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番外編

07

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さて、お寿司を食べて御腹も膨れたことだし何処に行こうと話をする

予定は一緒に映画を観て晩御飯を食べることだったんだけど、時間にすれば21時ぐらい

そろそろ陽妃は学生だし帰らせようかと考え、駐車場の停めてある車へと向かっていた

送るから乗りなよ、そう告げた俺に一人で帰れるなんて呟き戸惑いながらも乗る陽妃はふっとシートベルトを付けながら匂いを嗅いだ

そう言えば、この車....颯のだった、と思うときには既に遅い

『 この香水?って何処で買ってるんですか? 』

「 香水?あぁ、何処だったかな....友達が使ってて匂い移ったかな 」

どっちが犬か分からないほどの嗅覚に一瞬胸が高鳴り下手な誤魔化しを告げるも陽妃はへぇと呟き視線を手元へとやる

そこには俺がプレゼントしたぬいぐるみが入った紙袋がある

『 お兄ちゃんもこの香水使ってるんです....私には似合わないけど、いい匂いだなって.... 』

血の独特な匂いを掻き消すための香水、それをいい匂いと思うのはなにも知らない純粋だからこそ言えること

俺達からすれば血の雨を被った獣がもう一枚羊の皮を被るようなそんな意味しかない
いい匂いとも思わないが、確かに颯は尚更甘い匂いなのは納得する

「 ....今度、友達に会ったら何処で買ってたか聞いてみるよ 」

『 いいんですか?やった 』

「 匂いって遺伝子レベルで好みが分かれてあるらしいから、好きならそれだけってことだろうね 」

流石、颯の息子だと言ったところか
血の匂いが好きだなんて....けれどきっと血の匂いじゃなくて" 颯 "が好きなのは陽妃の表現で分かる

『 そっか 』

「( あぁ、君は颯が好きなんだね.... )」

父親を知らないとかお兄ちゃんだからとかそういう概念を捨てて、単純に颯の事が恋愛対象の相手として好きなのだと察しれる

颯が好きな可愛い子なんて単純に思えたらいいのに、何故か胸に感じる靄は" 嫉妬 "だ

あぁ、嫌だな....俺の事を好きにさせる筈の少年が実は俺の好きな人を好きだなんて
勝ち目ないじゃん、颯だよ....野良犬みたいに嗅ぎ回ってドブネズミみたいにこそこそ移動する俺があの綺麗な獣に勝てるわけがない

「( あれ?でも、これって.... )」

車を行く当てもなく適当に走らせながら不意に考えたことは、颯を好きな人が現れた嫉妬ではなく陽妃が俺ではなく颯が好きな事への嫉妬みたいな気がする

それはきっと、あの映画のクロの立場なら任務放棄になる代物だと知ったときにはらしくないと心の中で呟いた

「( ヤバイな.... )」

任務放棄はしたくないし出来ない
けれど、クロのように逃げることもしたくないと思うのに最近颯から聞いた言葉が甦る

社長を潰してくれ "

どいつもこいつも俺にハードな任務を任せ過ぎだよ

俺にだってきっと、感情はあるのに其を消し去る必要が有るのなら....それはきっと陽妃と颯が絡んだ事になる

『 あの、何処に行くんですか? 』

「 ん?あぁ....カラオケ行こうかなって。3時間だけでも 」

『 いいですね!カラオケ、始めていくなー 』

予定もなく走っていた車は自然と告げたカラオケへの行き先に合わせるように方向指示を出し道順を変えた

何故か、もう少しだけ陽妃と居たかったという思いは気付かなかったフリをしよう

『 わっ、カラオケボックス初めてです! 』

「 ....うん。俺も久々に来たよ 」

生憎俺が二十歳過ぎた成人男性だった為にレジで止められることはなく、そのまま二人分の物を持ちカラオケボックスへと入った

陽妃に上げた紙袋は車の中に置いてきた為に二人とも必要最低限しか持ってないまま個室へと入る

前にカラオケに来たのは颯が暇潰しにたこ焼きを食いたいと深夜に言って
食べれそうなのがカラオケ店だった事にやってきたぐらい

その時は俺ばかり歌って颯はひたすら飲んで食べて満足してた事を思い出す

余りいい思い出じゃないと首を振って座ればテーブルを挟んで目の前に座る陽妃にマイクと飲み物を手元に置き、パネルをいじる

『 どうやってやるんですか? 』

「 好きな曲選択して、歌詞でもいいよ....それで送信。まぁ、選んでいいよ。一曲目歌ってみるから 」

『 はいっ! 』

ずいっと顔を寄せてきた事に一瞬驚くも、大人の対応としてやり方を見せた後にマイクを持ちソファーの背凭れへと凭れながら陽妃が選ぶのを観ていた

結構、アニソンとかが好きなんだなって思う

そう言えば、颯はどんな歌を歌ってどんな曲が好きなのかも前に知らなかったから次は誘いたいなと思う

「 んじゃ、一曲目いきまーす 」

『 どうぞ! 』

歌は平気ぐらい、きっとそこまで上手いわけでも下手なわけでも無いからこそ耳のいい颯は嫌がらなかったのだろ

それとも単純にたこ焼きが食べたかったのかは俺にはわからないが、あの日の颯は仕事やら立場を忘れて笑っていた気がする

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