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一章 聖獣への道のり編

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俺が行った時には馬車は無く
数人の近衛が残ってシルバーウルフの足止めをしてるように見えた
彼等の乗っていたコカトリスは脚を噛まれて動けないのか、倒れている

まだ息はあるが、シルバーウルフは怪我をしてるものもいる
そして、何より驚いたのが俺より一回り以上は体格がデカイこと

人の胸元が顔じゃ無いかって位の大きさに、初めてみる魔物に自然と耳と尾が下がる

『( こんなのと、戦うのか…… )』

「 リアン!! 」

『 っ、アンドリュー!ルイスはどこだ!? 』 

残ってる近衛の中に居た隊長の姿に、彼は向かってきた銀狼を切り裂いてから
俺の名を呼んだ、高くジャンプすることは出来るために、後ろへと下がったアンドリューの前へと立ち銀狼へと唸りながら問い掛ける

「 先に走らせた!御前、それどうしたんだ!? 」

『 ルイスに頼まれた生存者だ。こんな餓鬼を助けるぐらいなら、彼奴の元に行くんだが 』

「 馬鹿言うな、ルイスが助けろと言ったなら御前も其を貫け 」

赤子を気にしていたら仕方無いと、目線を子供に向ければ咥えていた布を振り赤子ごと、アンドリューへと投げた

「 おまっ!? 」

『 なら人間は御前に任せた。少しは足止めする。ルイスに届けてくれ 』

戦わなければ、彼等が死ぬ……
ルイスの師匠であり、俺に剣を教えてくれたアンドリューを出来るだけ離させなくては……

弱音など聖獣に吐けはしない!

「 つ、分かった。御前等!動ける者は散らばれ! 」

「「 はっ、分かりました!! 」」

アンドリューは布を掴み自らの腹へと赤子を抱くように、紐をくくりつければ自身のコカトリスを呼ぶ口笛を吹けば走り出した

「 グァッ!! 」

『 グガッ!!! 』

俺ではなくアンドリューへと向かう銀狼へと飛び掛かり、その首へと噛み付けば振りほどかれる前に、骨に牙を突き刺す

「 クソが!! 」

「 我が同族を!喰い殺す!! 」

『 はっ、来い。犬野郎 』

空を見ればまだ月は昇ってない
もう少しこのまま戦う必要がある事に内心、嫌気がする

「 ガハッ!! 」

『 グルルルルッ! 』

前世は只の大学生でした
なのに今は、狼の姿になって必死に足止めをしてるなんて友達が知ったらどう思うだろうか 
きっと誰も思わないだろう
俺だって知るわけない現実だ

誰かの為に戦うなんて考えた事も無かった
誰かの為に命をかけるなんてもっとだ
なのに、今は恐怖すら捨て去って只、ルイスを守りに行く為だけに何度も立ち上がるなんて

『 ハァ、っ…… 』

「 グルルル…… 」

俺がもっとデカくて強ければ、こんな犬野郎にやられることも無いのだろう

互いに向き合い、身体に傷が出来ては
噛み付くのを振り払われ、地面に身体は叩き付けれ他の者にまた襲われ咬まれ

腹が引き裂かれた痛みや、骨が軋む感覚
口から垂れる血は唸り声を上げたまま狼を睨む

「 こんな、低級に負けるなんて…… 」

此所に居た最後の一頭が倒れれば、俺の身体はぐらつく

『 っ……ルイス……。ルイ、ス…… 』

狼と戦えるなんて前世だと思いもしなかっただろう
噛み付かれる痛みを知れば、一度で負けを認める
それなのに、俺は自分より体格の大きな狼を倒すことが出来た

それだけで、誇らしい

『 シロに……自慢、話が出来たな…… 』

シロの知る子犬姿なら出来なかった……

" 成長したんだな!流石俺の見込んだ…… "
なんて聞けたなら、それ以外に頑張る理由はない
彼の元に帰りたい、ルイスを助けに行きたい……!

けれど一歩一歩、歩く度に身体の血の気が引くのが分かる……
地面を赤く染め上げ、点々と残る血痕が落ちる
血の量なんて見てたら気が狂いそうになる

今はそんな事よりも走るのが先だと、奥歯を噛み締めて、身体に鞭を打ち走り出す

『( ルイス、ルイス……今、行く )』

「( リアン……必ず来い )」


~ ルイス視点 ~


アンドリューが何かを察して、俺達を先に逃がしてからシルバーウルフの遠吠えが聞こえたことに
最悪の事を想像した

「 ルイス副隊長!! 」

「 今は前を向いて走れ!! 」

「 っ……はい!! 」

シルバーウルフは魔物の中でもランクが高く
力が強い
近衛隊だとしても勝てる奴は余りいない

あの場で足止めをするしか出来なかったアンドリューを思い出せばそうだ

戦争がなく、実技が浅い俺達は群で襲ってきたシルバーウルフがまともに勝てるわけもなく
只、逃げるしかない

「 ワォォォォオオ!!! 」

「 っ、足止め失敗したんですかね!?  」

「 群がデカいだけだろ。さっきのはほんの僅かに過ぎない 」

不安なのは此所にいる誰もが同じだろ
きっと、馬車の中にいるアメリア王女もまた
何が起こってるのか分からない様子

「 おい、馬車を止めろ!! 」

「 えっ、っ!! 」

「「 ヒヒィィィン!! 」」

国に行く前に地形を把握していた
だからこそ、銀狼が吠えてそれに合わせて逃げていったところで
俺達は銀狼に逃げ場がないところに行かせれている

「 ルイス副隊長、何故止めたんですか!? 」

「 この先は森だ。森に入れば銀狼の思うツボだ 」

コカトリスから降りて、馬車の方へと行く俺は後ろの扉を開いた

「「 副隊長!?なっ、何を 」」

「 守る目的は、君だけだ。馬車を捨てて逃げるのを優先する 」

扉を開ければ紫色の髪をした少女は膝を抱え、震えていた
シアンが言ったのは本当だったのだと気付き
彼女へと手を伸ばす

「 馬で逃げます、どうかお手を 」

「 ……はい 」

声を震わせ、其でも手を伸ばした彼女は
十分、心の強い少女だ
こんな子が王族に居たのかと思うほどに初めてみる程に可愛くて愛らしい

「 第三王女アメリア様だと!? 」

「 副隊長!銀狼がやって来ます!! 」

「 分かってる。アメリア王女、無礼を御許しください 」

コカトリスは一人で乗るには脚は速いが
二人なら遅くなる
それなら馬車を引く透明馬スケルトン・スティードの方がいい

馬車を扱っていた、御者に残りの馬を好きにするよう伝え

俺は透明馬スケルトン・スティードに跨がり前にアメリア王女を乗せ、他の部下を連れ森に入ること無く、元の道へと戻り隣の国へと目指す

「 っ、貴方様……お名前は? 」

「 俺はルイス、ルイス・ディ・ロペス。近衛隊 副隊長でありリアンの召喚師だ 」

「 ルイス様は、リアンの…… 」

身体へと掴まる王女に、俺は片手で頭を支えたまま透明馬スケルトン・スティードの脚を速めた
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