上 下
33 / 77

02

しおりを挟む

『 でーきた! 』

「 完璧だねっ 」

家に帰り、彼女達が普段使う6階のリビングの一角に輝夜かぐや用のケージとトイレ場は設置された
因みに5階にはサークルとトイレ場、後は仕事する場所に各あるぐらい
全ての階にトイレ設置するぐらいには此所は広いし、輝夜を一人にさせたくない彼女なりの気遣いだと思う

『 しょーた、手伝ってくれてありがとうな? 』

「 いいよ、手伝うって言ったし 」

拾った後の里親探しも手伝うと言った
けれど、里親探しが無くなったのならそれ後の事も出来る限りする、何となくそう思うだけ
俺がしたいからするわけで、礼を言われる必要はないと首を振った

『 輝夜が大きくなったら一緒に散歩とか行きたいな。あ!首輪飼ってたんだー、輝夜ー!! 』

「 悪くないね、その時は付き合うよ 」

彼女が誘うなら行くことはするだろ、俺に懐つくかは置いといて、成長を見られるのは少しだけ嬉しい

輝夜は家に帰ってから彼女が預けていた仕事場から受け取りに行き、今は俺達が作業していた付近に置いた箱の中
人の声がするだけで鳴かない辺り、元飼い犬の子供なのだと彼女は言っていた

やっぱり産まれたのはいいものの、飼えなくて捨てたのだろ
綺麗な色だけ残したブリーダーか一般かは知らないけど、たまにいるとは耳にする

『 輝夜御待たせ、首輪はこれだ。じゃじゃーん 』

膝の上に乗せてビニール袋を探るなり、首輪を持ち開けては同じく名前と彼女の父親の電話番号を掘ったプレートのついた星の飾りをつけ、首に巻く

猫用だから仔犬でも大丈夫な位だね

『 似合う!あ、今気づいたけど....輝夜の胸元星柄っぽい? 』

身体を持ち上げて見上げた先に有るのは、星のマークがついた白い毛の部分
彼女にはモサッとそこだけ色の変わった部分がそう見えるのだろ、親馬鹿とはこの事かと思う

『 しょーたも見て、どう? 』

「 ....そうだね 」

此方へと向けてきた輝夜を受け取り膝の上に乗せてから、仰向けにし腹を見ればこの角度では只の白い毛に見える
けれど、持ち上げて仔犬が顔を上とかに向ければ確かに見えなくもない

「 ......見える? 」

『 見える!星柄なんて、流石輝夜だな 』

うん、やっぱり親馬鹿だろうね、と思って仔犬を抱き変えてはその仔犬特有の毛を堪能するようフカフカと触れる

クゥー....

「 えっ、俺が嫌なの?そう暴れなくても 」

『 しょーた嫌われた? 』

「 そりゃ、君がずっと抱っこしてたら懐つくだろうね....ほら 」

俺が撫でていれば嫌そうに逃げようとして、諦めて彼女の膝の上に乗せれば匂いに気付いたのか静かになる
 
『 ほう、犬は一度の恩を忘れないというがそうか.... 』

「 仔犬だからどうだろうね、まぁ....有り得るかもしれないね 」

何度も思う、彼女がこの小さな仔犬が懸命に出した声を聞き取らなければこの子は今、此処には居なかっただろ
そして満潮になり、箱の底は濡れ仔犬の体温すら奪っていったその身体を
必死に暖めたからこの子は今、此処にいる

彼女に恩があっても可笑しくはないと、思いながら眺めていた

『 輝夜、しょーたにもありがとうだぜ?私を暖めてくれたのはしょーただから輝夜もぽかぽかだったんだよ 』

「 !!っ....それはもう、忘れて.... 」

仔犬の鼻先を俺の鼻先へと当てて、にこやかに笑った彼女に俺はあの時の事を思い出して、遅れた用に顔が熱くなるのを感じる

『 なー、輝夜 』

「( 今の方が、体温高い自信がある )」

咄嗟の判断って凄いと思う、今のこの状態であの場面だとするならきっと恥ずかしくて出来なかっただろ

それだけ俺も、彼女の身体を暖めようと必死だったのだと思う

「( 君といると....俺の心臓は苦しくなる )」

「 ほう、しょーたくん。少し話を聞かせてもらおうか??ん? 」

「( ....他の原因もあるけども )」

背後に立つ威圧に振り返るのすら恐ろしくなった
彼女は気にもせず輝夜と遊んでるが、俺は下手な冷や汗と鼓動が速まる事にやっぱり家に帰っとけば良かったと思った

「 色々、向こうで話そうか? 」

「 は、はい.... 」

オリビアお父さん、マジで怖い....
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

彼女の光と声を奪った俺が出来ること

jun
恋愛
アーリアが毒を飲んだと聞かされたのは、キャリーを抱いた翌日。 キャリーを好きだったわけではない。勝手に横にいただけだ。既に処女ではないから最後に抱いてくれと言われたから抱いただけだ。 気付けば婚約は解消されて、アーリアはいなくなり、愛妾と勝手に噂されたキャリーしか残らなかった。 *1日1話、12時投稿となります。初回だけ2話投稿します。

【完結】私じゃなくてもいいですね?

ユユ
恋愛
子爵家の跡継ぎと伯爵家の長女の婚約は 仲の良い父親同士が決めたものだった。 男は女遊びを繰り返し 婚約者に微塵も興味がなかった…。 一方でビビアン・ガデュエットは人生を変えたいと願った。 婚姻まであと2年。 ※ 作り話です。 ※ 完結保証付き

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた

せいめ
恋愛
 伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。  大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。  三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?  深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。  ご都合主義です。  誤字脱字、申し訳ありません。

処理中です...