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しおりを挟む「 エカードさん…けっこんしてください 」
「( アイツは何を練習してるんだ…… )」
~ 次男 ルック ~
ディアモンから受け取ったネックレスを首に付けてから、気を落ち着かせて歩いていれば、彼岸花を手に取り独り言のように練習をしていた
次男、ルックがいた
流産した事で諦めていた我が子が、実は魔界に行って、
正式なクオレの息子になってるとは思わなかった
それも悪魔らしい姿をしてる為に、人間同士の間に生まれたと思っていたんだが
魔界に来たことで、悪魔が強く表に出たんだろうな
それでも、息子には変わりないし…
ルックは俺が母だった事も、父親であるクオレに落とされた事も覚えている
それを知った時はどんな顔を向けていいか分からなかったが…
″ パパなんてキライだ!! ″
ぐらいで終わっていた為に少しだけ安心した
クオレの事を毛嫌いしてるが、俺に対しては一切そんな事が無い為に安心する
時より吹き抜ける魔界の風
それによって彼岸花は揺れ動き、
ルックの片方だけ長い前髪は揺れる
見せてる方は常に赤い目をし、隠してる方は俺と同じく黒目をしている
興奮状態でも色が変わらない事を気にして、目を隠してるらしいが、赤いでさえ
光る程度なんだから、隠さなくとも…なんて言えない
コンプレックスは人其々だからな……
「 ルック、なーにしてるんだ? 」
近付いて後ろから問い掛ければ彼岸花を摘み取り持っていたルックに、根には毒があると言いたい
だが、悪魔だからきっと大丈夫なんだろうとしんじている
「 エカードさんに…ぷろぽーずの、れんしゅうしてた! 」
「 グフッ……( 流石…クオレの子…マセてる )」
口から心臓でも飛び掛けた感覚がするほどに、その一言で将来を悟った
「 そうか……でも、練習では無くも直接言えば良くないか? 」
「 んー……パパをこえる…強い、マオウに…なるまで、ダメって…… 」
そりゃ子供は相手に出来ないだろうな
エカード、何気無く数百年は無理と言ってるようなもので、プロポーズの先送りが流石だと思う
クオレに勝てる訳はないだろう
「 そうか、なら……大きくなって、強くなるんだな? 」
「 ん!パパ、ぶっころすために!! 」
「( 俺の教育方針…どこに消えた )」
吐血しかけた事に胃が痛くなる
そりゃ、毎日のようにクオレが暴れて
それを止めようとする双子すら、倒す!ぶ殺す!!なんて口の悪い事を言ってたら影響されるな
特に、ディアモンはまだしも…
シヴァの方が口が悪い
彼奴の影響だろうと、胃がキリキリと痛みながら苦笑いを向ける
「 そ、そうか……倒せるといいな 」
「 だからね……ばくだん、つくってみた! 」
「 ……誰に教わった!!? 」
おい、見た目が5歳もいってないような息子が爆弾作った時点でかなり本気だろ!
教えたやつ、出て来てくれ…
今すぐぶん殴ってやる
「 んーとね、じーじ!! 」
「 サタンかぁぁあ……それなら、殴れねぇぇかぁぁ…… 」
教えそうだな
暇だから教えてそうだな、膝の上にでも乗せて爆弾の作り方でも教えて
クオレの寝床に入れてこい、とか言ってクツクツ笑ってそうだな
あの顔が頭に浮かんで、肩を落とす
「 そ、そうか……じーじは他に何を教えた? 」
「 ママのぱんちゅを、おいてたら…パパがあなにおちる! 」
「 俺のパンツが流失してる事に驚きなんだが…そして彼奴は引っ掛かるのか 」
きっと出て来たときにパンツを見掛けて、落とし穴に落ちたんだろうな
彼奴は馬鹿なのか?やっぱり馬鹿なのか?
そして、サタンは何故…俺のパンツを知ってるし、孫に渡した!?
「 ほ、ほかは…… 」
「 んー……いろいろ! 」
「 そうか……きっとママの関連の物をつかうんだろうな 」
身の回りで無くなった物が他に無いか、調べていよう
きっと異様なぐらいに有りそうだし、恐らくシュヴァルツが管理してる時に取られてるに違いない
彼奴、クオレの子供達だからって甘い考えをしてるからな
「 でもね、パパ…ぜんぜん、たおせないんだ…… 」
「 そりゃ、パパは強いからだろ 」
横にしゃがみ込んで、手元をよく見れば
何故か容器に彼岸花の根が入ってる事に青ざめた
「 んー…だから、じゅーす、もっていく! 」
「 毒薬か……? 」
「 うん!!ディアおじさんが、おしえてくれた! 」
「( 彼奴も彼奴で、器用な部分を毒薬の調合で活かすな! )」
グッバイ★クオレ、なんて親指を立てていい笑顔のディアモンが頭に浮かんだぞ
やりかねない、死なないからと毒殺しようとするのは、想像が出来る
酷い頭痛が更に悪化するような感覚になり、気持ちを落ち着かせて息を吐いて目線を向ける
「 あとは……いぬさ、ふらん……とりかぶと…… 」
「( それ、俺の人間界でも死者出てる奴だけど大丈夫か? )」
「 ひゅどらの…ドクと…… 」
集めた奴等、絶対…長生きしてるからって暇潰しだろう
毒々しい物がどんどんすり潰されてドロドロの液状になってるけど、それを飲むのか?
