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十七話 ※ご飯時は回避して下さい

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三十二週目に入る

赤ちゃんは順調すぎて怖いほどに成長して、ぽっこりお腹もハッキリ見えるし皮膚が伸びる感覚が痒くてクリームつけて保湿したり
最近は、一時間に十回動くかどうかの判断して元気か確認したり
私達と出会う為の準備をしてくれてるのが分かり楽しくて仕方無い

『 はぁー…… 』

その反面、酸欠になりやすくなってきたし動くのがいちいち大変すぎて寝てばかりになってる
パイナップル位の大きさをお腹にいれて、重さすらあり、それが動くのに合わせて下に下がるから片手で支えたりコルセットをキツく巻いたりと工夫するしかない

夏は暑くて自分から外に出なかったけど、十月に入った現在は外に出てもいい気がする
でも、このお腹で外を歩くなんて経験不足の私には考えられないし疲れたくないから嫌だなんて、我儘をぼやく

体力維持のために、出来るだけ部屋を歩き回ったりするけど、腰が痛いのと呼吸がし辛い事に運動すら止めたくなる

「 ルイ、面白いものを病院から借りてきた 」

『 全く面白くない気がするんだけど、なに? 』

私が思っていた以上に隆一さんは、変な人だった
子供を産めとか最初に言って、この人は頭が可笑しいんじゃ無いかって思ってたけど、うん…可笑しかった

何か取りに行くと行って出ていって、一時間もしない内に帰ってくれば腕に持ってるのは変なジャケットみたいなもの

正直、妊娠してから苛々しやすくなってる私には一方的に喧嘩の原因になりそうなのは回避したくて、余り考えないようにと思ったけど……無理

「 妊娠体験ジャケットってやつだ。家にいる間はつけようかなって 」

『 ……馬鹿でしょ? 』 

確かに最近、運動ばかり進めることにキレて怒って" 妊娠してるこっちの身も分からないくせに! "なんて言って男性にとって一生分かるはずもない事を言ったけど…… 
まさか、妊娠経験ジャケットを借りてくるなんて思わないでしょ

本当……よく分からないことを突発的に考える人だと頭痛を感じては腰に手を当て見詰める

十五㎏位の重さがあるジャケットをカッターシャツを脱ぎ、インナーの上から着て
またシャツを羽織り止めれる部分だけしめれば大真面目に答えた

「 馬鹿なわけあるか。俺も妊娠した 」

『 何いってんの 』

蓮さんが居たら、きっと頭を大理石へと押し付けられてるところだよ
顔はクール系でかっこいいのに、言動は可笑しな事ばかり言うから調子狂う

「 十五㎏らしいが、軽いじゃないか 」

『 内臓押し潰されてるからな。赤ちゃん乱暴に扱うなよ 』

「 この重りを赤ちゃん……御前の腹にいるだろ? 」 

『 そう言うことじゃない 』

まだ名前は考えてなかった
顔を見て決めようなんて言ってるから、いまだに赤ちゃんと呼んでいたりする
何個かは候補は有るものの、やっぱりどっちの顔や髪に似てるので変わると思う
幾つもの候補を決めたまま、赤ちゃんと呼ぶ

『 自分で妊娠した気になって。折角なら、家事をしてみて?私は余り家事しないけど…洗濯物とか 』

「 そうだな、着けたまま日頃の行動をしたら分かるか 」

家事を良くする隆一なら、きっとちょっとは疲れて分かるじゃ無いかと期待してたけど……
よくよく考えたら妊婦の私を抱き上げられるぐらい、日頃から運動したりこそこそとジムに通ってるような人だ

ソファーに座っておやつを食べてる私は、掃除をしたり洗濯をする隆一を見てると諦めかけた

『( うん、鍛えてる差だ…… )』

内臓を押し潰されてる、ということより根本的な筋力の問題だし
十五㎏有るのに部屋中歩き回ってる隆一の体力は、勝ち目がない

だが、夕方になってきてやっと疲労を感じるのか腰に手を当てて息を吐く様子やら、首やら痛くなってきたのか気にする素振りに笑みが漏れる

『 脱がないの? 』

「 脱がない。家にいる間は着けると約束したんだ 」

『 誰とだよ 』

「 ……蓮と婦人科医 」

蓮さんの呆れる顔が頭に浮かんだし、あの婦人科医が笑って楽しんでるのも想像つく
本人達は遊び感覚だろうけど、隆一は本気なのだろ
疲れた様子を見せるもキッチンへと立つ

