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私は結婚して5年が経った。妻との生活は穏やかで、特に問題もなく平凡な日々を過ごしていた。しかし、ある朝、私はいつも通り目を覚ますと、何かがおかしいことに気がついた。妻がいないのだ。

最初は特に気にせず、彼女が出かけたのかと思っていた。しかし、時間が経っても帰ってこない。メッセージを送っても返信はないし、電話もつながらない。不安になった私は、彼女の友人や家族にも連絡したが、誰も彼女の行方を知らなかった。

翌日、警察に失踪届を出したが、捜索は進展せず、妻の痕跡はどこにもなかった。家に帰ると、何もかもが変わらずにそこにあった。彼女の服、持ち物、すべてがそのまま。まるで彼女が存在していた証拠が残っているかのようだった。

それから数週間が経ち、私は妻がいなくなった事実を少しずつ受け入れ始めた。彼女は何か理由があっていなくなったのだろうと、自分を納得させようとしていた。

ある日、部屋を整理していると、棚に一枚の写真が飾ってあることに気づいた。それは私たちが新婚旅行で撮った写真だった。笑顔で並ぶ私と妻。その写真をじっと見つめた瞬間、私はゾッとした。

写真の中には、私しか写っていなかったのだ。新婚旅行の思い出としてずっと見てきたはずの写真に、妻は最初からいなかった。恐怖に包まれ、他の写真を確認したが、どの写真にも彼女の姿はなく、まるで最初から存在していなかったかのようだった。

その瞬間、私はある恐ろしい事実に気づいた。妻は、最初からこの世にいなかったのだ。














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主人公が普通に過ごしていた生活の中で「妻」が実は存在していなかったという事実に気づく点です。何気ない日常が一転して、過去の記憶や現実さえも信じられなくなるという恐怖が、じわじわと迫ってきます。

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