見ただけで、と言うか…匂いがすでに駄目だと教えてるようなものなのに、クオレは飲むのだろうか?
「 でーきた!あげてくる!! 」
「( クオレが子供の物を受け取るのか気になるし、ついていってみるか )」
何となくどんな風に相手をするのか気になった
ルックと一緒にいることが滅多に無いというか、見た事が無い為に
彼にとって、次男はどの様な存在なんだと思う
「 おっ、ルック。いい毒が手に入ったからこれも混ぜるといいぜ 」
「 ありがとー、しばぁ! 」
「( 御前が犯人かぁぁあ!! )」
そう言えば、シヴァの趣味は魔物退治だったな
暇を持て余して、性行為以外に魔物を倒した骨やら、皮膚から装備品と呼ばれる服の材料を集めて、それをディアモンに渡してるとか…聞いた気がする
流石、腹違いの兄弟……
やることは、クオレを倒す事なんだ
無駄に団結力がある事に冷めた目を向けていれば、その場でしゃがんで物を入れてから混ぜてすり潰す、ルックは顔を上げて歩き出した
「 しばぁ、ありがとー! 」
「 いいって、今日こそ倒せればいいな! 」
「 うん! 」
今日こそって事は、もしかして毒薬は何度かやっているのか?
俺の見てない時に、そんなバトルがあったことは初めて知ったが
ルックは迷う事なく、城に入り、地下の牢屋へと向かう
子供にこんな場所…なんて否定する前に、
どんどん先に進むんだから言えないな
「 パパ!! 」
壊れていたはずの檻は、サタンによって元に戻っている
ルックが声を掛けた事で気怠けにしていたクオレは人の姿のまま近き、檻に触れれない距離に立つ
俺は少し影から見てるから、クオレは気付かないだろう
「 毒作った!のんで 」
「 んー?今日はまともだといいね 」
「( まさかの、素直に渡していたのか! )」
もっと別の事があると思っていたんだが、全く無かった
ドストレートな言葉は、何処かクオレに似たんだろうかと思う
そんな部分を似なくとも……
ルックは棒を使って、小皿を押し檻の奥へと押し込み入れていく
彼の手元まで寄せればじっと見つめ、俺までその様子が気になってしまった
「 いただくね…ん…… 」
「 ふぁあ、どうおいしー? 」
「( 躊躇無く飲んだ!? )」
あんな死人が出ていた毒を大量に含んだ毒薬と言うか、毒の煎じ汁みたいなのを飲んだクオレに驚けば
彼は皿を転がすように、ルックの足元に戻した
「 微妙かな、やり直し。毒が弱い 」
「 えー、またやりなおしかー 」
「 けど、ヒュドラの毒は考えたね。俺より位が低い奴が飲んでたら死ねただろう 」
「( いや、やっぱり死ぬやつじゃん )」
俺が飲んだらきっと倒れるやつだろう
ルックは残念そうに空になった皿を持ち上げては、すぐに笑顔を向けた
「 また、つくってくるね!のんでね? 」
「 あぁ、行っておいで 」
「 うん!! 」
次は誰に毒を貰おうか、そう呟きながら此処から離れていったルックを追いかける事なく、俺は牢屋の前へと歩く
「 少し驚いた……。飲む事に、抵抗は無いのか? 」
「 無いね。息子が作ってくれるんだよ…どんな物でも飲むよ 」
「 平気なのか? 」
顔色を変えることなく背伸びをしているクオレは、背中を壁に当て答えた
「 毒耐性持ってるからね…。それに、魔界の魔物は殆ど喰ってるから、まず耐性付いちゃってるからなぁー 」
「( うん、こいつが異常に強いだけだ )」
ヤッてる最中に喰ってたりしたし、その時に色々食べて、慣れたんだろうな
味覚が馬鹿なのもそのせいじゃないかと思う
だが、ちょっとだけ嬉しいとも思った
「 そうか、良かった…ルックと仲良さそうで 」
もっと犬猿の中で、本気で殺意を向けてるのかと思ったけど
お互いに遊びの範囲だと思うぐらいだ
「 そうだね……。後は単純に、自分より強い者を倒そうとするのは本能だよ。俺も…サタンを殺そうとしてた時期はあるし…そして無理だと気付いて諦めがつく 」
「 父親を超えたいと思うってことか? 」
「 人間で言えば、そんな感じかな 」
息子が父の身長を超えたい、父よりも強くなりたい、腕相撲に勝ちたい、そんな感覚だろう
人間なら、父親は時間と共に衰えて、息子が勝つことが出来るが
悪魔がサタン(父)に勝つ方法は、弱っている時に漬け込むときだけ