「 手元が見えないのが難点だな……後、足の付け根を締め付けれてトイレが近くなる…。結構キツいな 」

『 臨月ぐらいの重さだろうからね…。私ももう少しで経験すると思うと今から心配だよ 』

ソファーから立ち上がりやっぱりと歩いてからキッチンへと行き、二人で並ぶ
今日は何を作るんだろうかとスマホを見てから、材料を取り出していく

「 無理に運動すすめて悪いな。もう少しゆっくりやろう 」

『 いいよ、その気持ちだけで十分 』

おや、これは案外効果的だろうかと思いながら二人で餃子を包み、炒飯は隆一に任して、野菜たっぷりの皿うどんは私が担当する

「 調味料とか、取り辛い…… 」

『 そのお腹のは赤ちゃんだと思うんだよ?だからちょっと下腹支えて、しゃがむといいよ 』

「 嗚呼、こうか…… 」

足元にある醤油を取るのも一苦労
前屈みになるのではなく、そのまましゃがみこみお腹を支えて醤油を取り立ち上がれば息を付いた

「 はぁー……最初は重さが平気だったが、時間が立つに連れて腰に来るな…… 」

『 うんうん、妊娠さんはこれを経験するだよ。お母さんは強いよね 』

「 そうだな、十ヶ月間……これを着けるだから 」

『( 十ヶ月の間、十五㎏を持ってる訳じゃないけど…… )』

ちょっと違うけど、とりあえず頷いていれば
彼は染々と重みを感じていた

ご飯を食べるときの大変さやら感じれば、流石に濡らせないためにお風呂では脱いでからまた直ぐに着ていた
気に入ったのかは知らないけど、夜にデスクワークするときも着けて、しまいには寝るときも着ていた

「 この仰向きはキツいな……腹が潰れる 」

『 それが胎内に有るんだよ。横向きになってみて 』

「 これも少しな……。ルイ、俺の子供をありがとな 」

互いに向き合って横になれば、手を伸ばし頬に触れる彼に笑みは漏れる
平気だと笑っていれば、隆一は私のお腹へと触れそっと撫でてくる

「 早く会いたいものだ……。男の子か…名前は御前から取りたいな 」

『 日本国籍なんだから漢字がいいよ 』

「 そうだな…… 」

隆一から名前を取ってもいいと微笑んだ私に、彼は疲れたのか瞼を閉じて眠り始めた
片手を伸ばしそっと横髪に触れ、互いの身体に布団をかけ直し眠りにつく

それから妊娠四十週になるまで着けててくれたんだけど、流石に疲れたらしく外してレンタルを返していた

急に花を買ってきて育て始めた事は不思議でならないけど、前よりずっと気遣ってくれる

「 逆子にならないよう頑張ってるね。もう少しで会えるけど……いつから入院する? 」

『 入院……予定日の前の日かな 』

「 そこはお前に任せる。一週間前でもいい 」

急に陣痛が来て、なんて思いをしたく無いために入院するのは予定日の前の日からになった
体重や大きさも申し分ない
男の子だけど細身なのか、大きすぎるわけでも無いが未熟児でもない
丁度よく成長してると言われ、安心して破裂しそうなほどに膨れたお腹を撫でては笑みが溢れる

