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二話 売られる人魚

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比較的に速い"ラ・モルテ号" 

全体的に黒く風を受けるメインマスト、二本のサブマストは大きくメインマストの中央には大きな死神をモチーフにした海賊の旗が揺れる
一瞬呪われた沈没船のような雰囲気のあるラ・モルテ号だが、其に匹敵しないほどの海賊船は場所を取り合うように港付近に止まっている

このスカージ海賊団と同じであり上陸する者と此処で残る者とで別れるのだ

「 今言ったのが今回の編成だ。文句があるならジャックに言うように 」

「 俺かよ!? 」 

「「 ははっ!! 」」

呑気なとばかりに溜め息を吐くウィンドはふっとさっさと梯子から降り小船へと乗り込む姿にデリットを見れば焦る

『 おい、キャプテンが行っていいのか? 』

「 当たり前じゃねぇか、寧ろキャプテン行かねぇと....また機嫌損ねるだろ 」

最後の言葉はぼそりと呟いたクルーに理由は直ぐに納得したウィンドだが行くと言うことは遊びに、それは夜に自分とやった事と同じことだと思えば胸は痛む

「 さて、皆。動いて動いて 」

手を叩くクルーの合図に其々動けば残る者達は暇だなと呟き、上陸する者は二つの小船に分かれ乗り込む
ウィンドはキャプテンが乗った側ではない方の小船へと乗れば其々に漕ぐものが漕いでいく

『 っ!! 』

港に着くなり、ウィンドは目を見開く

「 いらっしゃい、活きのいい人魚の女はどうだ?捕れたばかりだぜ 」

この辺りでは人魚はごろっと存在した 
海に男を御取りにすれば孕む為だけの人魚は人間を引きずり込もうと出てくる
其を狙って捕まえるのだが、ウィンドにとって初めていや、またこの風景を見るとは思わずに目線を外す

両腕を縛られ傷だらけの人魚は喋れないようにと口を縄で縛られている
そして鱗は商品の扱いをするために数枚引き剥がされ、血は滲んでいる
人間から見れば魚が並んでる程度だが、人魚から見れば人身売買と同じだ

『( これを....買うのだろうか )』

小船を降り、歩いていくデリットの背中を見ながら思い
周りのクルーと共に着いていく

さほど広くはない港だがこうして魚と共に人魚が並ぶのは見たくはないなと

「 キャプテン、お目当ての人魚は見付かったか? 」  

「 いや、居ないな 」

居ないな、やっぱり探してるのかと顔を上げるウィンドは不意に聞こえてくる"同胞"の声に頭が痛くなる
どんなに長年他の人魚に会ってなくても声は分かると

" 助けて " 

" 怖いよ " 

" 死にたくない "

まるであの時の自分じゃないかと吐き気を思うウィンドは軽くふらついた

「 おい、ウィンド大丈夫か?小船で船酔いでもしたか? 」  

『 平気だ.... 』

「 ....... 」

その様子を振り返ったデリットは見ていたがなにも言わず歩き進め町へと入る

田舎の港町だが、人魚を沢山売ってる場所は此所の他に滅多に無いために海賊達は集まるのだ

此処ばかりは敵が多く、海軍すら手を出せずにいる

謂わば" 海賊の町 "

食糧や物資を得るなら寄っていて悪くない場所の為にスカージ海賊団にも出来るだけ早く来たかったのだ

「 じゃ、夕方までには仕事終わらせろよ!解散 」
 
「「 アイアイ!! 」」

ジャックの合図で各自、自分の事をしに脚の向きを変える 
調子を崩したウィンドは只先を歩くデリットに着いていくしかなかった

まだ港に近い通路人混みを掻き分け追い掛けるウィンドとまるで人の方が避けていそうな程に気にせず歩くデリットでは速度の差は生まれる

『 まって、くれ..... 』

意思を失う寸前で手を伸ばしたウィンドに、デリットは手首を掴み引き寄せる

「 馬鹿が、そんな調子なら着いてくんな 」

意識を失う前に聞こえた
何処か懐かしい心配するような声と人混みの中でも分かるほど心地のいい匂い

俺は知ってる、忘れる筈はないのだから....
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