それは、シヴァが何となく言っていた
「 だから、俺はルックの挑戦を受けるよ。子が、親を越すところをみたいし…俺は今でも、サタンには勝てない…あの方は強いから 」
「 そりゃ、雰囲気からして最強だからな。いや、魔界の王だから最強か 」
そうだね、とクオレは笑った
何となくその場にいて、檻に背を向け座ったまま、彼と他愛も無い話をする事が心地良いと思う
誰もいない空間で、俺とクオレの二人っきりだからこそ
こいつもまた、大人しいんだと思った
「 真琴……えっちしたい…… 」
「 ふっ、我慢しろ……。俺もその間は我慢してやるから 」
「 じゃ、オナるね……見る?それも一緒にヤる? 」
「 遠慮する。俺は上に戻る!勝手にヤッてろ! 」
詰まらないとボヤくクオレだが、下半身に触れようとした手を止めて
その場に横たわった
重みのある鎖の音に胸が痛くなるが、
二百年我慢すればいいだけ…
それがどれだけ長いかは分からないが、
俺は構わないんと思うんだ
「 パパ、つぎは…。ママのりょうりをあげて、もだえ…ころします! 」
「 うん、それは出来ると思うぞ( 嬉しそうに食べてる俺が死ぬかもしれんが )」
幼い息子達がいつか、クオレを超える日が楽しみだ
「 なぁ、お父さん……悪魔って、暇なんだろうなぁ 」
「 それは言ったら終わりだぞ、翔太 」
永く生きるからこそ暇を持て余した連中が、無駄に一つのことに拘ってるのだと思う
シヴァは魔物狩り、ディアモンはシルバー細工、双子は修行、ルックは毒作り、エカードは新しい魔法作り
彼等を見てると、人間界よりのんびりでゆっくり暮らしてるんだと思う
なんせ、仕事という仕事も無ければ
食事する時はなく、風呂は適当なんだからな
「 俺も悪魔になって、こっちに来たいな…… 」
「 ディアモンによって、高校を通ってるもんな。もう少し頑張れ?死んだ後は待っている 」
「 ふぁーい、がんばる 」
翔太はちゃんと高校を通っていた
そして何となくディアモンが側にいるのを見て、
彼等はこの先…仲良くなりそうだなとは思う
双子は兄がリオン、妹がシヴァっぽいけど…
果たして如何だろうか
淫魔同士だから遊びで終わりそうだな
まぁ、この先の事はゆっくり考えていけばいいな
慣れない生活だが、何となく慣れそうな気がする
「 あー、暇だなぁ……。おい、息子達……ちょっと天界に戦争吹っかけて来い 」
「「 はい!! 」」
「( うん、絶対に慣れねぇわ… )」
暇だから戦争する?
馬鹿じゃないのか、このサタン
「 神を殺しても、罪に問われませんよね。参加する 」
「 よしゃー!新作の強化装備を試そう 」
「 腕が鳴るぜぇ!!ひゃはっ!! 」
エカードさんに至っては天使じゃなくて、神を殺そうとしてる辺り
もう、頭が痛い……
後の悪魔達は、もう好きにしてくれって思った
俺はまだ来たばかりだから、
息子達と共に今回は不参加だが
首輪の付けられているあの猛獣は、外に放たれた
「 クオレ……。好きなだけ天使の生気を食らってこい 」
「 グルルル…… 」
「( あ、このサタン……クオレの腹拵えに戦争吹っかけたのか、やっぱり理解出来ねぇ )」
こんな常識外れの悪魔や堕天使を相手にする、天使達が一番の被害者じゃないか?と思えた
静かに心の中で合掌をする
クオレが参加した事で圧勝だったのも言うまでもない
寧ろ、エカードがコチラ側についた事で向こうの戦力はスカスカだったらしい
うん、だろうな
「 最新装備、悪魔殺しの剣、無効化!!完璧だったろ!? 」
「「 確かに 」」
「 クオレが掴んだ時の事を思い出してな、そろそろ悪魔も悪魔殺しの剣で殺されるのはダサいっしょ。だからちょっと、あの回収してた剣を砕いて、ブローチに混ぜてみたんだよ! 」
「 流石、兄貴!!ありがとよ! 」
「( 案外、ディアモンが一番優れてるんじゃないか?)」
あのブローチは、兄弟全員とクオレの息子達、そしてエカードに配ったらしい
俺のネックレスにも、悪魔殺しの剣の無効化が含まれてるなんて……
こいつ…
兄弟の為なら恐ろしい発明するな………
~ 神崎 視点 完 ~
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