「 では予定は十二月二十八日だから、その前の日にしましょう 」

『 はい、よろしくお願いします 』

「 此方こそ。頑張りましょうね 」

最初は嫌いになりかけてた女医だけど、今は隆一の溺愛っぷりを認めてくれて気にかけてくれるようになってる
信用できると思うからこそ安心感がある

『 もう少しで会えるって 』

「 嗚呼、それも嬉しいが子供が生まれれば二十四時間付きっきりになる。精一杯楽しまないか? 」

『 んー?例えば? 』

付きっきりになったとしても働いてないし、元々部屋にいるから平気と思う
睡眠不足になるのは覚悟してるが、なんだろうかと傾げると彼は髪へと触れた

「 美容院行ったり、ネイルやエステに連れていってやる。映画館もいいだろ、どうだ? 」

『 楽しそう!やりたい! 』

「 嗚呼、そうしよう 」

美容を意識するのは赤ちゃんが生まれるまでの間
その後は、自分の事には手を焼けなくと聞いた隆一は、私を美容室へと連れていってくれた

長い髪はそのままだけど、鋤いては量を減して一結びにしやすくしては、次にネイルやらエステと私の体調を気にして一日、一日色々させてくれた

高級なレストランだっていけば、彼との時間を楽しむ

『 蓮さん……クリスマスだね。隆ちゃんまだかな 』

「 今日は遅くなりますから。待ちましょう 」

『 うん!そうだね 』

十二月二十四日
前日に準備したツリー以外の飾りつけを部屋にしていく
ローストチキンだって用意してるし、料理だって何を作るか決めてる

昼から飾りをして、折り紙を切って丸めたのを貼るのは蓮さんに御願いする

脚立に上るから私はダメって言われて……

『 蓮さんが手伝ってくれるから、すぐ終わりそう 』

「 流石に高いところはね…。それ取ってもらっていいですか? 」

『 うん!どうぞ 』

蓮さんは今日はクリスマスパーティーの為に手伝いに来てくれた
仕事は元々休日にしてた為に、今此処にいることが出来る

「 くくりつけたいので、タコ糸とハサミ御願いします 」

『 はーい、どうぞ』

「 ありがとうございます。看板はズレてませんか? 」

『 うーんと、ちょっと待って 』

メリークリスマスなんて書いた看板を、リビングの目立つところに掛けたくて、糸とハサミを渡してから後ろへと下がり看板を見れば、ズキッとした腹の痛みに気付く

『 っ…… 』

「 どうか、しましたか? 」

『 んん、看板は大丈夫そう。ちょっとトイレ行ってくる 』

「 では、俺は続けてますね 」 

腹痛?そんなのよくあるし、トイレへと行けば早々に座ってみる

『( この腹痛は、ウ◯コ……!? )』

ヤバい、ウ◯コ出そうだと思って蓮さんに気付かれないよう踏ん張ってみた

中々出ない頑固なウ◯コ……腹の痛みは徐々に強くなってきて、トイレから出れば蓮さんの元に行く

『 蓮さん…… 』

「 はい、なんですか? 」

『 ちょっと休むね。後で手伝う 』

「 いいですけど、大丈夫ですか? 」

隆一なら分かるけど、蓮さんに流石にウ◯コが出なくて苦しいなんて言えるわけもなく苦笑いを向ける

『 大丈夫、休んでくる。寝室にいるから……何かあったら言ってね? 』

「 はい、あ…スマホ持っててください。隆一から連絡来るかも知れないので 」

『 オーケー……それじゃ、おやすみ 』

脚立から降りて、スマホを渡してきた蓮さんから受け取り下腹を触れたまま寝室へと行く

生理痛の酷いときのような痛みと、便秘になりすぎてヤバいときの硬いウ◯コが出そうな痛みに冷や汗は出てくる

『 っ……いっ、っ…… 』

その波はウ◯コが近くなるような感覚もするけど、遠くもなってくる
痛みが弱くなると安心するけど、強く痛めば奥歯を噛み締める

『 やばい……ウ◯コ、漏れそう…… 』

寝室の上ではしたくないけど、動くの辛いしウ◯コ出そうだし、どうしたらいいか疑問になっていく
どうしよう、尿の音を聞かせた事のある隆一にウ◯コが出そうだから薬買ってきてと話そうかと考え、スマホのメール画面を開く

『 ウ◯コ……が、硬すぎてやばいから……薬ほしい……よし、これで……っ……!! 』

この腹、やばいと痛む御腹を押さえて悶え苦しむ

返ってきた返事は、理解できなかったらしく
私の様子を見に来た蓮さんに問われる

「 ルイさん!?御腹、痛いんですか? 」

『 そう!出そう…… 』

「 へっ!? 」

『 大が……っ……!! 』

待てよ……これって、ウ◯コじゃなくない??
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