俺のが混ざってるから一気に回復するだろ 」
有り余ってるリリアの魔力なんて、俺を召喚してる時点で膨大なものがある
其を多少、まだ未熟なコイツ等に与えても平気だろうと魔力を渡したが
流石、コウガの召喚師だ
気絶から意識を眠りへと変える程度で、リリアは膝を付き座り込んだ
「 起きろ…… 」
『 ん、んっ……? 』
俺が呼んだことで目を覚ましたコウガは、姿を見せ起き上がる
少年の横に寝転がっていたその姿を見れば安堵する俺はきっと優しげに笑っていたと思う
目を合わせた、コイツもまた嬉しそうに笑ったのだから
『 し…… 』
「 フィンレー、御前は? 」
「 ……ロルフ 」
本名を言えないことに気付いた、コウガ……
いや、今はロルフへと自ら名乗れば
彼もまた言葉を返した
随分と、見た目そのまんまの名前を貰ってるじゃないか
ロルフ、名高いオオカミか……
悪くないな
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