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番外編

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来た当時は走るのも遅いし、組手を交わせば必ず負けて、レプリカの拳銃を使ってるのに肩を脱臼したり、避ける事すら出来なかった颯を見てると俺達は手助けをしたくなった

けれどそれを許してくれる教師ではなく
颯には遅れた分を取り戻すほど辛い授業が放課後遅くまであったと言う

「 颯先輩がそんなダメダメなんて....よくなったんですか?今は暗殺上手いっすけど 」

「 いや、それが全く成長しなかったんだよ 」

「 えっ 」

「 颯は決定的に無い部分があった 」

「 それは? 」

俺達の誰もが気付かなかったし
本人も余り気にしてない位に行動してた

「 颯はね....視力がなかったんだよ 」 

「 えっ? 」

颯が来てから初めて、身体測定を兼ねた視力検査も行われた
其処で俺達は皆平均1.5以上の視力を持ち、俺もまた左右共に2.3はあった
目はいいと自覚してたのだが、終わった俺は身体を測っていれば、颯は視力検査を始めた

「 これは? 」

「 どれですか? 」

「 棒の先で指してる部分の何処に穴が空いてるか言うんだ 」 

「 だから....棒が何処にあるのかわからないです 」

「 はっ? 」

教師もまたその場で聞いていた者達も驚いた、颯にはほんの数メートル先にある棒が見えないんだ、それだけじゃない

「 ....俺、これしなくても殆ど?というかほぼ全て視野が真っ暗なんですよ。言ってなかったけど 」

颯の琥珀色の瞳はハーフだからとかそんなのではなく、目の視力がなく中心は白く濁りその周りは光を吸収する必要も無いからこそ特別な色をしてるのだと知った

颯が何故、組手をしても当たるのか
走っても遅くてコースが外れるのか
ふざけてるのかと言った教師も
笑っていた俺達もやっと理解した

「 俺にとって世界は真っ暗なんだ 」

俺達の表情が同じそう言ったのは
颯に向ける思いや殺意とかも全て一緒だから見えない颯にとって想像してる姿は誰もが笑ってるように思えたんだと知った

「 分かった、御前の事は上と相談するから次の奴と交代しろ 」

「 はい、いっ.... 」

後ろへ移動した時にガンっと太股にテーブルが当たった颯に、俺達はなにも言えなかった

見えない相手を苛めてた事に、無感情だと言われてた心は何処か締め付けられるほど苦しかった

ピカソ、なんて絵を馬鹿にしたけど
物を見た事ない颯にとって想像しか分からないんだと知ったときには貰った絵を大切にしようと決めた

「 あ、颯!次は身長だよー。測ろうよ 」

「 ん?あぁ.... 」

目が悪いと分からないように、手を前に出すこともなく平然と歩くから真顔でぶつかる
そんなのは見たくない俺は颯が来れば何気無く片手に触れ誘導しては背を測る

「 103。身長126㎝ 」

「 うわっ、ちっちゃ 」

「 ちっちゃ言うな!御前はどのくらいなんだよ? 」

クラスメートより低いと思ってたけど、本当低かったと笑った俺は颯の両手を手に取り自分の頬に当てた

「 俺は142㎝。颯より頭1個分は大きいよ 」

クラスで2番目に大きい俺はにこやかに笑えば、颯は顔の位置を知るためにぐっと距離を縮めた 

「 えっ.... 」

ほんの吐息が当たる位まで顔を近づけた颯に、真っ赤に染まる頬は動揺がある

「 ほんと、デカかったんだな....ずりぃよ! 」

「 いっ! 」

ガンッと額に頭突きを食らわして歩き去った颯に、踞った俺は額を押さえてから笑って追い掛ける

「 もう!ちっちゃいのに狂暴な! 」

「 ちっちゃくねぇ。平均だ、平均! 」

「 ....あのね、君ってクラスの男子の中で一番小さいんだよ、下手したら女子より小さい 」

「 マジで!!? 」

はっと立ち止まり此方を振り返った颯に、振り返る方向逆だと思いながら答えれば、彼は音(声)で顔を向けた

「 うん、ちっちゃい。でも可愛いよ 」 

「 ....はっ、その内追い抜いてやる 」

出来るかな?そう笑った俺だけど
颯はそれなりに成長するのも早かった

身長の延びは遅かったけどね


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