ちょこっと怖い話・短編集(毎話1000文字前後)──オリジナル

影の視線

ある日、友人と一緒に心霊スポットに行くことになった。夜遅く、薄暗い森の中を歩いていると、ふと前方に人影が見えた。友人は怖がっていたが、俺は好奇心に駆られてその影に近づくことにした。

近づくと、その影は白い服を着た少女だった。彼女は無表情で立ち尽くしていて、俺の目をじっと見つめていた。何かを訴えているようだったが、声は聞こえなかった。友人が後ろから呼びかけると、少女は突然振り向き、森の奥へと消えていった。

俺はそのまま少女を追おうとしたが、友人が必死に止めた。「やめろ、帰ろう！」と言われ、仕方なく戻ることにした。森を出ると、友人が言った。「あの子、ずっとここにいるって聞いたことがある。」

その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍った。俺は思い出した。数年前、この森で同じ服を着た少女が失踪したというニュースを。彼女の遺体は見つからなかった。俺は振り返りたかったが、友人がすぐに歩き出したため、俺もそのまま帰ることにした。

家に着いた後、何気なく鏡を見た。すると、背後に少女の影が映っていた。俺はすぐに振り返ったが、誰もいなかった。ただ、心の中で彼女の冷たい視線を感じていた。彼女はまだ、俺を見つめていたのだ。
























──解説──



 この話は、心霊スポットでの出来事を通じて、過去の悲劇が現在に影響を及ぼす様子を描いている。少女の存在は、単なる幽霊ではなく、未解決の失踪事件を持つ悲しい魂として象徴されている。友人が「ずっとここにいる」と言ったことで、彼の警告が物語の緊張感を高め、主人公が少女を追いかけることで自らの運命に近づいてしまったことを示唆している。

最後の鏡のシーンでは、物理的には誰もいないはずの背後に少女の影が映ることで、彼女の存在が主人公の心に深く刻まれていることが強調される。彼女の冷たい視線は、過去の罪や無視された悲劇を象徴しており、主人公が彼女の運命から逃れられないことを示している。物語全体を通して、見えない恐怖が視覚的に表現されている。