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会議中に妹から電話が掛かってきた為に何事かとばかりに一旦、退出し電話を出た

『 もしもし?どうした? 』

" 仕事中にごめんね、何時に帰れそう? "

『 今日は早ければ定時だな。18時頃だ 』

焦ってるような妹の声に何気無く腕時計を見て答える
現在は昼頃のために、この調子なら帰れるのは目に見えている
晩御飯は何をしよう、なんて事を頭の片隅に考えていれば妹は告げた

" 良かった。頼みがあるんだけど聞いてくれる? "

『 御前の頼みならなんだって聞くさ。言ってみ? 』

そりゃお兄ちゃんだから聞いてやると思う俺に、妹は安堵したように息を吐く

" 今日、出会い系の男性と初めて会って晩御飯一緒にする約束してたんだけど、友達と映画行くことになったからそっちの約束守りたくって。でも、どんな男性か、気になるからお兄ちゃん見に行って! "

『 ......は?いや、待て。どういうことだ? 』

会議室から出てきた秘書が、戻ってきて欲しそうな合図を視線で送ってきた為に片手でもう少し待って欲しいと伝え、妹のお願い事に思考を回転させる

出会い系サイトで知り合った男性と食事に行く?夜にか?いや、その前に友達との映画を見たいから男がどんな奴か教えて欲しいって....

" 容姿は金髪の青い目をした180㎝越えの長身で、28歳らしい!お金持ちか確認して! "

『 いや、御前が行かないのなら意味.... 』

" じゃ、御願いね!!お金持ちでイケメンなら連絡先聞いといて! "

『 は?ちょっ、まっ.... 』

ツーツーと着信が切れた音にスマホへと視線を落とす
金持ちでイケメンなら連絡先聞いといて?って出会い系サイト内でのメッセージ交換しかしてないなら、俺と会った所で意味からんだろ

兄が変わりに行く、なんて前代未聞の事でも言ってるのだろうか
それともなにも伝えず、会う場所だけ伝えて終わったのか俺には分からないが直ぐに妹から待ち合う予定の時間と場所のメールを見て肩を落とす

「 社長、会議の続きですが.... 」

『 なぁ、黒澤くろさわ君 』

「 なんでしょ? 」

秘書の名前は 黒澤くろさわ 鴉史こうし と言う
俺は、黒澤君と呼んでるのだが彼を呼んでからスマホをポケットに突っ込む俺の表情はかなり歪んで笑っていた

『 面白い事を思い付いたから、仕事終わりに少し付き合ってもらうぞ 』

「 ??えぇ、分かりました 」

妹に近づく男は、どんなに出会い系で妹からアプローチして知り合ったとしても許す訳がないだろ
それにどんな奴が妹の好みなのか確認する事も必要な為にちょっとした遊びを思い付つ

これも全て、妹が" 確認してきて! "なんて言ったから行くだけであって俺は何一つ悪いことはしてないだろ

強いて言うなら、高校生の妹に手を出そうとする28歳の男が悪いんだ

犯罪だとは思わないのか?クソガキを見に行ってやるか、と言う思いで仕事終わりにちょっと有ることをすることにしたのだが、流石に定時で帰れると言ってもハードスケジュール

眠くなるのには変わりにない

「 それで、付き合うこととは? 」

『 あぁ....前に宴会で女装してた奴いたろ? 』

「 係長ですね。それがどうかしたんですか? 」

『 そいつのカツラどこだっけってな.... 』

「 は?えっ、カツラですか.... 」

仕事が終わった18時過ぎ

社長室にある、思い出深いアイテムなど置かれた押し入れを開き
ごそごそと探る俺は会社のものが置いて帰ったコートなど手に取り後ろへと落とし言えば黒澤は少し考えてから入ってくる

「 確かこっちのタンスですよ。ほら、ありました 」

『 流石、黒澤君。後はブーツだな....あったあった 』

「 まさか、使うのですか? 」

若干引いたような感じがする黒澤だが、俺は笑顔でカツラを被り、親指を向ける

『 モチのロン。目元のメイクは任せたぞ 』


「 貴方は30歳にもなってなにがしたいんですか.... 」

呆れる秘書だが、これも全て妹の為だ
別に女装癖な訳ではない

さて、待ってろよ

金持ち気取りの変態野郎



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