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一章 聖獣への道のり編

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何か喋る訳もなくレイヴンは、長いポニーテールをしていた黒髪をほどき
どこからか取り出したか分からない、一本櫛を使い髪を解いていた
あぁ、毛繕いしてるんだなって気付いたが
俺はどこに座ればいいのか分からず、その場で固まっていた

此処は要するに他人の家ってことになる
毛繕いしてるのをお邪魔するわけにもいかず見ていれば彼は気づいたのか
紫色の宝石のような瞳を此方に向けてきた

「 なんだ、他の小僧のようにじゃれついて来るのかと思えば来ないのか?いいぞ、来ても 」

『 いや…、ちょっとそれは遠慮する…… 』

相手は年上の男だし、馬らしいが
人間だった俺は容姿を気にしてしまい複雑だ
着物とは違った黒に銀の刺繍の入った綺麗な漢服を地面に擦り、レイヴンは身体を動かした

聞こえてきた蹄の音と水の匂いに逸らしていた目を向ければ、其処には美しい程に綺麗な漆黒の毛並みと鬣を持つペガサスが羽を折り畳み立っていた

「 人の姿を気に入らぬ者もいるからな、これならいいか? 」

『 わぁ~…すげぇ、綺麗な…… 』

馬っていいかけた言葉をグッと堪えて
ペガサスなら話しやすいと止まってた身体を動かし近付けば
彼は足元も綺麗な飾り毛が付き、尾は地面に付くほどに長い
全身真っ黒なことに親近感が湧いて足元に行けば
彼は手足を曲げしゃがんだ
なんとなく犬で言う伏せにも見える

さっき、羽毛馬がやってくれた体勢と似てる為に近付く

『 地上で羽毛馬に出会った。凄くふわふわしてたんだが、レイヴンはないんだな? 』

「 あんな汚れた馬と同じにしないでくれ…。まぁ、だが…子犬が喜びそうなふかふかは、俺にはないな 」

仕方無いと呟く俺に、レイヴンは何処か寂しそうにしたのは分かる
俺はふかふかしたものが好きだが、レイヴンにそれがあるとしても羽ぐらい

少しして眠りに着いたレイヴンの羽辺りに身体を埋めて眠ろうとしても目は冴えたままだ

どのぐらいの時間が経過したのか、どの周期で夜が訪れたのかは分からないが

寝ることが出来ない俺は、入り口から外へと眺めていた

『 …俺は、此所が似合わないのか 』

日本で見るより遥かに大きくてハッキリと見える満月が照らす美しい世界

俺には不似合いだと肩を落としていれば、布をするような音に耳が動く

「 そんな事はない。只、まだ慣れないだけだ 」

『 慣れない? 』

「 御前は強がっても此処では生まれたての赤子同然。寂しいだけだろ 」

人の姿をしたレイヴンは何処か眠そうに、俺の隣に立ち
入り口から片足を出して座れば、反対の膝を立て告げる

「 御前と似た者なら知ってるが、帰って来てるか分からない。それに余り性格はよくない 」

『 似た者? 』

「 狼の姿をした聖獣だ。若い者は直ぐ召喚されるが、強い奴なら長く傍にいられるだろ 」

わざわざ長く居なくてもいいんだが、
その言葉が何処か嬉しくなり顔を向けた

『 会いに行きたい。狼が強くなる方法も知ってるかもしれない 』

「 なら決まりだな。寝床までは案内する 」

俺を抱き抱え、羽を広げて夜空へと飛び立つレイヴンが向かった先は北の森の方
羽があるからか、あの場所から此処までかなりの距離があったのにあっという間に感じる

「 俺は飛ぶことに慣れてる。人の住む世界なら、一晩で一周は移動できる 」

『 この世界に端はあるのか? 』

「 ない。いや、正確には端は有るのだろうが、新しい地が出来ていく。神の庭、神が望めばどんなものも造り出される。地形が変わるなんてよくある 」

空をよく知る、レイヴンすら無いって言葉に
俺が見た川の先もきっと有るようで無いのだろ

あの月がどうやって有るのかも分からないが、人の命を好きに創る神様のことだ
月なんて簡単に作ってそうだ

「 此処はある意味、箱庭。召喚されない限り出ることが出来ない…。だから中には外を望む者もいる 」

『 レイヴンもか? 』

「 俺は望まない。言ったろ、馬同様に扱われるのが嫌いなんだ。荷物運びとかな 」

聖獣としてのプライドがあるのだと知った
それに比べて、俺にはそんなものはないと言うか分からない
獣の持つ本能と言うのもまた……

だからこそ同じ狼に会えば何か変わるのだろうかと思ったんだ

「 此所だ、聞いたことはないか。フェンリルって…… 」

『 フェンリル……ふぁっ!? 』
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