上 下
39 / 77

08

しおりを挟む

彼女の家に戻ってから、上手く話が繋がらなくて彼女は輝夜と遊んでる間
俺はずっと考えながら料理を作っていた

どうしてこう思うのか、なんて話し掛けたらいいのか、その答えは何も出なくて只美味しい料理を作ろうって方が強くて

考えは、思い付かないまま止まっていた

『 本格的!アメリカ思い出すっ 』

「 ジャックがアメリカ出身だと聞いてね、君も好きかなって 」

『 好き!日本のバーガーってちょっと物足りなかったから、こういうの嬉しい! 』

「 それはよかった、どうぞ 」

料理の話なら出来るのに、他の話をしようとすると上手く言葉に出せない

俺はきっと、何か言って彼女の地雷を踏むのが怖いんだ

折角、仲良くなれそうな友達が出来たのに
それが離れていくのは....

“ しょーたって、本当怖いよな.... “

「 !! 」

『 ん?しょーた....どうした? 』

「 あっ、いや....なんでもないよ 」

ふっと頭の中に過った姿と声に、俺は一瞬
忘れたくても忘れられない事を思い出して身体の血の気が消えていく感覚を感じた

人に嫌われるのが怖いから、人を避けてたのにまた人と接して、その時の事を怖がるなんて....

「( 俺は臆病だ )美味しい? 」 

『 うん!凄く 』

「 そっか、よかった 」

君は、本当の....隠してる俺を知ったら怖がるだろうか
無知のまま俺の前で笑って近付いて来る間は、その無知にすがり付いて居よう

『 ふふっ、しょーたがずっと家にいたら毎日美味いもの食えるんじゃないか?それもいいなっ 』

「 俺は家政婦じゃないからね?たまになら作るよ....バイトさせてくれてるから 」

『 そうか?次は、魚料理とかがいいな 』

「 ん、考えとく 」 

他の女子やクラスメートとは違った
その態度に俺は救われてるね....

頬に溜め込んでハムスターみたいに食べる様子に癒されるように、何気無く笑いながら二人っきりの晩御飯を終えた

『 帰るのか、居ろよ.... 』

「 帰るよ。兄貴の晩御飯も作らなきゃいけないし、明日は朝から別のバイト入れてるから 」

『 そうか、なら仕方ないな。またな.... 』

「 うん、またね 」

夏休みは小遣い稼ぎと、敦士への負担も減る時期だから頑張る必要有るんだよね

というか....勉強っていつ教えればいいんだろ?

「( 結構、撮影時間も短いしそれが終わった後....夕方迄とかに出来るかな? )」

勉強をどこから教えようか、そんな事を考えながら歩いて家へと帰った

「 しょーた、何か楽しいことでもあった? 」

「 その逆なんだけど、そう見える? 」

「 見える見える、とても嬉しそう 」

敦士には悪いが、炒飯を作って置いとけば彼は帰ってから其を温めて食べていた
皿の片付けをしていた俺に、問い掛けてきた彼の言葉に何気無く傾げれば彼は笑った

「 しょーたの顔がニコニコしてるから。分かりやすいよ 」 

「 顔....? 」

「 そう、最近前よりつり目じゃないし楽しそうで俺も嬉しいよ 」
 
顔、顔か?と頬に触れ濡れた手で触ったことで滴の付いた頬を手首で拭いてから
手をエプロンで拭き、外しては風呂場へと向かう

「 あ、そうだ 」 

「 ん?なぁに? 」

「 前に聞いたブラックローズの社長所の娘さん。俺のクラスの転校生だった....また伸びたら切って欲しいって、いってたから。伝えた 」

「 えっ、ちょっ!?クラスメートってマジで!!?しょーた!! 」

聞きたいことが山ほど有りそうだったから、さっさと風呂場へと向かった

背後から俺の名前を告げる敦士に、ふっと笑ってから脱衣場へと行く

「 ......そう言えば、傷、染みるよな.... 」

張ってある湯に入り、手の平が僅かに痛む傷口に彼女は尚更痛むんじゃ無いかと思えば溜め息は漏れる

その場のノリで脚を引っ張ったけど、今思えば馬鹿なことをしたなって....

「 傷痕が残ったらどうしよう....いい薬....渡そうかな.... 」

“ 傷物にしたのは誰だ? “
 
彼女の父親が言ってた言葉に、本当....その通りだと思って申し訳無くなる

綺麗な肌なのだから、残って欲しくないな
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...