ちょこっと怖い話・短編集(毎話1000文字前後)──オリジナル

誘われた声

ある日、私は友人と一緒に山にハイキングに行きました。天気も良く、楽しい一日になると思っていました。しかし、途中で迷ってしまい、気づくと誰もいない静かな場所にいました。周りには木々だけが立ち並び、鳥の声も聞こえません。

友人と一緒に道を探していると、ふと不気味な声が聞こえてきました。「こっちにおいで」と、低い声が響いてきたのです。友人はその声に引き寄せられるように進んでいきましたが、私は恐怖を感じて彼を止めようとしました。

しかし、私の声は彼に届きませんでした。友人はそのまま声の方へ進んでいき、やがて木々の間に消えてしまいました。私は一人残され、どうすることもできずに立ち尽くしていました。

その後、必死に帰る道を探し続け、ようやく人のいる場所に辿り着きました。しかし、友人の姿はどこにも見当たりませんでした。警察に通報し、捜索が始まりましたが、彼は見つかりませんでした。

数日後、友人の携帯電話が発見されました。最後の通話履歴には、私の名前がありました。そして、その通話のメッセージには「こっちにおいで」と、低い声で録音された友人の声が残っていたのです。私はその声を聞いた瞬間、恐怖が全身を襲いました。彼が誘われた場所には、もう戻ることができないと思いました。




























──解説──



この話は、友情と恐怖が交錯する不気味な体験を描いています。主人公は、友人とハイキング中に迷子になり、神秘的な声に導かれる友人を失います。最後に残された通話メッセージは、声の正体や友人の運命についての暗示を与え、読者に不安を与えます。この物語は、信じていたものが信じられなくなる恐怖、そして未知の存在が身近に潜んでいるかもしれないという警告を伝えています。