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番外編
25
しおりを挟む事情聴取が行われ、疲れていても学校へと行った
朝から拓海さんと出逢ってウキウキだったのに、その後の出来事
平常心で学校には居られないと思ったけれど、私の心は案外丈夫であり気分の悪さは残るも残りの授業は全てこなした
お兄ちゃんが保護者として来なかった事に少しだけ寂しい気もしたけれど、仕事が忙しいならと諦めていた
『 ただいま.... 』
歩きの為にいつもより少し遅い時間
家の明かりは付いてなく、一人言のように玄関へと入り靴を脱ぎスリッパへと履き替えてからリビングへと向かえば、一瞬驚き脚を止めた
『 えっ、お兄ちゃん? 』
仕事だと思っていた
けれど、お兄ちゃんはリビングのソファーで仰向けになり、スーツの上着を脱いだ程度でシャツのボタンを数個開け眠っていた
規則正しい音を立てて眠っている、そう普段なら思うのだけど、時より眉を寄せ痛がる様子に気付き、鞄を置き音を立てないよう近付く
『 どこか、痛いの? 』
片腕を顔へと置き、そして左腕を肋骨辺りへと置いてる様子を見て、そっと乱れたシャツを捲ろうと触れればお兄ちゃんは動いた
『 っ!! 』
「 誰だ?って....陽妃か、なんだ、驚かせないでくれ.... 」
寝ていると思っていたお兄ちゃんは瞬時に私の手首へと掴んだ
その手の力に驚くも、其よりも私を見ては直ぐに安心して起き上がる様子に違和感は感じた
『 お兄ちゃん、怪我してるの?痛そうに寝てたけど.... 』
心配するのはいつもの事だけど、お兄ちゃんは私へと視線を向け目が合えば珍しいほどに隠すのが下手で、不器用に笑って誤魔化すように頭を撫でてきた
「 平気だぜー?どうした、看護師でも目指す気になったか? 」
『 元々看護師目指すし.... 』
「 そかそか、晩御飯にしような。準備する 」
『 うん.... 』
痛がるのは見て分かるのに、何故其を誤魔化そうとするのかわからない
野生の動物が弱れば獲物に食われるのを恐れ、本能的に死ぬ直前まで平気そうな素振りを見せる
それが今、お兄ちゃんと被る事に胸はざわつく
兄弟なのだから何でも言ってくれればいいのに、お兄ちゃんは其を言わないのだから私は信用されてはないのかと、不安になる
「 そう言えば、陽妃。好きな人とは上手く行ってるか? 」
部屋の灯りを付けてからキッチンに立ち、晩御飯の準備をするお兄ちゃんの言葉に拓海さんを思い出すもその後の出来事を思い出し、表情は曇る
『 上手くは、いってるかな....優しい人だし....ちょっとミステリアスだけどね 』
それはお兄ちゃんにも言えたこと
拓海さんもお兄ちゃんも優しいのにミステリアスで分からない部分が多い
それと同時に、どちらも笑顔が下手くそだ
「 そうか、陽妃はその人の事が好きなんだな 」
『 好き....なのかな、憧れはあるけどね 』
本当に恋愛感情かはまだ断言できるほど恋愛経験は多くない、だけど憧れてるのは断言できる
それが恋愛要素と混じってるのもまた同じ
「 そうか、上手くいくといいな....応援してる 」
『 うん、ありがとう....そう言えば、お兄ちゃん。一つ、聞いてもいいかな? 』
「 なんだ? 」
野菜を切ってるお兄ちゃんへと近づき、カウンターキッチンの前に立ちながらその手元を見てから視線を上げて質問を投げ掛ける
それは、今朝聞いた" あの人の言葉 "
『 お兄ちゃんって、誰かに恨まれたりするの?仕事とか、大変とか.... 』
その言葉を問い掛けた瞬間に、お兄ちゃんの手元は一度止まった
聞いては駄目だったのかと疑問になり、一度手元を見ていた私は目線を戻せば言葉を失う
『 !! 』
包丁を持ってるお兄ちゃんの表情は、質問の問いに驚いてる訳でもなく嫌がってる様子でもない
その全く別であり" 誰かわかった "とばかりの殺意のある冷たい表情をしていたからだ
背中が凍るような感覚に呼吸すら止まった気がして、ほんの一瞬の時間が長く感じた
「 ....取引先と揉めることは有るかもしれないが、恨みを買うことはないさ 」
凍った雰囲気を壊したお兄ちゃんだけど、
その後の言葉は頭に残らなかった
一瞬、包丁を持ったお兄ちゃんと
今朝見た殺人者の姿が被ってしまった事に自分でも驚いたからだ
綺麗でかっこいいお兄ちゃんには似合わない、赤く染まった顔と手....
そして、前に見た拳銃の存在を不意にも思い出すから其を忘れるよう軽く首を振り笑った
『 そっか、大変だと思うけど、お仕事頑張ってね 』
「 あぁ、ありがとうな。今日の晩御飯は鶏のハーブ焼きとサラダと野菜スープだ 」
『 うん、楽しみにしてる! 』
お兄ちゃんは、誰かを殺したりとか....無いよね?
そんな不安の中で、晩御飯の鶏肉はナイフで開けば血が垂れて
其を見た私は食欲を失い、食べれなかった
血が....気持ち悪くて怖いなんて....
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