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一章 聖獣への道のり編

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" リアン "
 
その名を呼ばれた瞬間に、俺の中で心臓を鎖で繋がれる様な痛みが走る
けれど、それでも呼ばれた事の嬉しさや
姿を見れたルイスの安堵した顔を見れば気にならない程
俺の頬から頭へと撫でたルイスの手へとすり寄れば、彼は小さく笑ってから笑顔を向けた

「 ごめんな……いらないとか言って 」

『 クゥ~ン』

最初の言葉だけ、彼の頭に直接響くように聞こえても
次からの言葉は分からないようで、俺に触れた手はそっと横腹へと当て持ち上げられた

「 案外、重いんだな…。それに、よく見たら可愛いじゃん 」

『( 可愛いげ無い、容姿にその内なってやるさ )』

頬へと舐めた俺に、彼は擽ったげに笑う

「 ははっ!犬だなっ、聖獣かよっ 」

『( 舐めるのは愛情さ。一週間我慢してやったんだから許せ )』

「 あははっ!! 」

シロの事が言えないなって位に舐めた俺に
ルイスは嬉しそうに笑ってはその腕で強く抱き締めてきた

心臓の鼓動や呼吸、彼の匂いを感じれば耳を向ける

「 リアン……もう、離さない。だからずっと傍にいてな…… 」

『 ガウッ( 勿論、御前が死ぬまで傍にいよう )』

仮契約が解除され、俺達は魔力を共有する仲になった
それは前より感情も分かるし、疲れたら直ぐに気付ける程

ノアの時はきっと、彼が無意識に名前をつけたから俺に自覚がないまま契約してたのだろうが
今回はちゃんとした契約だったからこそ、分かる

この子を守るのが、俺の役目だという事を……

「 あー!くそっ、アンドリュー先生強すぎ 」

「 ははっ。騎士だからな 」 

ルイスが求めない限り、俺は他人には見えない
でも彼にはずっと見えてるようで
倒れた事で俺が見てたのを気にしてはまた立ち上がった

「 くっ、まだまだ!! 」

「 おっ?頑張るな 」

ルイスの頑張りを見てると、俺は嬉しくなる
子供の成長を見てるようで、アンドリュー先生が時々剣を出して防ぐ位にはルイスは強くなっていた

神の庭に居るよりずっと、この世界は瞬きをするように早く感じてしまう

「 テスト勉強して無かったー!! 」

此処に来て一年が経過した
十六歳になるルイスはもうすぐで卒業らしいが 
その前に行われるテストに苦戦していた

『( 勉強なんてしなくても賢いだろ? )』 

少しだけ成長した俺は、彼の机に飛び上がれる程にはなったのだが、それでもランクは変わってる様子は無い
犬に例えるなら、体格だけ生後四ヶ月位の子犬って位でまだ子供だ

頭を抱えるルイスへと問えば、この一年で俺の思ってることは其なりに分かるのだろう
表情は眉を寄せ、ふてくした

「 勉強しなきゃ分からないテストもあるんだよー。やり辛いから降りてくれ 」

『 グウッ…… 』

抱っこされて床へと降ろされた俺は、詰まらなそうに耳を下げては彼の背中を見る
アンドリューに一番多く鍛えられてるから、其なりに筋力もついて細身だが引き締まったと思う
俺も少しはシロに自慢出来る位には、剣はちゃんばらから初級位は上手くなった
まぁ、ルイスには勝てそうに無いんだがな……

「 あー!!数学苦手なんだよー! 」

数学、寝ることが多かったもんな
アンドリューみたいに脳筋になってきたルイスに納得できると頷く俺は
窓から外を見れば月の光が出てることに気付く

「 えっと、こっちを出すには…… 」

『 片方を考えるのではなく、まずは基礎から思い出した方がいい 』

「 あ!基礎なー……えっ? 」

『 ん? 』

後ろから被さるように机に手を置いた俺は、片手で鉛筆を持ち、式を書いていけば
ルイスはなるほど、と頷いた後に違和感に気付いたのか振り返った

あれ?この姿を見せるのは初めてだったようだ

「 だっ、誰だよ!!? 」 

動いたことで離れた俺は、軽く鉛筆の上で髪を掻き、首を捻る

『 リアンだが? 』

「 えっ、嘘だろ……。リアンはこんな丸っこくて子犬で…… 」

『 まぁ、子犬だな。でも、聖獣だから人型になれる 』

神様から貰ったオプションなんて言えず、普段抱っこする大きさを両手で現した彼は
様々な事を考えたのか、立ち上がった

「 そんな!いつも風呂に入ったじゃねぇか!! 」

『 そうだな 』

「 いつも一緒に寝てた!! 」

『 そうだな 』

「 あんな、舐めてくる可愛い子犬が……。お、男、だなんて…… 」

まぁ、俺も昔なら男が!!で叫んで嫌がってただろうが
獣の姿やらスキンシップに慣れてしまった以上、気にならないもんだ

困ったな、嫌われたと眉を寄せた俺は鉛筆を持ち変えてはルイスの顎へと触れた

「 っ!! 」

『 大人の俺は…好きじゃないか? 』

銀髪の前髪から深い青色の目で見詰めれば
ルイスの身体は硬直した
大きくなったと思っていたが、こうやってみると俺より小さいな

と言うか、なんか固まった?

『( あれ、反応無し? )』

顎を持ち上げた手を頬へと動かし、軽く撫でれば
硬直したまま動かないルイスがいる

俺はメデューサじゃないんだが……



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