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番外編

08

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颯の言葉にやっと意味を理解した二十代其処等の若い青年は涙を流し、俯いては声を殺して肩を震わせた

持っていたペンチを男に向け、繋がっていた鎖を切った颯は横たわるその髪を掴み顔を上げさせる

「 俺は、世間に....戻れない....犯罪ばかり、犯して、今更どうやって.... 」

「 そうだな。嫌いな人殺し集団でも入るか? 」

「 なっ.... 」

目を見開いた青年に俺は同感した
確かに自分のボスを殺された相手の仲間、それも部下になるなんて事はしたくはない
それは青年もまた同じであり、言葉に詰まれば颯は敢えて告げた

「 いつか俺が裏切り者と言われたとき、御前は俺を殺せる立場になれる、いいとは思わないか? 」

「 ....っ、人は殺したくない.... 」

「 なら情報収集専門にでもなれ。人殺しは俺が背負ってやる 」

「 っ!!御前は、なんで....何がしたいんだよ!俺なんて.... 」

颯は時より俺でも理解できないことをする
拷問してた相手を組織の、それも自分の部下として入れたり
そして両親を殺すときに見掛けた子供を連れて帰っては世話を放棄したりと自由にする 
それは端から見れば理解できないが、颯はきっと単純なことしか考えてない

「 人殺しなんて、俺が代わりにしてやる 」

辛いことは自分で背負おうとしてそして幹部の元から、妬まれ恨まれる事すら一人で背負おうとして、自分の首を自分で締めていく
そんな、青年なんて殺しても組織のものは誰も止めやしないし興味を持たないのに、君は変わり者だよ....

「 俺の監視してる病院に入院させてやる、ある態度怪我が治ったらもう一度答えを聞く 」 

「 もし、病院から逃走したり....拒否したら、どうなる.... 」

「 俺が、殺しに来る 」

「 答えはひとつしかねぇじゃないか.... 」

「 あぁ、御前が生きると言う選択肢以外はねぇな 」

俺達の顔を見たのなら世間には置いてはいけない、だが傍に置いてるなら生かしておける 

それを知ってる颯だが、他の、それも青年が知るにはもう一度自分と同じ立場の人間が仲間になる時をみないと分からないだろうね

俺は何度も此を見てきたから分かる....

泣いていた青年は、最後には" 宜しくお願いします "と頭を下げていた

颯の手配した救急車で運ばれ彼の管理する病院に入院した3ヶ月後には颯の飼い犬となってまた俺の目の前へと現れるのだろう

命を助けることは颯らしいが、飼い犬が増えることは気に入らない

「 ....疲れた 」

「 殺害2回、拷問1回だもんね 」

組織のビルへと戻り、シャワールームで血を流してる颯に、俺はその横に凭れて水音を聞きながら軽く笑った

「 ....そうだな。殺さなくてもいい連中だった.... 」

「 同情してると逆に殺されるよ 」

「 タオル 」

「 どうぞ、君の優しさは優しさじゃない。惨いことをしてるだけだよ、鳥の羽根を毟って飛べなくさせて籠に入れて餌を与えて見てるだけ 」

バスタオルを掴み上の隙間から投げれば颯は受け取ったように拭いていく

敢えてそう告げた俺に颯は知ってると小さく呟いてから扉を明け出て来た
腰にバスタオルを巻き常時着替えの置かれてるカッターシャツを掴めば着ていく

「 あの子はずっと籠の中の鳥。あの子だけじゃない、君の.... 」

今まで君が拾ってきた子が楽しそうにしてるのは遊馬ぐらい
他の連中は、颯の生きてる場所を知って絶望して悲しんでいる
この人の生きてるここは其だけ過酷な場所だと思い知らされるから....

言葉を繋げようとした俺に、颯の腕が延びてきたと同時に押し当たられた感触に固まった

人の言葉を塞ぐには口付けが一番と聞くように、彼は俺の後ろにある壁に手を付き深く唇を重ねていた

「 っ.... 」

「 五月蝿い....黙れ。寝るんだろ、付き合え 」 

「 えっ、ちょっ.... 」

もう少しキスをして!なんて思考に変わった時には颯は他の服を持ってシャワールームを出て自室へと歩いていく

それを着いていく俺は、彼の背中を見ては眉を下げ溜め息が漏れる

本当....落ち込んでるときは分かりやすいね....

「 ....ほら、寝ろ 」

「 押し倒されてるの、なんで....? 」

自室へと入るなり、ベッドに倒された俺は髪の毛が湿り、風呂上がりの香り立つ颯の存在に胸は高鳴れば彼は俺を気にせずその横へと倒れた

「 颯? 」

「 ....2時間寝る。起こせ....起きたら、帰る.... 」

家ではまともに寝れない颯が唯一、俺の傍だと直ぐに寝始めるのを知っている
俺の前だからこそ、青年に言葉をかけることも....

「 他の人の前だと幹部に告げ口するもんね.... 」

俺は言わない....
聞かれても軽く笑って誤魔化すからこそ
颯は俺を信用してる....信用し過ぎて無防備だけど俺は紳士だからね.... 

颯が求めない限り答えないよ

眠りにつく颯の髪を撫でては、布団を被せ子供をあやすように肩辺りを叩く

君の信用は、時に俺を苦しめる
それを知って俺に御願いしてくるのだろうね

" 社長の座を落としてほしい "

俺は、君を苦しめる事だけは嫌だったよ....

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