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番外編
21
しおりを挟む~ 遊馬 視点 ~
少し前にボスである、黒澤さんから写真を受け取っていた
" これ、拓海くんに渡してくれますか?俺からではないのは伏せて。中身は見てもいいですよ "
" はい、分かりました "
それは海斗と女装してる颯さんの写真であり、俺は一目見て颯さんだと分かった
颯さんの体格やら輪郭はハッキリと覚えてるし、俺が間違えるわけがない
けれどこの写真を拓海さんに渡して何があるか分からないけど、前に颯さんの事がすごく好きだと聞いたから、きっとその感情に繋がるんだとは思った
人を揺すぶるのが得意で好きな人だけど、俺はこの人から告げられる命令は嫌いではなかった
" 嗚呼、それと君のクラスの海斗くんにもアプリをオススメしてて下さいね "
" あ、はい "
後日 写真を渡し、中身を見た拓海さんの表情は直ぐに暗くなる
「 ....ボスは颯にアプリを.... 」
「( あぁ、これが....ボスが狙ってた事なのかな )」
颯さんが絡めば拓海さんの感情は守りたいやら嫉妬やらに変わっていく
海斗にアプリを進めることさえ御願いしてきたボスは誰を狙って、誰を貶めようとしてるのは推測はつく
何処と無く颯さんに似てるからこそ、颯さんなら....と考えた時にその思考と被るのが黒澤さんだ
二人は見た目や雰囲気は違えど、俺は似たような匂いを感じる
それが何故なのかは分からないけど、そこに拓海さんが関わることも理解できない
「 そんな....また、" 同じ事 "をさせようとしてるのかな.... 」
「 またってなんっすか? 」
俺がなにも知らない子供だから、二人の過去なんて語られるまで分からない
不意に問うた言葉だけど、考え込んだ拓海さんは俺の言葉に返事をする事はなかった
それだけ彼は精神的に悩まされてるのだろう
小さい頃に見た拓海さんは颯さんの隣に立っても違和感がないほど互いに認め合い、そして助け合い、釣り合う相手だったのに何がこの人を此処まで追い詰めたのだろうか....
「 陽妃を傷付け、そして颯や海斗にも傷付けるなんて....俺が好きな人達を....っ! 」
人を恋愛対象として好きになることを俺は知らない
父親とか主人としてなら颯さんの事は大好きだし、妹として陽妃ちゃんもまた好きだけどそれはきっと拓海さんの思う感情とは違うのだろう
人を好きになるとはどう言うことなんだろうか、拓海さんを見ながら考えていれば入り口から入ってくる人物の姿を見る
「 No.646、話があるんですがいいですか? 」
悩んでいた拓海さんは一瞬肩を揺らし驚いてる様子だけど、入ってくるのを見ていた俺は驚かなかった
「 なにかな?ボス 」
一つの返事をし二人はこの場から出ていく
取り残された俺は彼がやっていたパネルへと目を向け、不自然に的が外れてるのを見直す
人を殺す瞬間、俺はいつも怒っていたり苛立っているから余り殺す相手に私情はないのだけど、もしそれが好きな人なら俺は迷うのだろうか
「 ....きっと、迷うかもな 」
颯さん....お父さんを殺せと、拓海さんのように命令が降りたなら俺はきっと殺せない
大切な家族であり、彼の犬でもある俺は自らの命を捨て迄命令を破棄するだろう
それだけ、颯さんの存在は絶対的だ
それはきっと、拓海さんも同じ
好きだと言う感情の意味は違えど一人の人を殺せない気持ちは同じだと思う
「 あ、本当....私情が挟めば外れるっすね 」
彼が置いていった、拳銃を持ちパネルへと数弾ほど発砲するも見事に全て外れていた
パネルが颯さんだと思った瞬間に手元は狂う
その事を知った俺は、捨て駒としての未熟さを思い知る
幾分かし、拳銃での訓練を飽きてこの場から立ち去った俺は次の曲がり角で此方へと歩いてくる黒澤さんと鉢合わせた
「 拓海さん、どうなんっすか? 」
何となくそれが気になって、目の前に立つ黒いスーツに身を包んだ秘書の姿をした黒澤さんは猫のように三日月に目を細めて笑った
不気味な程に綺麗な顔立ちで完璧に嗤う、その妖艶な部分に見惚れてしまう
「 ちゃんと任務をこなせそうなので、写真届けてくれて感謝しますよ 」
「 いえ、俺は何もしてないっすから.... 」
感謝される程の事はしてもない
寧ろ、黒澤さんの行動を疑ってるのだから怒られても無理はない
けれど彼は、片手を伸ばし俺の頭へと触れた
警戒をすることなく突然と触れる手の温もりに一瞬、颯さんと被る
「 なにもしなくていいんです。届けてください、と言っただけなので。十分ですよ 」
「 そう、すか.... 」
「 えぇ、では私は仕事に戻るのでまた 」
「 はい。お疲れ様です 」
時より颯さんと被るのは何故だろうか
その事は分からないまま、立ち去るボスの後ろ姿を眺めていた
優しいような人なのに、同族から嫌われてるのも知っている
何故そこまで嫌われてるのに笑ってるのか分からない
そして、直ぐに海斗の様子が気になった
俺が命令のままにアプリをオススメした次の日からだ
余りにも早い態度の変化に違和感を感じた
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